アコニック・ランド:雑語(工事中):十干十二支の言葉

十干十二支の言葉

十干の簡易紹介
十干の音読みの問題点
訓読みについて
五行でまとめた呼び名
二十四方位に基づく十干の別訓案


十干の簡易紹介

十干(じっかん)と言うのは、甲乙丙(コウオツヘイ)のアレの事で、「干支」の「干」でもあります。
その名の通り十あり、基本データは以下の通りです。
十干音読み訓読み訓読みの別表記五行陰陽
コウきのえ木の兄
オツ・イツきのと木の弟
ヘイひのえ火の兄
テイひのと火の弟
ボ・ボウつちのえ土の兄
つちのと土の弟
コウかのえ金の兄
シンかのと金の弟
ジンみずのえ水の兄
みずのと水の弟

干支と言えば、日常では「十二支」と同義となっていると思いますが、本来は十干と十二支が合わさって干支であり、十干も十二支と同様、毎年変化して行きます。
例えば1982年なら、十二支は戌ですが、十干は壬であり、干支は「壬戌(みずのえいぬ)」です。
そして翌年1983年は「癸亥(みずのとい)」となります。
60年で還暦といいますが、これは干支が60年で一回りする事によるらしいです。
十二支が戌である年を戌年と呼ぶのに対し、十干が壬である年を「壬年(みずのえどし)」、干支が壬戌である年を「壬戌年(みずのえいぬどし)」と呼んだりもするようです。
干支は年のみならず、日や月などにも当てられます。

十干には陰陽五行も割り当てられてますが、丁度「五行×陰陽=十干」の形になっており、下図のようにまとめられます。
古典元素好きにとっては、この方が面白く覚えられると思います。
十二支にも一応陰陽五行は当てられてますが、1対1対応にはなってませんし、十干の場合は訓読みがもろ陰陽五行になってますので、かなり強い結び付けがされてると思われます。
例えば、寅は「陽の属性と木の属性を持つ」と表現されるのに対し、甲は「陽の木である」といった扱いになっている感じがあります。
但し、陰陽と五行を結びつけて十干を作ったわけではなく、十干と陰陽五行は別々に生まれ、後から関連付けられただけのようです。

訓読みの所で、陽が「兄(え)」、陰が「弟(と)」となっていますが、「えと」という訓はこれが由来で、元々「えと」と言えば十干の事を指したそうです。
一方、十干は「天干」、十二支は「地支」とも言い、干は肝や幹、支は肢や枝と関わりがあるという話もあったりなど、十干と十二支自体の間にも陽と陰のような関係が見られますので、干支を「えと」と読むのは案外合ってると思います。
現在では十二支の影に隠れる感じになっている十干ですが、肝が体内に隠れてたり、幹が枝にかくされてたりする事に関連付けられそうな気がしないでも無いです。

2008.3.5-2018.1.9


十干の音読みの問題点

十干は、コウ・オツ・ヘイと音読みで呼ばれる機会が多いですが、この読み方には致命的に思える問題がある事は、意外と意識されてない気がします。
それは、十干の内、甲と庚は「コウ」、己と癸は「キ」で、音が被っている事です。
この内、甲と庚については、古語では甲は「カフ」、庚は「カウ」で違ったみたいですが、己と癸については共に「キ」のようで、上代特殊仮名遣いでも共に乙類のようですので、どう区別したのか全く謎です(中国読みでは発音が違うようですが)。

現代で十干の音読みを実用するには、この二つの音に違いを設ける必要があると思います。
案としては、庚を「ゴウ」、癸を「」と読む事にしてはどうかと思います。
全く適当と言うわけではなく、これらがピンインではgで始まってる事を一応参考にしています。
それでも音読み扱いにするのは無理があるかもしれませんが、数詞の音訓とか結構カオスですし、訓読み扱いでも大して問題無いと思います。

