kr_ryo 徒然日誌 <2002年5月19日分>

戦争芸術リプレイ記その3…コサックス体験記その6

コサックス体験記の3回目です。戦争戦闘は書いて多少は絵になるんですが、復興とか建設って、絵になりにくいですね。平和というか、戦争がないシーンでも、住民は働き、軍隊は編成されたり、配置されたりして動きはあります。どちらかというと、コサックスでは戦争よりもいかに内政を行うか、住民の資源獲得、建物の建設をいかに効率よく、すばやく、大量に行えるかが序盤から中盤のメインです。ある程度内政や防衛が整わないと、戦争している間に国力が激減したりしますので要注意です。そのため、前回から今回にかけての復興は結構プレイ時間をかけているのに文章にならないまま消え去っていたりします(;_;)

それでは、つづきを始めます……

バイエルンの興亡

傭兵隊長マンスフェルトの加入により飛躍的に軍事力を増加させたファルツ選帝侯国ではあったが、かつてそのファルツを蹂躙したバイエルンの勢力はそれ以上に強大であった。ファルツ選帝侯フリードリヒが王位を保持するボヘミアと戦争を繰り返すだけでなく、南西のカリンシア公国にも領土を広げていた。

今日もバイエルン軍とボヘミア軍は国境上で戦いを繰り広げ、一進一退の勝負を続けているなか、ファルツはひたすら内政を続けていた。ファルツとバイエルンの国境付近にはマンスフェルトの竜騎兵隊、ファルツ槍兵隊が隊列をつくって連日訓練を行っていたが、バイエルン側に侵攻する気配は見せていない。ボヘミア政府のツルン伯からは、バイエルンに侵攻してほしいと連日催促の手紙が送られてきたが、マンスフェルトは出撃を渋っていた。

「マンスフェルト、わがファルツは数年前とは異なり国力は充実し、兵は鍛えられているぞ。いい加減バイエルンに借りをかえすことはできんのか?」ある日マンスフェルトを呼び出したフリードリヒは、こう尋ねた。

「バイエルンはボヘミアだけでなくカリンシアにまで触手をのばしています。この状態が続けば我が方は有利に運びますぞ。」マンスフェルトはにやりとして答えた。フリードリヒはわけがわからなかった。カリンシア公国はバイエルン公国より劣るため、このままではバイエルンに併合されるおそれもあった。そうなれば、バイエルンの国力がより増大する。

「バイエルンが強大化するだけではないか。カリンシア公にバイエルンのティリー将軍を迎え撃てる力はないぞ。」

「カリンシア公とバイエルン公は犬猿の仲ですが、お互い皇帝派です。カリンシア公は皇帝に助力を求めるでしょう。皇帝にしてもそろそろバイエルン公の力を警戒する頃です。皇帝は貪欲ですから、バイエルンがボヘミアや我がファルツの併合することを黙って見ていられる人ではないでしょう。ましてやカリンシア公国がバイエルンに併合されることを黙って見ているはずはありません。」

フリードリヒは皇帝でありオーストリア大公でもあるフェルディナントの顔を思い浮かべてみた。熱心な旧教徒であり、それと同時に熱心な領土拡張者でもある。今回の戦争の原因は、皇帝がボヘミア王位をクーデター政府に奪われ、さらにファルツの頭上に王冠が戴かれるのを黙って見すごさなかったことにある。皇帝の直轄軍が存在しないためバイエルンを使嗾してボヘミアとファルツを攻撃させたが、その上さらにオーストリア領で軍を編成してボヘミアと戦争している。しかし、モラヴィア侯国を占領して南下するボヘミア軍を撃退するどころか、ウィーンにまで迫られる始末だった。

「皇帝軍もそんなに強力なわけではないぞ。バイエルンは少なくとも皇帝の味方だ。皇帝軍がカリンシア公のためにバイエルンを攻撃するようには思えないが?」

「ごもっとも。カリンシアのために皇帝は兵なぞ出しませんよ。皇帝はカリンシアを併合して国力を上げるつもりです。みすみすバイエルンに渡すわけはありません。しばらくすればカリンシアはオーストリア領になりますよ。」

数日後、間諜がカリンシア公の病死と新しいカリンシア公に皇帝の甥が叙爵されたという知らせを伝えた。その後、今のティロル子爵を対ファルツ戦争の功績と称してオーストリア領内の宮中伯爵家に移し、ティロル子爵にオーストリアの将軍を叙爵させた。

