第5話 〔 夢 幻 の 世 界 〕
Mugen no Sekai



「それじゃ、行くよ」

「よろしく」

徒手拳用の防具は少し前に壊れて捨てた、ということで、剣士用のものを貸してもらった。
鉄製のようで、多少重いが防御は十分できそうだから大丈夫だ…。

そう言い聞かせ、深呼吸をして、目の前の小柄な剣士を見る。

負けたくない…女なんて、と思っている奴は、この時代ならいっぱいいるのだろう。
でも、私はずっと戦ってきた、女なんかに、と言われながら、痣をたくさん作ってきた。
そしてここで引けば、同じように頑張ってきたのであろう、鈴花が落ち込むだろう。

負けられない…

「始め!!」
「はぁ…っ!!」
「ええい!!」

カキンッ! どす…


「…すごい…さん……」

勝負は一瞬でついた。

 

紙一重であったが、私の右拳は鳩尾にヒットし、左拳は相手のあごの下で寸止めした。

「・・・・・・・・・」
「もしかして、徒手拳術の相手は初めてですか」
「ほぼ初めて、かな」

私は両拳をひき、右手を出した。

「よかったらまた相手してください。ここでは剣を相手にすることが多いようだから、慣れておきたい」
「あ、ああ…」

手をとってくれたので、ぐっと引き上げる。
最初は嫌な奴だと思ったが、根は素直な青年らしい。
ここで本当に男尊女卑野郎は、けして手をとらない。

 

「まっさか平助が負けるとは思わなかったが…俺の言ったとおりだろう、近藤さん」
「確かに、いい腕だねぇ…君、くんだっけ?」
「はい」
「入隊を認めよう。あとで俺のとこちょっと来てくれよ」
「…はい! ありがとうございます!」
「やったね…さん!!」
「うん…!」

無事、認めてもらえたようで私は笑顔で返事をした。
鈴花も嬉しそうでなによりだ。

 

私は道具を返し、息を整えてから近藤という人の部屋へ向かった。
芹沢さんの方は、なんかこう「局長!」ってかんじなのだが、この人はそんなかんじが微塵もない。
認めてくれたみたいだし、特に緊張することなく向かった。

「…です、入ってよろしいですか」
「ああ、どうぞー」
「はい、失礼します」

障子を開けると、少し広い部屋で、
奥から彼が近づいてきた。

「いやーわざわざすまないねぇ」
「いえ…」

そう言って、私も近づいていくと、ひゅっとその姿が消えた。

「…!?」

はっと後ろを向くと、自分のクビ元にピタリと剣を当てられていた。
ひやり、と、汗が背中をつたった。

 

 

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えっと、平助くんに勝てたのは、近代武術で、きちんと剣とのスムーズな戦い方をマスターしていた、ということで・・・(;´∀`)
さ〜って、次は絡むぞー!!

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