現在藤本ひとみ著「ハプスブルクの宝剣」を読んでいます。ひじょ〜におもしろい!改宗ユダヤ教徒ロスチャイルドが、ハプスブルクの神聖ローマ帝国を救う!胸のすく冒険譚ですね。時は18世紀のオーストリア、女帝マリア・テレジア(ベルばらでおなじみのマリー・アントワネットのおかん)やプロイセン王フリードリヒ2世らに愛され、憎まれた天才ロスチャイルドは、優れた頭脳と生死を乗り越えた度胸でオーストリアの危機を救う!コサックスの時代と通じていますので、ハンガリー騎兵とか胸甲騎兵とかマスケット銃兵などのリアルなイメージが沸きますね。
で、わがコサックス体験記も2回目。前回のリプレイを見ると、フリードリヒもずいぶんひどいやつですね…って、自分がやってたんですけども(^^;;;住民は、味方の兵が近くにいると立派な戦力になります。攻撃力だけだと普通の槍兵よりも強いくらいです。ただし、防御力がないうえ、味方の兵がいなくなると捕らわれて寝返ったり、すぐに殺されたりしてしまいます。なぜか歩兵が作れなくて白兵戦のできないマスケット銃兵しか登場しないウクライナでプレイしていると、住民が敵を攻撃している後から敵を狙撃するという戦術をとらないと初期状態では勝てません。ですので当たり前の戦術なんですけども、文章で書くとずいぶんひどい感じです(*_*)
それはそうと、どうも用語が不統一だったことに今頃気づきました。全部ドイツ語とか、全部英語とかにすればよかったんですけど、プファルツ(ファルツ)とかベーメン(ボヘミア)とかヴァヴァリア(バイエルン)とかはなんだか気に入らないのでやっぱり今のままの読み方でいいかもしれません。例によってあんまり気にしないでください(^^;
それでは、つづきを始めます……
バイエルン公国軍の攻撃により、ファルツ選帝侯国は瀕死の重傷を負った。宮殿や公会堂などの重要な施設の破壊は免れたものの、市場や鉱山などの産業施設は焼け落ちたかもしくは破壊された。それよりも、兵力のほとんどと住民の3分の2が戦死もしくは捕虜となったという報告に、ボヘミア王にしてファルツ選帝侯のフリードリヒは愕然としたままであった。
「いかに我が国の戦力が貧弱であったとはいえ、たかだが1個部隊にここまで壊滅的打撃を受けるとは…」
自嘲気味に笑うと、自ら王位を継いだボヘミア王国の政府首班であるツルン伯に手紙を書いた。
数日後、ツルン伯からの返事が届いた。しばらくファルツの復興を行いたいので、その間のボヘミア統治を議会に委ねることの了解を求めた手紙に対して、悔やみの言葉と了承する旨の返答であった。
「結局ボヘミア王位なぞ何の役にも立たなかったな…」いかにも議会が統治することが当然といわんがばかりの返事である。フリードリヒが手紙を書かなくとも、ファルツ復興を理由にツルン伯の方からファルツに留まるよう要請があったかもしれない。いずれにせよ、たとえ王であろうとも、現在オーストリア大公=神聖ローマ皇帝と戦争中のボヘミアにとって、自国の戦力とならない者の面倒をみている余裕はないのだろう。
ツルン伯の手紙では、ボヘミア軍はモラヴィア侯国に侵攻、同国を崩壊させたあと、北上するオーストリア軍と交戦するとともに、これまたバイエルン公国と国境線上で争っているらしい。一時はオーストリア軍を敗退させ、首都ウィーンを望める地まで侵攻したという。そのあとバイエルン軍とオーストリア軍の猛攻で撤退し、旧モラヴィア侯国の領土で一進一退の戦いを行っているようだ。
ようやく軍隊を再結成し、産業施設も再築にとりかかっているファルツとずいぶん違う活躍だ。バイエルン軍も最近はボヘミア方面に侵攻しており、もはやファルツなど眼中に無いのかもしれない。フリードリヒは溜息をついた。このままバイエルンが無視してくれればいいが…復興が進めばまた攻めてくるかもしれない。
残念ながらフリードリヒの心配は杞憂ではなかった。斥候兵からの報告では、バイエルン軍の槍兵1個以上の部隊が国境に集結しているようであった。どの程度の規模かわかる範囲にまで近づくことは敵を刺激してしまい危険とのことである。
さすがに全面戦争には進むレベルではないものの、無視し続けられるものでもなかった。バイエルン軍が迫撃砲を持ち出せば国土は否応なく戦火にさらされ、それを避けるために軍隊を突出させて攻撃すれば、結局待ち構えていた敵軍の餌食になるのである。何とかせねばなるまい。さすがのボヘミア軍も、オーストリア軍とバイエルン軍の2か国に攻められればじり貧に陥るであろう。ボヘミアの崩壊はファルツの崩壊をも意味する。
しかしどうやって…?妙案は浮かばなかった。自国の人口は足りない。軍隊の消耗は避けたかった。
「ならば傭兵を雇おう」高い金を支払わねばならなかったが、足りない人口をすり減らしてまで軍隊を形成する余裕は無い。できる限りこれ以上の人口減少は避けたかった。