「君の予言はあたったな。皇帝は強引だ。なりふり構わなくなってきているぞ。この分だとカリンシア公の病死もあやしいものだ。」前線の視察がてらマンスフェルトのもとを訪れたフリードリヒはあきれながら言った。

「ファルツ選帝侯閣下もせいぜい食べ物には注意されますように」マンスフェルトは慇懃にお辞儀をしてにやりと笑った。「確かにファルツは見違えるほど復活しましたな。そろそろバイエルン公領を併合してもよい頃でしょう。バイエルンは三方から攻撃されることになります。」

「三方?ファルツとボヘミアとどこだ?」

「オーストリアです。」

「皇帝がバイエルン公を排斥するのか?自分の首を閉めるようなものだぞ。」

「いや、強大化した皇帝にとって、言うことをきかないバイエルン公はもはや邪魔な存在でしょう。皇帝にとって今は力を見せるとき。従わない諸侯はカリンシア公のようにつぶしてしまう奴ですから、バイエルンを助けると称してミュンヘンを落とすことぐらいはしかねないはずです。」

確かにかつてのカリンシア公とバイエルン公は皇帝派だったが、皇帝をかついでやりたいことをするという意味であって、皇帝に忠誠を誓っていたわけではなかった。それどころか、皇帝の敵であるファルツを攻撃せずに、積年の領土争いにバイエルン公は名将ティリーを投入し、カリンシアと戦争を始める始末だったのだ。バイエルン公としても、わざわざ強大化しているファルツを攻撃するより、弱いカリンシアを叩いておく方がよいと思ったのかもしれない。

「バイエルン公はファルツを蹂躙し、侮った報いを受けるでしょう。閣下は領地を、私は金を得る。よいことづくめですな。」

「では、バイエルンに侵攻するのだな!」フリードリヒは興奮して叫んだ。「いよいよか!」

数日後、マンスフェルトを司令官とするファルツ軍は、槍兵2個部隊(72人)を主力として竜騎兵中隊(20人)、迫撃砲3門という編成で出撃した。ファルツ軍は国境沿いの射程のぎりぎりの位置からバイエルン領の街に迫撃砲を撃ちかけた。それを阻止しようとするバイエルン軍に対しては、竜騎兵隊がマスケット銃で狙撃し、槍兵隊が追いやった。バイエルンの強力な部隊が接近すると後退し、敵部隊を射程ぎりぎりの距離から竜騎兵隊が狙撃を繰り返して敗走させた。数カ月後、ファルツ軍はいくつかの街と要塞塔を破壊しつつ前進することができた。

久しぶりの戦勝、それもバイエルン領内への侵攻戦に勝利していることがファルツの国民を沸かせた。そんなある日、前線のマンスフェルトのもとにフリードリヒから早馬の手紙が届いた。

「過日、我が国南方のティロルに威力偵察を行った部隊が、オーストリア軍の旅団規模(100人)のアルジェリア傭兵隊と遭遇、現在交戦中。至急援護に向かわれたし。」

マンスフェルトは舌打ちして麾下の指揮官を呼び寄せ、迫撃砲による攻撃を続けるとともに、槍兵隊は現在位置を離れて攻撃せぬよう命令を出すと、配下の竜騎兵隊を率いてティロル方面に向かった。

すでにファルツ本国からも援軍が出撃しており、接近戦に弱いアルジェリア傭兵隊(射手)を竜騎兵隊の射撃と槍兵隊の突撃で追い散らしたとはいうもの、さすがに数が桁外れに多く、ようやく全滅させたころには槍兵部隊は3分の1が戦死し、竜騎兵隊にも数名の戦死者が出ていた。最初の威力偵察隊はすでに全滅していた。マンスフェルトはファルツに取って返した。

「マンスフェルト、すまぬ。苦労をかけた。」

「なんの。それにしてもオーストリアは強力になりましたな。皇帝にあのような軍事的才能があるようには思えませんが…」

「ところが、だ。ツルン伯からの報告によるとボヘミア軍も損害を受けているらしい。すでにボヘミア軍はモラヴィア領内からも追い出されたようだ。徐々に押されつつある。」

「誰か優秀な指揮官を雇ったのかもしれませぬな。このままだとバイエルンは不要と見なされ、割と早い時期に滅ぼそうとするかもしれません。」

「それは願ったりだ!けれどもぜひ我等の手で滅ぼそうではないか!」

「しかし、敵の状況が今一歩見えません。意外と皇帝軍が軍事的に強力だとわかった今、このままだと今回のように敵が近づいてくるころに我が軍の主力がいないということになりかねません。非常に危険です。偵察隊を組織することもよいでしょうが、どこから襲ってくるか判明するまでやや時間がかかることになります。ここは偵察兵器を開発すべきです。それから、我が軍は騎兵が極めて弱体です。最新鋭の騎兵である胸甲騎兵を導入しましょう。」

