十干の簡易紹介
十干の音読みの問題点
訓読みについて
五行でまとめた呼び名
二十四方位に基づく十干の別訓案
十干(じっかん)と言うのは、甲乙丙(コウオツヘイ)のアレの事で、「干支」の「干」でもあります。
その名の通り十あり、基本データは以下の通りです。
十干 | 音読み | 訓読み | 訓読みの別表記 | 五行 | 陰陽 |
---|---|---|---|---|---|
甲 | コウ | きのえ | 木の兄 | 木 | 陽 |
乙 | オツ・イツ | きのと | 木の弟 | 陰 | |
丙 | ヘイ | ひのえ | 火の兄 | 火 | 陽 |
丁 | テイ | ひのと | 火の弟 | 陰 | |
戊 | ボ・ボウ | つちのえ | 土の兄 | 土 | 陽 |
己 | キ | つちのと | 土の弟 | 陰 | |
庚 | コウ | かのえ | 金の兄 | 金 | 陽 |
辛 | シン | かのと | 金の弟 | 陰 | |
壬 | ジン | みずのえ | 水の兄 | 水 | 陽 |
癸 | キ | みずのと | 水の弟 | 陰 |
木 | 火 | 土 | 金 | 水 | |
---|---|---|---|---|---|
陽 | 甲 | 丙 | 戊 | 庚 | 壬 |
陰 | 乙 | 丁 | 己 | 辛 | 癸 |
十干は、コウ・オツ・ヘイと音読みで呼ばれる機会が多いですが、この読み方には致命的に思える問題がある事は、意外と意識されてない気がします。
それは、十干の内、甲と庚は「コウ」、己と癸は「キ」で、音が被っている事です。
この内、甲と庚については、古語では甲は「カフ」、庚は「カウ」で違ったみたいですが、己と癸については共に「キ」のようで、上代特殊仮名遣いでも共に乙類のようですので、どう区別したのか全く謎です(中国読みでは発音が違うようですが)。
現代で十干の音読みを実用するには、この二つの音に違いを設ける必要があると思います。
案としては、庚を「ゴウ」、癸を「ギ」と読む事にしてはどうかと思います。
全く適当と言うわけではなく、これらがピンインではgで始まってる事を一応参考にしています。
それでも音読み扱いにするのは無理があるかもしれませんが、数詞の音訓とか結構カオスですし、訓読み扱いでも大して問題無いと思います。
己と癸に関しては、己を「コ」と読むようにするという手の方が簡単な気もします。
己だけが呉音という形になるのが引っ掛かりますが、他も漢音だったりそうでなかったりしてますし、訓読みよりはマシかもしれません。「オツ」も、手元の辞書では慣用音とされてましたが、呉音と言われる事もあるようです。
漢音で統一するとなると、乙は「イツ」に、戊は「ボウ」になり、「文化としての暦」という書籍によれば、そういう読み方もあるようです。
でも甲と庚に関しては難しいです。甲は「カン」と読む事で対策できそうですが、甲乙が「カンオツ」に、甲子園が「カンシエン」になってしまいますので、甲の方を変えるのは避けた方が良さそうに思います。しかし庚には「コウ」以外の読みが見当たりません。
十二支の音読みも、子と巳が「シ」、申と辰が「シン」で被っています。
十二支の音読みは滅多に使われ無さそうなので対策不要に思える所かもしれませんが、「甲申」のような干支の形になると音読みされる機会も多くなり、この場合「甲辰」と被ってしまいます。
ただ、「甲子」は有っても「甲巳」は通常無いので、子と巳の呼び分けは不要かもしれません。
呼び分ける場合、子は「ス」、辰は「ジン」とも読めますが、子については甲子園が「コウスエン」になったりして具合悪いかもしれません。
2008.3.5-2018.1.9
十二支の訓読みで、「うさぎ」は「う」、「ねずみ」は「ね」など、三文字以上のものは略されてるのに、「ひつじ」だけ唯一三文字のままになってます。
並べた時に語呂悪いと思いますし、これも略してはどうかと思います。
候補としては、「ひ」「ひつ」「じ」「つじ」が考えられます。
そもそもなぜ略されなかったのかが凄く謎なのですが、この件が話題にならないのもまた謎です。
特に「ひつじさる(坤、未申)」なんかは「いぬい」「うしとら」「たつみ」に対して明らかに浮いてると思います。
「ひつじ」を略せば「ひつじさる」も「ひさる」「ひつさる」「じさる」「つじさる」となり、人名としての使い勝手も向上しそうです。
この内、「ひ」では亥と紛らわしいかもしれないし、「ひつ」では棺みたいで縁起悪いかもしれません。
これが略されなかった理由なのかもしれません。
ただ、「へび」が「み」と略されてる事に倣えば、「じ」「つじ」も候補に挙げる事ができるはずです。
「へび」は古語で「へみ」であり、それを略して「み」って事らしいです(参考:■ ■)。
つまり、後ろから略すのもアリという事です。
「へび」についても、なぜ元々二文字なのにわざわざ一文字に略したのか謎ではありますが。
十干の場合でも、庚や辛が「かねのえ」「かねのと」でも「かなのえ」「かなのと」でもなく、「かのえ」「かのと」と略されているのに対し、戊己壬癸は、「つちのえ」「つちのと」「みずのえ」「みずのと」と長いままになってます。
これらも、「つのえ(ちのえ)」「つのと(ちのと)」「みのえ」「みのと」くらいに略してはどうかとも思います。
「み」が「巳」と被るのが少し気になりますが。
以下のように、「の」を省略して更に短縮する手も考えられますが、味気なさ過ぎますかね。
甲 | 乙 | 丙 | 丁 | 戊 | 己 | 庚 | 辛 | 壬 | 癸 |
きえ | きと | ひえ | ひと | ちえ(つえ) | ちと(つと) | かえ | かと | みえ | みと |
十干の内、陽のものを陽干、陰のものを陰干と言いますが、これに対し、
五行が木のもの(すなわち甲と乙)をまとめて木干と呼んではどうかと思います。
というか、そういう風に呼ばれてないっぽいのが意外でした。
同様に以下のようになります。
甲 乙 | 木干 |
丙 丁 | 火干 |
戊 己 | 土干 |
庚 辛 | 金干 |
壬 癸 | 水干 |
寅 卯 | 木支 |
巳 午 | 火支 |
丑 辰 未 戌 | 土支 |
申 酉 | 金支 |
亥 子 | 水支 |
八卦の艮は、後天図で東北を指し、東北は十二支では丑寅の方角であるため、艮は「うしとら」とも読まれています。
この後天図による方向は、二十四方位においてもそのまま用いられています。
すると、寅卯の方角である甲も「とらう」と読めそうです。
後は以下の通りになります(戊と己は方位が当てられてないので、ここには登場しません)。
甲 | とらう |
乙 | うたつ |
丙 | みうま/みんま |
丁 | うまひつじ |
庚 | さるとり |
辛 | とりいぬ |
壬 | いね |
癸 | ねうし |