己と癸に関しては、己を「コ」と読むようにするという手の方が簡単な気もします。
己だけが呉音という形になるのが引っ掛かりますが、他も漢音だったりそうでなかったりしてますし、訓読みよりはマシかもしれません。「オツ」も、手元の辞書では慣用音とされてましたが、呉音と言われる事もあるようです。
漢音で統一するとなると、乙は「イツ」に、戊は「ボウ」になり、「文化としての暦」という書籍によれば、そういう読み方もあるようです。
でも甲と庚に関しては難しいです。甲は「カン」と読む事で対策できそうですが、甲乙が「カンオツ」に、甲子園が「カンシエン」になってしまいますので、甲の方を変えるのは避けた方が良さそうに思います。しかし庚には「コウ」以外の読みが見当たりません。

十二支の音読みも、子と巳が「シ」、申と辰が「シン」で被っています。
十二支の音読みは滅多に使われ無さそうなので対策不要に思える所かもしれませんが、「甲申」のような干支の形になると音読みされる機会も多くなり、この場合「甲辰」と被ってしまいます。
ただ、「甲子」は有っても「甲巳」は通常無いので、子と巳の呼び分けは不要かもしれません。
呼び分ける場合、子は「ス」、辰は「ジン」とも読めますが、子については甲子園が「コウスエン」になったりして具合悪いかもしれません。

2008.3.5-2018.1.9


訓読みについて

十二支の訓読みで、「うさぎ」は「う」、「ねずみ」は「ね」など、三文字以上のものは略されてるのに、「ひつじ」だけ唯一三文字のままになってます。
並べた時に語呂悪いと思いますし、これも略してはどうかと思います。
候補としては、「」「ひつ」「」「つじ」が考えられます。
そもそもなぜ略されなかったのかが凄く謎なのですが、この件が話題にならないのもまた謎です。
特に「ひつじさる(坤、未申)」なんかは「いぬい」「うしとら」「たつみ」に対して明らかに浮いてると思います。
「ひつじ」を略せば「ひつじさる」も「ひさる」「ひつさる」「じさる」「つじさる」となり、人名としての使い勝手も向上しそうです。

この内、「ひ」では亥と紛らわしいかもしれないし、「ひつ」では棺みたいで縁起悪いかもしれません。
これが略されなかった理由なのかもしれません。
ただ、「へび」が「み」と略されてる事に倣えば、「じ」「つじ」も候補に挙げる事ができるはずです。
「へび」は古語で「へみ」であり、それを略して「み」って事らしいです(参考: )。
つまり、後ろから略すのもアリという事です。
「へび」についても、なぜ元々二文字なのにわざわざ一文字に略したのか謎ではありますが。

十干の場合でも、庚や辛が「かねのえ」「かねのと」でも「かなのえ」「かなのと」でもなく、「かのえ」「かのと」と略されているのに対し、戊己壬癸は、「つちのえ」「つちのと」「みずのえ」「みずのと」と長いままになってます。
これらも、「つのえちのえ)」「つのとちのと)」「みのえ」「みのと」くらいに略してはどうかとも思います。
「み」が「巳」と被るのが少し気になりますが。

以下のように、「の」を省略して更に短縮する手も考えられますが、味気なさ過ぎますかね。
きえきとひえひとちえ(つえ)ちと(つと)かえかとみえみと

2008.3.5-2018.1.9


五行でまとめた呼び名

十干の内、陽のものを陽干、陰のものを陰干と言いますが、これに対し、
五行が木のもの(すなわち甲と乙)をまとめて木干と呼んではどうかと思います。
というか、そういう風に呼ばれてないっぽいのが意外でした。
同様に以下のようになります。
甲 乙木干
丙 丁火干
戊 己土干
庚 辛金干
壬 癸水干
寅 卯木支
巳 午火支
丑 辰 未 戌土支
申 酉金支
亥 子水支

2018.1.13


二十四方位に基づく十干の別訓案

八卦の艮は、後天図で東北を指し、東北は十二支では丑寅の方角であるため、艮は「うしとら」とも読まれています。
この後天図による方向は、二十四方位においてもそのまま用いられています。
すると、寅卯の方角である甲も「とらう」と読めそうです。
後は以下の通りになります(戊と己は方位が当てられてないので、ここには登場しません)。
とらう
うたつ
みうま/みんま
うまひつじ
さるとり
とりいぬ
いね
ねうし

2018.2.5


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