アコニック・ランド:雑語:命数法について

命数法について

一・十・百・千〜無量大数という、数の単位の構成についての話です。

一〜億辺りの単位は紀元前より見られますが、現在知られる、無量大数までの構成と数値との関係は、
1631〜1634年頃という、それと比較すればできたばかりのものとされており、加えて日本独自のものとなっています
(中国では現在、兆すら億億と表現され、億までしか使われていないそうです)。
また今の所、垓以降の単位が実用される事はまず無かったと思います。
実用性の怪しい単位名もあります。
1631〜1634年は現代に比べれば大昔ですので、当時と現代とでは事情の違いも出ているかもしれませんし、
現代的な視点で再検討の余地もあるかもしれません。

そこで、この辺を現代の視点から見直し、再構成してみるのもアリなのではないかと思います。

京進法の勧め
再検討の要りそうな単位名
極・恒河沙について
小数の整備
SI接頭辞について
英語の命数法
参考文献

JavaScript版:数値⇔名称表


京進法の勧め

数の数え方で、日本語では現在、一万毎に区切る形式が採用されています。
4桁で一組という形で、万進法と呼ばれてるようです。
しかし京垓辺りになって来ると、だらだら無造作に増えてる感があると思います。
恒河沙などは殆ど遊びで作られてる感がありますが、京までならたまに見るので気になる所です。

そこで、4桁組を更に4つ一組とした、16桁で区切る形式も加えてはどうかと思います。
京から京進法(万万万万進法? 万4進?)に入る形で、「万・京進」とでも呼べると思います。
具体的には以下のようになります。

数値現行(万進)万・京進
10^0
10^1
10^2
10^3
10^4一万
10^5十万
10^6百万
10^7千万
10^8一億
10^9十億
10^10百億
10^11千億
10^12一兆
10^13十兆
10^14百兆
10^15千兆
10^16一京
10^17十京
10^18百京
10^19千京
10^20一垓一万京
10^21十垓十万京
10^22百垓百万京
10^23千垓千万京
10^24一𥝱一億京
10^25十𥝱十億京
10^26百𥝱百億京
10^27千𥝱千億京
10^28一穣一兆京
10^29十穣十兆京
10^30百穣百兆京
10^31千穣千兆京
10^32一溝一垓

これにより、垓、𥝱、穣まで覚える必要も薄まりますし、
以下のようなイメージで捉える事ができるようにもなります。
数値現行(万進)万・京進
10^311000 0000 0000 0000 0000 0000 0000 00001000 0000 0000 0000 - 0000 0000 0000 0000
10^3310 0000 0000 0000 0000 0000 0000 0000 000010 - 0000 0000 0000 0000 - 0000 0000 0000 0000
現行が「十・百・千」と万以降が別格の二段構成になってるのに対し、更に京以降を「万・億・兆」に対して別格とする三段構成です。
入れ子構造を持つ点が「上数」と呼ばれる形式と似てますが、上数は単位名を有効活用できる反面、
ヒトには難解だったとの噂です。対して万・京進法は、逆にヒトが扱い易くするためのものです。
字数が増えてしまう点はデメリットですが、垓の使用頻度からして、メリットの方がはるかに大きいのではないかと思います。

この流れで行けば、更に64桁や256桁で区切る構造も加わりそうですが、そこまでする必要は無いかもしれませんし、
これ以上段階を増やすと上数の二の舞になるかもしれません。
一応これは、万進法に対して「10^(4^n)進法」と呼べると思います。親しめる名前としては「多重万進」「超万進」辺りでしょうか。
なお上数は、万までは下数なので「中途半端な多重百進」です。それに対し「多重百進」が、真なる上数と呼べると思います
(下表:真・上数)が、更なる難解さに加え、さすがに万や千まで変えるのは無茶だったから妥協されたのだと思います。

