第4話 〔 夢 幻 の 世 界 〕
Mugen no Sekai



私たちが「住吉屋」という店の近くにくると、すでに乱闘のまわりは人ごみとなっていた。

「ちょいとごめんよ…ほら、さん、こっちぜよ」
「うん…」

人ごみを分け入ると、数人で数十人の力士を相手にしてる「みぶ浪士」の姿が見えた。

「…女の子もいるんだね」
「おお、わしも今さっき知ったんじゃが、なかなかのはちきんでのぅ」
「はちきん…? あ…!」

そこで、前の方で見ていた子供が押し出されて、乱闘に突っ込みそうになった。

「あぶない!!!」
「お、おんし…!」
「ていっっ!」
「おわ…!」
 

ど、ど、ど、ど、どーん!!!


子供にのしかかりそうになった力士をどんと突き飛ばすと、偶然にも数人の力士が将棋倒れになってしまった。

 

「あはは…」
「こ、この女――!」
「甘い!!」

どーん!

さん…おんし…」

「まだまだー!」
「うわー!ど、どすこーい!」
「ちきしょーー!! なんでこんなことに!!」
「どわー!」
「先生とデート中だったはずなのに!!」
「ぎょえーー!!」

「…さん…戦うと人格変わる人やったがな…そんにしても…なかなか…」

 

 

「ひぃ〜っ退散だ!!」
「はぁ…はぁ…」
「…あの、あなたは…?」
「え!?(しまった、つい憂さ晴らしに…)」
「なかなかの戦いぶりだったぜ、あんた」
「原田さん」

私がすっかり自我を忘れて戦ったあと、気がつけば「みぶ浪士」らしい人たちが私を見ていた。

「ああ、なんで助太刀してくれたは知らないが、礼を言うぜ」
「い、いえ…(変な鉢巻の仕方…)」
「ふむ…礼ついでに、浪士組で預かってくれんかのぉ?」
「え!?梅さん!?」
「なかなか腕もたつし、別嬪じゃ。文句ないじゃろ?」
「まぁ…土方さんあたりに聞いてみる必要もあるが…」

そのとき、鉄扇で戦っていた一際目立つ男がこちらを向いた。

「ふん、俺が認めよう」
「芹沢さん!?」
「文句でもあるか?」
「・・・・・・」
「娘、名は?」
「…です」
「ふん…励むことだな」
「はい…(ってつられて言っちゃったよ)」

すごい圧迫感…強いな、この人…それより…

「(梅さん! なにぬかしるんですか一体!!)」
「(いい機会ぜよ。おんし、なかなか腕はたつし、ぴったりやか)」
「(えぇ? だってこの人たちも、人切ったりするんでしょ?!)」
「(そりゃそうやが、見たじゃろ? 力士相手に刀を使わんかった、筋は通った奴らじゃ)
「(・・・・・・・・)」

確かに、刀をさしてるのに、まったく抜かなかった。それになんだか楽しそうで…

さーん! 行きますよ〜!!」
「え゛!?」
「ほら、はよ行き!」
「梅さん!あの、ありがとう!」
「そのうち様子見に行くき、元気にしとうせよ!」

 

そうして、私は一緒に大阪で本拠としている館に戻った。
本拠地は京都の壬生だから、壬生浪士組らしい。
帰路で、唯一女性隊士だという鈴花ちゃんに色々教えてもらった。
もともと道場は男の人ばっかりで、こんな男所帯には慣れてるけど、
見ず知らずの世界で女性がいなかったらだいぶ苦労するだろう。
こんな優しくて可愛い女の子がいてくれて、本当によかったと思う。
 

 

「で、おまけも有り、ってわけね〜」

帰還後、一連の流れを幹部に報告する際、私も紹介された。

「…です。よろしくお願いします」
「う〜ん…君、腕前はどれくらいなの?」
「えっと…剣ではなく古武術なんですが…(あれ、でも確か生まれたのは今頃だったっけ!?)」
「ふ〜〜〜ん」
「(あぅ…明らかに怪しまれてる…服装も普通じゃないしなぁ…)」
「近藤さん、俺ゃ近くで戦ってたが、なかなかの腕だぜ」
「でもな〜〜〜」

「局長」らしい近藤という人は、だいぶ私を入れたくないようだった。
やっぱり、梅さんを頼って別をあたった方が…
そう、私が諦めかけたとき、聞き捨てならない言葉が聞こえた。

「これ以上女の子がいてもな〜」
「平助くん…!!」

その小柄の隊士の言葉に、私はぷっつり切れた…。

「いいだろう、試験でもしてもらおうじゃないか」
「…さん…!?」
「そこのちっさいの! お相手願おうか…!」
「ち、ちっこいって…っ」

「近藤さん、どうすんだい?」
「はっはっは、お手並みみせてもらおうじゃないか…なかなかいい目をするよ、彼女」

 

ふふ…と笑った近藤の了承の元、私は即興の試験を受けることになった。
 

 

 

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やっと出せました、近藤さん! しかし絡み少な!!
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