天王星の別名として「風星(ふうせい)」(或いは「風曜星」「風行星」「風王星」)、
海王星の別名として「雷星(らいせい)」(或いは「雷曜星」「雷行星」「雷王星」)というのを設けてはどうかと考えています。
名前自体は恐らく多くの人が考えた事が有るのではと予想してますが、それは案外妥当なのではと思います。
水星〜土星が東洋の五行説に由来している名前である事に対し、天王星・海王星・冥王星は、殆ど英名の直訳となっています。
例えば海王星の「海王」は、ネプチューン≒ポセイドンを指しており、非常に西洋色の強い名前です。
幾ら西洋人が発見したからと言っても、惑星の名称くらい、東洋独自の物を考えるべきでは無いでしょうか。
特に、英名がローマ神話の神様の名前で統一されている事に対し、こちらも水星〜土星の流れを汲んだ元素(エレメント)名が必要だと思います。
天王星や海王星に元素名を付けるとなると、大昔から五元素で完結している五行に対し、新しい元素を割り込ませるような形となり邪道とも思えますが、その点については目を瞑るとします。
五行が惑星の数から来てる説を取るならば、惑星がもう二つ有った以上、むしろ新たに元素を追加して七行説とかを考えるべきかもしれません。
西洋占星術でも、昔ながらの物に天王星〜冥王星を新たに取り入れたようですし。
ここで、「天」「海」「冥」をそのまま元素して解釈するという手もあります。
というより、恐らく多くの人がそんな感じに捉え、その事が、これらの名前が定着した事の一翼を担ったのではないかと思います。
しかし同時に、以下のような違和感も感じたのではないでしょうか(五行の木や金も微妙と言えば微妙ですが)。
・海では水(水星)と被ってしまうのではないか(地球と土星についても問題は有りますが…)。
・海に対して水が有るのに、天が有って風が無いのはどういう事か。
・天では(地球に対する)天球(恒星球)と紛らわしい。地が地球を示すなら、天は天球を示すべき。(参考:地球と天球)
・天は位置を示す語なので、他の元素と同列になり難い?
・ネプチューンが海王星なら、天王星はジュピター(木星)の事になってしまうのではないか。
そこで、他に使える物が無いか検討する事にします。
新しい元素としては、古典元素的に列挙される要素としてより馴染み深いもの、そして既に使われている元素と被らないものが理想的です。
まず、五行説とよくセットになる陰陽説があり、これはいわゆる光と闇ですが、
「陰(闇)」と「陽(光)」はそれぞれ既に「太陰(=月)」と「太陽(=日)」に当てられてるのでちょっと除外します。
次に気になるのは、西洋の四大に有って五行に無い「風(空気)」なのではないかと思います。
風は東洋においても以下のように、五行に入っていないのが不思議に思うくらい馴染まれてます。
・インド・密教: 土(地)→水→火→風→空
・『孫子』軍争篇:風・林・火・陰・山・雷
・風神・雷神
・八卦と自然: 天・地・雷・風(木)・水(月)・火(日)・山・沢
・花・鳥・風・月
・ねずみの嫁入り: 太陽・(月)・雲・風・壁
・六気: 寒・暑(熱)・燥・湿・風・火
・風水・風土・風光・風雲・風雨
五行では風は木と対応付けられる事が多いらしいですが、これは西洋の四大との兼ね合いから生まれたものに過ぎないとも言われますし、
我々の感覚では火や水にも対応できそうで、金の代わりとして風が入れられてる事さえ有ります。
風は古典の範囲ではもはや不可欠な部類であり、第六行(六番目の元素)として挙げるには、右に出る物は無いのではないでしょうか。
現代的には風より雷が不可欠そうですが、古典的な感覚を優先すべきだと思います。
現代的な感覚でも、固体⇒土、液体⇒水と見ると、気体に結びつく風の欠如が先に気にならないでしょうか。
非常に都合の良い事に、天王星の「天」とも丁度結びつき、別名としての違和感も薄くなりそうです。
そういう意味で天王星を風星と呼んだ人も多いのでは無いかと思います。運命的です。
風が他の元素に比べて視覚化し難い点からも、見え難く惑星としての認識が遅れた天王星には、(それ以前の惑星に対して)風星の名が相応しいかもしれません。
五行に含まれなかったのも、空気と言う目に見えない物が、物質としては未だあまり認識されてなかったから…かもしれません。
問題は、「風で出来た星」と考えると扱い辛いという所でしょうか。
風星と言う名前は、ネット上ではケレス(小惑星帯で唯一の準惑星)の和名としての希望が見受けられます。
個人的には天王星の別名としたい所ですが、確かに、水星〜土星の範囲に含まれる準惑星〜惑星という枠組みならば、それも有りかもしれませんし、
それにより天王星⇔ケレス、海王星⇔水星、冥王星⇔土星⇔地球みたいな対応を考えるのも面白いかもしれません。
風の次に良く見るとなると、雷ではないでしょうか。
雷というと電気で、非常に近代的なイメージがあり、他元素から浮いて見えるかもしれませんが、先の例にも意外と含まれてます。
しかも以下のように、風とペアとなってる事が多いように思います(なぜペアとなるのかは謎ですが。現代の創作の中でよく出て来る場合は、風神雷神図のインパクトからでしょうか)。
・八卦:震と巽が反転関係になっているが、これらには雷と風が当てられている。
・「風林火陰山雷」の最初と最後(内容的には山とペア?)