万・京進の場合、オマケ的に恒河沙進も取り入れてはどうかと思います(下下表:万・京進´)。
後項で述べる理由に加えて、特に万・京進の場合は、恒河沙が京の10乗という丁度切りの良い値となっており、
以下のように十進数と結び付けて捉える事が可能となります。
𥝱
恒河沙
十一京恒河沙
二十阿僧祇
三十那由他
四十不可思議
五十無量大数
多重万進の場合は、恒河沙から上数にするのも有りかもしれません(下表:多重万進´)。
こちらの場合も、丁度恒河沙から新しい段階に入り好都合です。
(微改1・微改2については後述)

数詞現行
(寛永11年版)
微改1微改2現行
(寛永8年版)
万・京進万・京進´多重万進
(10^(4^n)進)
多重万進´真・上数
(10^(2^n)進)
10^0
10^1
10^2
10^310^4
10^410^8
10^810^16
10^1210^32
10^1610^64
10^2010^3210^128
𥝱/秭10^2410^4810^256
10^2810^6410^512
10^3210^8010^12810^1024
10^3610^9610^19210^2048
10^4010^11210^25610^4096
10^4410^12810^51210^8192
10^4810^14410^76810^16384
恒河沙10^5210^5610^16010^102410^32768
阿僧祇10^5610^6810^10410^6410^17610^32010^204810^65536
那由他10^6010^8410^15610^7210^19210^48010^307210^409610^131072
不可思議10^6410^10010^20810^8010^20810^64010^409610^819210^262144
無量大数10^6810^11610^26010^8810^22410^80010^819210^1638410^524288

2014.4.21-2016.4.1


再検討の要りそうな単位名

単位の内、「𥝱(ジョ)」は再検討が必要なのではないかと思います。
次の「穣(ジョウ)」と音が似過ぎてて、実用性に乏しいと思えるからです。
ついでにこれだけシフトJISにも入っていません。

一方、ウィキペなどによれば、これは日本独自の国字であり、
本来は「秭」である所をミスプリでこうなったとの事です
(手元の漢字辞典には載っても居ない)。
ただ、秭の読みは「シ」であり、「四」と被ってしまいます。
奇遇にも、ミスプリの方が未だマシという事態になっています。
そしてこちらもシフトJISに入っていません。

どうせ元がミスプリであるならば、シフトJISに含まれる、
もう少し区別し易い音の別の文字(できれば似た形の)
に置き換えてはどうかと思います。
間を取って「ショ(諸、庶)」とか…まぁ色々あると思います。

シフトJISに含まれるか否かを問題にしなければ、
元々の字である秭の新字体的異体である「𥞑」を使うべきだと思います。
これに訓として「じょ」なり何なりを付けるのも有りだと思います。
数詞って元々音訓結構入り乱れてますしね。

他、「正」辺りも別の意味で実用性がちと気になります。
日常的に至る所で使われ過ぎているからです。
正負の正と混同されないかも気になります。
この辺、適当な偏を付けるなり、同音の別の字に置き換えるなりした方が良さそうな気もします。
「極」も、読みは違えど助数詞としても一応使われてますし、怪しいですね。
「京」も助数詞としても使えなくもなさそうで気になりますが、
思えば「兆」もそうなので問題無いかな…?

2016.3.9-15


極・恒河沙について

寛永8年版などにみられる、極以降を特別扱いする形ですが、どうも日本独自っぽいです。
恐らくは、載までは下数時代に輸入され、極以降が万万進時代に輸入された事による一種の混乱です。

しかし、ただ直してしまうには惜しいエラーだと思います。
寛永11年版では平坦過ぎてつまらないし、下数と同様、無駄に単位名を消費してる感があるからです。
自分が初めて知ったのは、平凡社の百科事典による寛永8年版でしたが、極からはボスクラス登場という感じで燃えたものでした。
十万百万千万…と数えて行くと、載までは千で終わりなのに、極は千万極まであるんだぜ。

特に恒河沙以降は、複数文字&仏教用語系で明らかに異彩を放ってますので、
やや特別扱いするのが妥当そうに思います。
一方の極については、万〜載と同等の扱いが妥当と思います。
一字だからのみならず、歴史も恒河沙以降よりはずっと古い様子ですので。
加えて、下数と上数(or万万進)とを比べると、ちょうど「下数の1恒河沙=10^16=上数の1兆」となりますので、
偶然かもしれませんが切りが良い気もします。

