kr_ryo 徒然日誌 <2002年5月26日分>

戦争芸術リプレイ記その4…コサックス体験記その7

コサックス体験記も早くも4回目です。ここまでは祖国滅亡におびえながらの戦いを繰り広げていましたが、ここからは血で血を洗う侵略戦争です。すでに内政を充実させている国同士の戦いは、一度戦いにかったくらいでは決着はつかず、いかに勝ち続けるか、その戦略が大事になってきます。しかし、勝っても勝っても復活する敵軍を見ていると、だんだん神経がすり減ってきます( °O °;)そのためにちょっとでも守りの姿勢に入ると…これまでの体験記をご覧いただいていた方にはおわかりいただけますよね(x_x)

それでは、つづきを始めます……

ミュンヘンの戦い

ファルツ選帝侯国傭兵隊長マンスフェルトの活躍によりバイエルン公国は滅亡した。バイエルン公はオーストリアに逃れ、名将ティリー将軍はファルツの盟邦ボヘミアとの決戦で討ち取られたとの報告が届いた。神聖ローマ皇帝フェルディナントもファルツの勢いを止めることができず、「オーストリアの楯」バイエルン公国滅亡に及んでは和平の使者をもたらさざるを得ないというのが、ファルツ選帝侯フリードリヒとボヘミア政府首班ツルン伯の一致した見解であった。

「これでようやく長い戦いも終わるな…」今や戦争前よりも活気づいたファルツの街並を見下ろしながら、フリードリヒは思わず宙を見上げた。一度はこのファルツも滅亡寸前に至った。同じこの宮殿で、ボヘミアに逃れるか、決戦に挑むか、必死で考えたものだった。あれからもう4年もたった。長いようで短かったような気もする。

「陛下、ボヘミア政府は北バイエルン伯爵にアウグスト伯爵を推薦いたします。」ボヘミア政府からの使者はフリードリヒの追憶を切った。フリードリヒは気づき、苦笑した。「失礼した、子爵。アウグスト伯爵ならば余にも依存はない。カールと仲良くやるよう伝えてくれ。」

バイエルンはファルツとボヘミアに分割され、ファルツ側がミュンヘンと3分の2を占めて西バイエルン侯国としてフリードリヒの甥であるカールを叙爵し、ボヘミア側が北部3分の1を領有して北バイエルン伯領とすることになった。ファルツ選帝侯フリードリヒはボヘミア王も兼ねているため、ボヘミア政府の決定を決裁する地位にある。

「陛下のお国入りはいつごろになりましょうや?」

「一度ミュンヘンに入り、それからだな。ツルン伯によろしく伝えてくれ。」

フリードリヒはミュンヘンからそのままウィーンに侵攻し包囲してみようかと企んでいた。伝統的にオーストリアの神聖ローマ皇帝は武力を持たない。帝国内の領邦から軍団を結集して攻撃するのだが、今回の戦争では皇帝軍が数は少ないながら強力だったとボヘミアから伝えられている。皇帝軍はオーストリアの北のモラヴィアを占領したボヘミア軍を押し戻し奪回したという。しかしファルツ軍はそれ以上に精強のはずである。すでにバイエルンも落とし、オーストリアに迫る勢いなのである。

そのバイエルンでは、カール侯爵と軍司令官マンスフェルトが対立していた。カールがオーストリアに侵攻するというのに対し、マンスフェルトは防備を固めろというのだ。

「マンスフェルト、貴官は私に手柄を立てさせたくないというのか!」カールは怒りで歯ぎしりした後怒鳴った。「今のオーストリアは北からボヘミア、西からファルツが迫っている。叩き潰して皇帝に我等の力を見せつければ、もはやなにも言えまいに!」

マンスフェルトはうんざりしながら答えた。「皇帝軍は予想外に強力だ。ここはミュンヘンを固めてバイエルンを確実に確保すべきです。」

ミュンヘンでは復興が始まっていた。占領した公会堂の修復だけでなく、新たに兵舎や大砲製造所の建築も行われていた。バイエルン領内のファルツ軍は槍兵4個部隊(約140人)に迫撃砲8門、カノン砲2門、竜騎兵大隊(約25人)に及んだ。後日槍兵2個部隊(72人)と胸甲騎兵部隊(40人)が増援として送られてきた。これに対し、バイエルンとオーストリアの国境には皇帝軍が集結しているという。兵力は槍兵2個部隊(72人)、重騎兵中隊(20人)、擲弾兵とアルジェリア傭兵隊(射手)の混合部隊(60人)、カノン砲2門と榴弾砲3門といったところだ。規模でいえばファルツ軍の方が大きいが、マンスフェルトは榴弾砲が気になった。接近戦では強力な兵器だ。わざわざこちらから近づいていく必要はない。

