( 永遠のリング ) -中-
「バッカじゃないの!?」
それは私の台詞だ…という言葉を、ファンクラブ会員Aは言った。
「そーよ! 今時そんな話あるわけないじゃない!!」
「そーよそーよ! アンタ超メーワク!!」
「どっか行けってーのっこのブス!!」
セキを切ったように怒鳴りだす会員達…そう、ただいま私・は袋叩きに遭っている。
この数は新記録を軽く塗りかえてるよ…
「勝手にそんな事言われた不二先輩の気持ちを考えて下さい!!」
昨日の女が言った…
ああ、アンタの思う不二様の、何千分の一の思いやりを私に向けて欲しいよ…
まぁ、私も彼女に思いやりの一つも持ってないんだけどね…
世知辛い世の中だよ、ホント…
そんな自分の世界に浸ってるうちに、会員Bの平手打ちが私の頬に迫っていた。
普通、ここで愛しい男とかが登場するのだ。
私もそんな甘い夢を見たことがあった…
だが、現実は極低い確率でしか発生しない。そんなタイミングを待っているほど、私ももう幼くない…!!
平手が当たる寸前でしゃがみ、そいつの背中をビンタと同じ方向に押してやる。
ドタンッと、女はスカート丸見えでつんのめる。
「!! 調子に乗るんじゃ――」
背後にいた奴が大声をあげて殴りかかってきた…あーた声あげちゃ背後のメリットなしですよ。
私は少し横に移動し、またそいつの背を押してやる…合気道の基本だ。
「ただでデカイ態度とってるほど、バカじゃないよ」
そう挑発すると、会員達はどんどん攻撃を仕掛けてきた…
まぁ攻撃と呼ぶには幼稚すぎるものだけど。
勇だって来るのは、どうやら会員の中でも戦闘向きなのが集まっていたのだろうか…
そんなことを考えているうちに、数名を這いつくばらせていた。
さすがに身の危険を感じたか、残りの会員はいなくなっていた…まぁ、こちらとしてもこれ以上はさすがに無理なので助かったのだけど…
「…はぁ」
何とか修羅場を切り抜けたか…と思ったら、ため息と一緒に涙が出そうになった…
弱いからって、群をなしてみんなに合わせるのは嫌だと思った。
だから、みんなが遊んでる時間もさいて合気道を習った。
おかげで大会で名を挙げるほどじゃないけど、自分の身はある程度守れるぐらい、強くなれた。
でも、この差はなんなんだろう?
その間、周助はどんどんテニスが上手くなって、みんな好かれて、騒がれて…
私はどんどん強く、そして一人になっていってる気がする…。
今もそう。涙が出るのは自分のことだけ。
…それって凄く寂しくない?
強さと引き換えに、癖になってしまった自問自答を繰り返しに夢中で、
私は自分に飛んでくる小石に全く気がつかなかった。
ペシッ
という音よりは、突然の鋭い痛みに私は驚いた。
さっと痛みはしった首筋に手をやると、わずかに赤い液体が手についた…
おいおい…殺す気か…
飛んできた方向を見ると、逃げたと思った会員Aが笑ってる姿があった。
その後ろには、さっきとは比べ物にならないくらいの女の群…
1日に2回も記録を塗りかえるとは、さすが私…
なんて悦入ってる場合ではない。今度は飛び道具やらも携えているようだし…
タラリ、と生理的な汗が出た…
あわわ…またしても不二様なし(゜o゜;)次は必ず…っ
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