すでに外交館では傭兵隊長たちが高値で自分たちを買ってもらおうと詰めかけていた。今回の戦争は彼らの最大の稼ぎ時ともいえる。ボヘミア軍もオーストリア軍もバイエルン軍も、アラブ人の射手や重武装の擲弾兵を争って大量に雇っていた。安価な戦力である彼らの小部隊は、すきをみて敵地に乗り込んで焼き討ちや掠奪を働いた。しかも彼らの装備は、軍事施設すら破壊できるのだ。ファルツの外交館には彼らの姿は少なく、ほとんどごろつきか追剥としか見えないトルコ人や、すさんだ顔つきのオーストリア歩兵の浪人がめだった。こんな連中を兵としてのさばらせば、ただでさえ人口の減少したファルツの治安がさらに悪化しそうである。
フリードリヒは外務担当官が作成したリストを見ると、彼らの「言い値」のうち法外に高い値をつけていた隊長に目がとまった。彼の率いる竜騎兵1人でトルコ兵ならば25人は雇えそうだった。フリードリヒは一度彼を呼んでみようと思った。
「エーリヒ・フォン・マンスフェルトだ。戦争は、まあ、道楽だな。俺を雇えば損はしないぜ。」不遜な顔つきの男はそう自己紹介した。ライン河畔に領地を持つ、この男はれっきとした帝国貴族だった。彼の率いる竜騎兵は、彼の領地の兵を主体とした正規の軍事訓練を経た精鋭のようだ。
「敵はバイエルンか。ティリーも出世したものだ。あいつも俺同様貧乏貴族の端くれだったのによ。」
バイエルン公の驍将ティリーは、バイエルン軍の総大将として先頃のファルツ侵攻や現在行われているボヘミア戦争の指揮をとっていた。
「マンスフェルト、君とティリーとどちらが上だ?」
「仕える主君によるさ」マンスフェルトはそう吐き捨てるようにいった。「俺のやり方を気に入らないのならそれでいい。どのみち俺を使いこなせないやつが戦争しても勝てるわけがない。あんたもいやならいいぜ」「条件は?」「俺たちは高いぜ。それから、敵地での掠奪の許可だ」「わかった。ファルツでは掠奪は厳禁だ。バイエルン領なら好きにしろ」
マンスフェルトは慇懃に敬礼をした。「は!仰せのままに」彼はウィンクをすると、軽い足どりで出ていった。
側近が心配そうに尋ねた。よいのですか、あのような者をお使いになって?
フリードリヒは窓の外を眺めながら言った。戦わせてみてから考えるさ。バイエルンに勝てなければファルツの全てが奪われる。金がマンスフェルトに渡ったとしても、ファルツは奪われないのだ。
マンスフェルトの傭兵竜騎兵隊1個大隊(20人)とファルツ槍兵1個部隊(36人)がバイエルンとの国境に接近した。フリードリヒはファルツ部隊の指揮もマンスフェルトに委ねていた。これで勝てなければ貴様の領地で返してもらうぞ、そう言うフリードリヒにマンスフェルトはにやりとして言いはなった。戴いた料金分は働きますよ。さらに今回はサービスして差し上げます。
ファルツ部隊を横1列に整列させ、守備隊形を取らせたマンスフェルトは、竜騎兵隊を率いてバイエルン軍に接近した。彼は片手を振り上げると、バイエルン軍に向けて振り下ろした。
次の瞬間マスケット銃の轟音が鳴り響き、バイエルンの槍兵達がばたばたと倒れた。再びマンスフェルトが手を挙げると、早くも装填を済ませた竜騎兵隊が的を絞った。
唖然としたのはバイエルンの部隊長である。軍使のやりとりもなく突然撃ってきおった!急いで戦闘隊形をとれ!しかしそう叫ぶより先に、銃弾が彼の体に命中し、もんどりうって倒れることになる。
それでもバイエルン軍は精強であった。敵に背を見せず、竜騎兵達に向けて前進する。僚友がばたばたとなぎ倒される中、彼らは槍先をたよりに絶望的な前進を行う。
マンスフェルトは舌打ちしながら麾下の竜騎兵をファルツ槍兵隊の後ろに下げた。後は諸君の働き次第だ。竜騎兵達はバイエルン兵と槍をあわせる槍兵の後から、バイエルン兵を狙撃する。バイエルン軍はあっけなく全滅した。
久方ぶりの戦勝にファルツは沸いた。フリードリヒは手放しで喜んだ。これでバイエルンに勝てる!
しかし、マンスフェルトは渋い顔をした。もしかしてバイエルンに侵攻しようと思ってやいませんか?
フリードリヒは当然のような顔をした。君がいれば勝てるではないか!
マンスフェルトはさらに渋い顔をした。お国の力ではティリーには勝てません。あまりにも弱すぎる。今回は単なる小競り合いでしかない。もし国力を増大させてから攻めるのならば賭にも乗れますが、そうでないなら降ろさせてもらう。
フリードリヒは驚いた。ファルツ全軍の指揮を委ねてもいいぞ。それで勝てないか?
マンスフェルトは頭を振った。勝てません。
フリードリヒはうろたえて尋ねた。どうすれば勝てるんだ?国力を増大すること、そうして兵器、戦術を最新のものに更新すること、兵力を増やすこと。それも敵より早く上回らねばなりません。それまでに戦争しても破れます。マンスフェルトは当たり前のような顔をしてそういった。
こうしてファルツの長い復興の日々が始まった。
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