第7話 〔 無 敵 な 貴 方 〕
Muteki na Anata


 

 

「あ、さん!」

縁側の廊下にできたところで、外にいた鈴花に声をかけられた。

「近藤さんとの話は終わったんですか?」
「あ、ああ…」

まさか鳩尾に一発食らわしたなど言えない…。

「この子が2人目の女隊士ちゃん?」

鈴花の後ろに、派手な着物を着た人がいた。

「はい、さんです」
「へぇ〜」

スタスタとやってくると、私の全身を視線が何度か往復した。

 

「…ちっ」

「…ち?(舌打せんかったかこの人)」
「なんでもないわーんv」
「…はぁ」
「それよりー、早く買い物に行きましょうよ!」

ぐいっと腕を引かれる。

「え??買い物???」
「先ほどあなたの世話人という人から、あなたは何も持っていないからそろえさせてくれと金子を置いていかれたのですよ」

背後からそう言われ、振り向くと、見た覚えのある男がこちらへやってきていた。

「えっと…」
「山南さんです」
「ああ、どうも…。その世話人って人は、どんな人でしたか?」
「髪が長く、あなたと同じような靴を履いていましたね」
「(梅さん…)」
「私もあちらの文化には興味がありますので、ぜひ今度教えてください」
「は、はぁ…」

では、と、微笑むと、彼は去っていった。

「(山南さん、か…優しそうな人だな…)」

「それじゃ、買い物に行きましょうか♪」
「あ、えと、あなたは…」
「この方は、山崎す…」

そこまで鈴花が言うと、その人は鈴花の口を抑えた。そして

「山崎でぇ〜す、あたしも仲間なの、ヨロシク☆」

とウィンクされた。鈴花はいぶかしげな顔をしている。

「じゃあ、気を取り直して行ってみよう!」

そうして、街へ繰り出した。

 

 

 

 

 

 

「あ、これなんか似合うんじゃないですか♪あっこれも♪」

いざ買い物にきてみると、山崎さんより鈴花のほうがノリノリだった。

「かわいいわよね、あの子」

そう思っているのを見透かされたように、山崎さんに言われる。

「あの子ね、きっと嬉しいのよ、自分がお世話できるあなたが入ってきて…。隊士としては、あの子もまだまだお世話される方だから」
「なるほど…」
「だから、あんた簡単ぬけちゃだめよ。なりゆきだったかもしれないけど、こうしてあんたを大切に思う子がいるんだからね」
「…山崎さん、それって――」
「あ〜ら、これなんかあんたにピッタリだわ!!」

まるで近藤さんとのやり取りをきいていたような言いぶりに聞き返そうとしたが、目先にあった簪をあてがわれごまかされてしまった。

「山崎さん」
「な〜に?」
「ありがとうございます」
「…簪があんたを呼んでただけよ」

感謝したのはそれではないが、それをわかって言ってるかんじがした。

これからどうなるのかと思ったが、こういう人がいてくれればなんとかなるかもしれない、そう思えて嬉しかった…。

 

 

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山崎さんでした。こんな人がいたら、だいぶ気が楽になりますよね。
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