しかし、カールも頑固だった。若いだけに血気も盛んだ。バイエルンを治めるために派遣されたはずなのだが、バイエルンを守るためには皇帝軍を破るべきだと主張してやまない。確かにバイエルン領内のファルツ軍は精強だが、万が一敗れた場合に替えがない。バイエルンからはファルツより、オーストリアの方がまだ近いのだ。せっかく奪い取ったバイエルンを奪いかえされるわけにはいかない。しかも皇帝軍は、同様にモラヴィアを奪ったあとウィーンに迫るボヘミア軍を大破し、逆にモラヴィアを奪い返したのだ。その時の指揮官が皇帝軍にいる。ワレンシュタインという貴族出身の傭兵隊長。奇しくもマンスフェルトと同じ境遇だ。

フリードリヒは、バイエルンに侵攻するマンスフェルトに軍権のほとんど全てを預けた。フリードリヒはバイエルン侯爵となるカールにマンスフェルトをつけ、軍事はマンスフェルトに委ねるよう指示していた。ところが、華やかな勝利と栄光に目を奪われた若いカールは、自らも英雄になりたくてたまらないようだ。「マンスフェルト、バイエルンの主君はこの私だ!」

その時、皇帝軍が動いたというしらせを持って伝令が飛び込んできた。重騎兵隊を先頭に、ミュンヘンに向けて侵攻中!

カールは勢い立ち、マンスフェルトは顔をしかめた。「聞いたかマンスフェルト、敵襲だ!追い散らさねば!」「閣下、これは陽動です。動いてはなりません!」

すぐさま飛びだしかけたカールは振り向きざま、言い捨てた。「マンスフェルト、貴官は留守を頼む。私が蹴散らしてくれよう!」

取り残されたマンスフェルトは歯ぎしりした。「こわっぱめ!これでバイエルンは落ちた!」

カールは槍兵隊4個部隊(約140人)、胸甲騎兵部隊(40人)、竜騎兵中隊(20人)、カノン砲2門を 麾下に、出撃した。マンスフェルトは残る槍兵2個部隊(72人)と迫撃砲8門とともにミュンヘンに残った。すでに皇帝軍はミュンヘン郊外に進撃していた。

戦いは、ファルツの胸甲騎兵部隊がオーストリアの重騎兵隊とぶつかって開始された。胸甲騎兵部隊の先頭にはカールの姿があった。もみ合う騎兵隊の背後から、オーストリアの槍兵隊が長槍を繰り出してきた。遅れて、ファルツの槍兵隊が到着したころに、オーストリアの榴弾砲弾が炸裂した。

榴弾砲は曲射砲であり、高く打ち上げて地面で炸裂する。密集したファルツ軍に榴弾砲弾が命中する。馬も兵も爆発と破片でなぎ倒された。ばたばたと倒れるファルツ軍の将兵の中には、カールもいた。ひるむファルツ軍の頭上に、さらに榴弾砲弾が飛来した。将を失ったファルツ軍は、オーストリア軍に背を向けて退却した。ファルツのカノン砲はオーストリア軍に奪われ、逃げるファルツ軍に砲撃を許す始末であった。

早くも伝令の報告を聞いたマンスフェルトは麾下の兵をただちにまとめて、ミュンヘンから退却した。公会堂や大砲製造所などは火をかけて破壊した。先駆けのオーストリア軍重騎兵隊が迫ると、遅い迫撃砲も全て破壊して逃げ出した。カールの敗残部隊はもはやオーストリアの敵ではなく、逃げる途中で討ち取られていった。

マンスフェルトの槍兵隊と住民達はファルツ国境まで無事逃げ延びた。続いてカールの部隊の生き残った騎兵隊がぼろぼろになってたどり着いた。ミュンヘンの戦いと呼ばれることになるこの戦いでは、ファルツ軍は胸甲騎兵数騎と、竜騎兵隊の半数(10人)が生き残っただけで、残りは全滅していた。オーストリア軍は重騎兵部隊の半分と、槍兵隊の3分の1が戦死したのみで、逆にカノン砲2門を鹵獲した。復興中のミュンヘンはマンスフェルトに火をかけられてほぼ完全に破壊され、残ったファルツ兵舎もオーストリア軍の傭兵隊(擲弾兵とアルジェリア射手)が破壊した。ファルツ国境にはマンスフェルトがかつて配置していた国境防衛隊がそのまま存在していたため、兵力に劣るオーストリア軍は侵攻してこず、退却していった。

だんだん小さくなるオーストリア軍を睨みながら、マンスフェルトはつぶやいた。「ワレンシュタイン、この屈辱は必ず晴らしてみせる。」

つづく

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