・風神と雷神
・デカルトの夢:風と雷と詩集
更に天王星と海王星は、太陽系唯二の巨大氷惑星で大きさなども似ており、ペア扱いするには適しています。
そして、近代になって見つかった海王星と、近代になって扱えるようになった電気という辺りも、微妙に結び付くのではないでしょうか。
古典の範囲では、風のように必須と言う程の部類では無さそうに思いますが、他に目立つ元素も見当たりません。
次に現代に視点を移してみると、雷は火と水の次くらいに来る、必須元素の部類になってるように思います。この辺も運命を感じます。
現代的には氷(冷気)も気になる所ですが、火が陽の中の陽であり、夏に当てられる事と、水が陰の中の陰であり、冬に当てられる事から、
五行における水には氷としての側面が強く見られます。
現代でも、水流では殆ど物理属性になってしまいますので、水を冷気と解釈したり、水を氷属性に含めている例がそれなりに見られます。
水と氷じゃ字が似過ぎてるのも難点ですが。
(個人的に金が、相生・相剋的には、氷の性質をかなり秘めてるのではないかと気になってたりもします)
音属性も欲しい気もしますが、雷に比べると古今共に大分マイナーですし、風や木(木魂)や闇(字形)で解釈できなくも無さそうですので、
五行の流れ的には雷が断然ベターかと思います。
風と雷を持ち込む事により、八卦(九星?)ともちょっとした整合性が現れます。まず、坎離震巽が水火雷風でそのまま当てはまります。
後は、乾坤の天地を日月(陰陽説から)、艮兌の山沢を木金で解釈すると、ちょうど合いそうです。
艮は通常土行となってますが、木行が震と巽の二つのみなので、木は他の所にねじ込むしかありません。山はそびえ立つものとして木と通じそうです。
沢と金を結びつけるのは、光沢か砂金か、ちょっと難しいかもしれませんが、兌は金行とされています。
土は中央の空白部分となり、八卦では現れませんが、九星では重要な所のようです。
当てはめると以下のような図ができます。
(先天型)
木 | 日 | 風 |
火 | 土 | 水 |
雷 | 月 | 金 |
風 | 火 | 月 |
雷 | 土 | 金 |
木 | 水 | 日 |
冥王星も、長い間惑星として扱われ、その間様々な影響を及ぼしましたので、一応何か属性当てても良いかもしれません。
これで十曜となるので、十干とも対応付けられるかもしれません。
ただ、冥王星を入れるならエリスとかも入れなきゃいけない気がしますし、もしかしたら第十曜として相応しい新天体が見つかるかもしれませんので、元素を当てるのは保留がいいと思います。
ただ、第十行自体は、七曜+風雷を十干的に並べる事で、浮かび上がって来るかもしれません。
木⇔金、風⇔雷という対応に注目すると、だいたい以下のような感じになると思います。
木 | 火 | 土 | 金 | 水 | |
---|---|---|---|---|---|
陽 | 木 | 日 | 土 | 金(or雷) | 月(or水) |
陰 | 風 | 火 | ? | 雷(or金) | 水(or月) |
五惑星の漢名と言えば、古代中国名(太白や歳星)という五行以前の物もあるので、これらに対応する名前も欲しいと言えば欲しいですが、
今の所目立った統一性は見出せてないので、個人的に優先度は低めです。
逆に、水星〜土星に対し、天王星〜冥王星と同様の英名直訳名を作るのも面白いかもしれません。
◆水星〜土星と名づけられたのは、当時五行説が本気で科学として考えられていたからであり、そうでない現代においては定着しない。
定着の見込みが限りなく皆無という事は自分でも思ってます。
ただ、科学的でないから定着しないとなると、天王星〜冥王星という名前も定着しなかったはずです。
◆近代科学のたまものとして発見された天王星〜冥王星を、呪術的ネーミングで括るのは不適切だ。
西洋人も神話の神様の名前で括っている事を忘れないでください。天王星なんて、発見者による命名が没られた上ですからね…。
2010.5.9-2016.4.14