「ご褒美がイイかな? 

「なんでもいいの…?」

「う〜ん 粗方は大丈夫だと思うよ







「それじゃぁ私、ヒソカの子供がほしいな」







THANK U BABY -A-




あの時、何故ヒソカが「それは無理だよ」と笑った意味が、今なら解る。
あの時は、それが解らないほど子供だった。まるで自分が嫌いだと言われたように聞こえて、
あの時はかなりショックだったのを覚えてる。

酷く懐かしい、「あの時」。







「…どうしたのだ? 
鋼板で、目の前に広がる海と、これから始まるハンター試験に揺さぶられたのか
久しぶりに回想に耽っていた私を、金髪の男が呼び戻した。

彼の名はクラピカ。
この船に乗る前に、野宿をしようと思った公園で出会った。

「うん…」
「フ…答えになっていないぞ」
「…ふふ、そうだね」

微笑する彼は穏やかだった。
たぶん普段も冷静なんだろうけど、どうも出会いが強烈だったせいで

「穏やかなクラピカの方が珍しく見える」
のだ。




あれは丁度、寝床を探そうと夜の公園をさらに暗闇へ向かったときだった。
身が凍えるほどの怒りと憎しみが、私を呼んでいるように感じた。
駆足で向かった先には彼がいて、何を睨んでいるのかと思えば
「蜘蛛」だった。どこにでもいる、ただの「蜘蛛」。

「…はぁ〜い」
「!!!」
つい「隠」を使っていたのを忘れて声をかけたものだから、
彼は酷く驚いていた。

「別に怪しい者じゃないんだけど…って、説得力ないか」
「・・・・」
無言で私を見つめる眼は真っ赤だった。
あとで聞いたのだけど、感情が昂ぶると赤くなるらしい。

「もしかして、蜘蛛に嫌な思い出でもあるの?」
たぶん返答はないだろうと踏んだ私は、クラピカに…
というか、蜘蛛に近づいて、それを手に乗せた。

”私も、あんまイイ思い出はないんだ”

そう”言”って、私は手を振りかぶって、投げた。
蜘蛛は夜空の中に消えていった。

「さて、これでもういいでしょ?
その気配消してもらわないと、落ち着いて眠れやしないの」

振り返ってそう伝えると、彼はまた驚いたように眼を見開いたが
その色は徐々に赤を消していっていた。
どうやら私の”念”は彼に届いたようだ。

「…お前は何者だ」
「…やっと口を開いたと思ったらソレ?」
「・・・・・・・」
「…はいはい。私は、ここで野宿を予定しているただのハンター志望者デス」
「…、…そうか」
「…何、今のタメは」
「いや…同じ、か…と思ってな」
「! 貴方もなの!? え〜と…」
「クラピカ、だ。立ち話もなんだ、宿代を奢ろう」
「え…、いーの?」
「何をやったか知らないが、先程の礼だ」

と言うことで、別に一緒でいいと言ったのに、1室とってもらい
久々に温かい寝床についた。
そういえば、ヒソカが「知らない男について行っちゃダメだよ◆」
と言っていた気がするけど、まぁクラピカって女の子みたいだし、
もう知らない人でもないから良しとしよう。(ぉぃ)




「そういえば、まだ聞いていなかったな」
「…なに?」
「あのとき、何をやったのだ?」
「…何って、蜘蛛を投げただけじゃない」
その単語の所で、クラピカの眉毛がピクンと動いた。
…よっぽど嫌な思い出があるのね…可哀想に。

「それではない…よく、わからないのだが…
の声、というか、君の言葉は普通ではない気がある」
「…ふふ」

たぶん、クラピカは”念”をまだ知らないのだろう…
ただ身体が漠然とそれを受け止めている…流石はハンターを目指してるだけはある。

「笑ってないで…、それとも答える気はないのか?」
「大丈夫だよ、クラピカ。あなたなら時機に解る」
「…そうか」
「あれ、結構アッサリだね」
「そうだな…。
ただ、君がそう言うと、本当にそんな気がした…それだけだ」
「…ふふ」

クラピカはそれだけ言って、先程まで寝転んでいたハンモックに戻っていった。
私も今日は夜空を見ていようと思いその場で横になる事にした。

そして浅い眠りについた――既に試験は始まっているとも知らずに、

まさかハンター試験でヒソカに再会するとも知らずに―――




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…なんだかクラピカドリームもイケそうな勢いです(^_^;)

謎の女、
彼女とヒソカとの関係は!? そしてクラピカとの意外な接点とは!?

次号に急げ!!

(笑)