幸いなことに、ファルツ領内に敵の侵攻が絶えて久しかったため国力が増大していた。マンスフェルトは、ここは慌てずに軍制改革を行うことを提案した。フリードリヒは了承した。

大金はかかったが無事軍制改革は完了し、従来の重騎兵部隊を解散して胸甲騎兵部隊を創設することになった。新兵器である気球も購入した。これにより、敵領内も上空から偵察することができるようになり、不意の奇襲を受けることはなくなった。これらの一連の準備を進めている間にも前線に兵器を作成して部隊を編制、前線のバイエルン侵攻隊に増援を続け、今や槍兵4個部隊(144人)に迫撃砲10門、カノン砲2門、竜騎兵大隊(30人)の大軍となっていた。さらに槍兵1個部隊とカノン砲1門の別働隊が山地により、バイエルンの首都ミュンヘンに向けて砲撃を行っていた。もはや無視できない程に強力になったファルツ軍に対して、バイエルン軍も重騎兵小隊(10人)と槍兵2個部隊(72人)を向けてきた。

数では劣るバイエルン軍であるが、さすがに名将ティリーの鍛えた部隊である。別働隊を蹴散らして山越えの後にファルツに侵入しようとするが、すでに気球隊の報告により防衛部隊は進行ルート上に槍衾を築いていた。バイエルン軍は雄叫びを上げて突撃するが、防衛隊のカノン砲がぶどう弾(散弾)をまき散らして全滅させた。

「意外と早く楽に勝てそうになったな…」バイエルン隊全滅の知らせを受けたマンスフェルトはそう独り言ち、麾下の侵攻隊を前進させた。すでに連日の砲撃によりミュンヘン各所の要塞塔は火をふき、住民は逃げまどっていた。バイエルン軍の主力はいまだボヘミア側に位置しているようで、守備隊が集結しているようだがファルツ軍には対抗できる規模ではない。

「突撃用意!」

マンスフェルトはいよいよ槍兵隊に命令を下そうとした。これでバイエルンの息の根を止められる。

「突撃!」

ミュンヘンの戦いはファルツ軍の圧勝であった。主力を欠いた守備隊は持ちこたえられずに潰走、市内に侵攻したファルツ軍は各所の建造物を占領もしくは掠奪していった。特にマンスフェルトの主力隊の掠奪はすさまじく、ほとんどの建物は掠奪されて放火され、破壊された。

「バイエルンの息の根を止めろ!全てを奪い尽くせ!」かつて祖国が蹂躙を受けたことを経験したこともあるファルツ兵も多く参加していた。復讐の炎はミュンヘンを飲み込んでいった。

ファルツ軍がバイエルン公が逃亡して主のいないミュンヘンの宮殿を破壊し終わったころには、ボヘミア軍も潰走するバイエルン軍を追撃してミュンヘンに侵攻していた。マンスフェルトとツルン伯は協定を結び、バイエルンとミュンヘンを分割し、共同してバイエルンの残党を追撃することに合意した。

ファルツは喜びに沸き立った。マンスフェルトは凱旋将軍として歓喜の中に迎えられ、フリードリヒに抱き抱えられた。祝祭は数日続き、フリードリヒは弟のカールをバイエルン侯爵として派遣した。しかしマンスフェルトの予言どおりバイエルンは三方から狙われていたのである。マンスフェルトが予想以上に早くミュンヘンを攻略したために彼はミュンヘン攻撃を控えさせていた。一応形式上は味方であるバイエルンを攻撃するデメリットは、マンスフェルトにより掠奪を受けているミュンヘンを襲って分け前に預かるメリットよりも高くつくという計算ができる男である。彼の名はワレンシュタイン。モラヴィア奪回の功により皇帝に帝国最高司令官に任命されていた。

つづく

index

〔TopPage〕

このページへのリンクはフリーです。
このページについてのご意見、ご質問などは、kr_ryo_green@yahoo.co.jpまでお願いします。
Copyright 2001-2002© kr_ryo All rights reserved.
訪問件数