また、恒河沙まで来て万進⇒万万進てのは中途半端な変化だと思います。
まず、万の分の席の無駄遣いです。万恒河沙という表現を認めるなら、
ついでに億恒河沙、兆恒河沙くらいは認めた方が効率的でもあると思います。
どうせなら京進か恒河沙進が良いのではないかと。

結局、現行をマイナーチェンジするとしたら、恒河沙以降を京進(先の図:微改1)または
恒河沙進(先の図:微改2)とするのが妥当かと思います。

他、無量大数についても、無量と大数に分ける説があるらしいのですが、大数はさすがに無いんじゃないかなぁ…。
特に小数に対する大数(おおかず?)との混同が苦しく思います。無量大数なら字数としても丁度綺麗に並びます。
というか無量大数は日本の造語で、中国の時点では無量数だったっぽい。
そうなると中国の時点では不可思議が四文字で浮いてます。元ネタ(仏典)のままなら不可思で丁度三文字なのに、
なぜ議を付けたのか不可思議ですが、中国語における語呂の都合だったのでしょうか。
あと無量大数なんて言うくらいなら、「一/無量大数」辺りを無量小数と呼ぶべきような。

2014.5.6-2016.3.17


小数の整備

ミリやセンチ等、SI接頭辞の小数がよく使われてるのに対し、漢数字の小数はいまいち出番がありません。
ただ、0.001辺りとなると、「零点零零一」と呼ぶより「一厘」と言った方が断然早いですし、
もう少し捻れば多方面で活躍できそうな気もします。

しかし漢数字の小数は案外扱いが厄介です。
まず使われ方が案外特殊で、例えば「5.5メートル」ならば「五メートル五分」のように表現するとの事です。
この方式(以下仮に「大単小式」)では、単純に「5.5」と言いたい場合にはどうするのか、0.5メートルはどうなるかが
難点になるように思います。
「九割九分九厘」のような使い方をされると、0.05と言えば「五分」となり、分が0.01を意味するかのようになってしまいます。

同様の使われ方をするものに「分(ふん)」「秒」があります。
時刻を表す場合は○時○分○秒、時間を表す場合は○時間○分○秒、角度を表す場合は○度○分○秒となっています。
我々は「分」と言えば時間の単位だと思ってしまいがちですが、本来は1/60を表す物のはずなのです。

0.5メートルの場合なら、「メートル五分」という呼び方はできなくも無いかもしれません。
「一メートル五分」と混同されないか気になりますが、「一千万」と「一千一万」を混同する話は聞きませんし。
ただ、ミリメートルと同様、普通に「五分メートル」とでも言えば良さそうな気もします(後述のように、万進法を取り入れる
場合を考えると、大単小式も一理ある気もしますが。他にも重要な理由があるのかもしれませんし)。

「5.5」については、我々が日常使ってる口語表現を流用して「五点五分」と表現できないかと思います。

次に、小数は依然として下数方式です。
「九千九百九十九万九千九百九十九」を「九京九兆九億九万九千九百九十九」と表現しているようなものです。
この事が、小数の出番の少なさと相互作用しているのではないかと思います。
糸が「し」で四(や秭)と、繊が「せん」で千と被ってる所なんかも、出番の少なさ故の不整備なんじゃないかと思います。

ただ、いざ小数に万進法を取り入れるとなると、0.1を「一分」と「千糸」のどちらべ呼べば良いのかという問題が現れます
(京進法を取り入れる場合は更に「千兆繊」もあります)。
0.1234ならば「一分二厘三毛四糸」か「千二百三十四糸」か。
小数点以下三桁くらいまでなら、前者の方が呼びやすそうですが、大数により慣れてる我々としては、
小数点以下四桁の場合は後者が呼び易そうではないでしょうか。
特に「1234万」と言った表現に対しては「1234糸」という表現が考えられ、この場合は後者で呼ぶのが合いそうです。
これは場合によって使い分ける形になるでしょうか。

0.00012の場合は、「一糸二千忽」と「一糸二分」になるでしょうか(忽は現在は10^-5ですが、万進法を取り入れる事で
10^-8と解釈してます)。
後者は大単小式と似ていますが、これを考慮しての形式だったのでしょうか。
一見「一点二分糸」とも呼べそうですが、これでは1.00002になってしまいます。
しかし後者の方法では、0.000023は「糸二分三厘」以外は難しそうです。
大数にも「一千」=「万一分」という使い方を認めるとすると、「一万一分」≠「一万点一分」という点が要注意となります。

2014.5.6


SI接頭辞について

SI接頭辞も、だらだら増えてる感がありますので、
そろそろkG(キロギガ)などの複合型を考える必要があるのではないかと思います。
ただ、単位名が長くなってしまうのが難点です。3×3=9桁で区切るのは早急そうです。
また、10.005Mを10M5kのように表現する例は知りませんので、その辺が根本的に違うかもしれません。
ヨタくらいになれば、使う機会も減る分、kY(キロヨタ)等も使えそうに思うのですが。

個人的には、テラくらいからが適当かな?と思います。
また、ペタ以降は1000の5〜8乗の意味合いを含んでるようなのと、
long scaleとshort scaleみたいな混乱を避けるため、
ペタの別名としてkTを導入するような形が妥当かと思います。
k→M→G→T→kT(キロテラ)→MT(メガテラ)→GT(ギガテラ)→Yという感じです。
同様に、mp(ミリピコ)なども検討してはどうかと思います。

2014.4.21-2016.4.1


英語の命数法

千^2はmillionですが、千^3以降の呼び方には大きく二つの流派があるようです。
千^3をbillion、千^4をtrillionと呼ぶもの(short scale)と、
千^3をthousand millionまたはmilliard、千^4をbillionと呼ぶもの(long scale)です。

shortが一般的なようですが、
billionとtrillionは文字通り見れば2-millionと3-millionなのでデタラメです。
以下のような微妙なイメージになります。
shortlong
billion1 000 000 - 0001 - 000 000 - 000 000
trillion1 000 000 000 - 0001 - 000 000 - 000 000 - 000 000
millionの次をtrillionとするなら別ですが…。
特にtrillion以降は数詞が入ってる事が一目瞭然なので、非常に混乱を招くと思うのですが、
使われる機会が少ないからあまり問題にならないのでしょうかね…。

longでは10^11はhundred thousand millionとなるわけですが、これが長すぎて問題ならば、
thousand millionをt-millionやthou-millionなどに略せば良さそうですし(というかhundredも十分長過ぎない?)、
milliardという言葉もあります。
ただmilliardについては、同じ理屈ではbilliardがthousand×billionではなくmilliard^2のイメージになってしまわないか気になります。

このように英語の単位名は、billion以降は数詞による規則性が組み込まれてる点が、漢語と大きく異なります。
これにより、shortなら30桁毎、longなら60桁毎に区切る構造が現れます。
辞書標準ではvigintillion(20-million)までしか無く、次は飛んでcentillion(100-million)と
なってるようですが、21〜99-millionも考えられてて割と浸透している様子です
(unvigintillion、trigintillion等)。
101以上はよくわかりませんが、centillionでもshortで10^303、longで10^600となり、
我々の無量大数を遥かに超える数となります(万・京進法´ならば、無量大数の方が上回ります)。

one→ten→hundred→thousand→million→billionと見ると、英語も東洋と同様、万進に適したネーミングだったのではないか、
10^4をmillion、10^8をbillionとした方がすっきりしたのではないか…と思いましたが、
milliが1000から来てる辺りを見るとそうでも無いのでしょうか。
いっそ千^2をbousand、千^3をtrousandとかにした方が合うのではとも思います。
最近は日常でもSI接頭辞のキロやメガが使われる事があるようですので、そうなるとthousandやmillion自体廃れて来るでしょうかね。

2014.4.27-2016.4.1


参考文献

思索の遊び場>無量大数の彼方へ
雨粟莊>大数の名前
Googology Wiki>-llion


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