kr_ryo 徒然日誌 <2002年6月1日分>

戦争芸術リプレイ記その5…コサックス体験記その8

本文中では微妙に触れられていますが、すでにファルツは18世紀に進んでいます。コサックスは科学/軍事技術の更新が重要でして、大量の金や資源が必要にはなりますが、部隊が格段に強力になったり収穫が増えたりします。その中でも私が一番重視するのは「気球」です。空に浮かぶあれです。通常味方や同盟者の兵や建物の周辺しか見えない(他は闇が覆っています)のですが、気球を開発すると一気に全てのマップが見えるようになります。これで敵の位置が把握できるので奇襲を受けることもなくなるし、斥候兵をわざわざ出す必要もありません。他にも胸甲騎兵や擲弾兵が生産(^^;Aできたりしますが、このころになると実際の18世紀の戦争同様、大量生産大量破壊になっているので、より一層戦争が凄惨さを増します(T-T)

それでは、つづきを始めます……

ワレンシュタインとマンスフェルト

「マンスフェルト、すまなかった。カールにはもっと釘を刺しておくべきであった…」

ボヘミア王にしてファルツ選帝侯であるフリードリヒは、居城にて傭兵隊長マンスフェルトを真っ先に出迎えた。すでに傭兵隊長というより、バイエルン侯国軍事大臣というべき地位に任じられていたのだが、数日前のミュンヘンの戦いでバイエルン侯爵カールの戦死と敗戦に伴いバイエルン侯国は瓦解していた。ファルツの宮廷内では、マンスフェルトがおめおめと逃げ帰ってきたこと、槍兵2個部隊を指揮下に置きながらカールの仇を討たないでバイエルンを離脱したことを糾問する雰囲気が強かった。

しかしフリードリヒはマンスフェルトからの早馬により、カールが独断で軍を動かし、オーストリア軍の将ワレンシュタインに大破されたことなどを逐一知らされていた。すでに本隊が壊滅しているのに、後衛部隊で敵の本隊とまともに戦えるわけがなかった。東洋の清の古いことわざに、逃げるにしかず、というのがあったなと思い出しながら、フリードリヒはマンスフェルトを出迎え、労った。マンスフェルトは最後に指揮下にあった槍兵と、カールの敗残兵、それからミュンヘンの住民を連れていた。

「陛下、面目ございません。せっかく手に入れたバイエルンを奪われてしまいました…」

「らしくないな、マンスフェルト。君ならすぐ奪い返せるだろう。」フリードリヒは常に傲岸なマンスフェルトがいつになく悄然としているのが気になった。

「今回の戦いの敵将はワレンシュタインという人物。その戦術眼は卓越していると思われます。小部隊による突出と誘い出し、大砲の効果的な使用、行軍の素早さ、どれをとっても当代一流でしょう。容易な相手ではありません。」

「オーストリア侵攻を考えていたのだが、難しいか?」

マンスフェルトはかぶりを振った。「まずは軍隊を建て直しましょう。いずれにせよこの戦争はウィーンに迫らないことには終わらなさそうです。皇帝軍は実に強力です。」

マンスフェルトの進言により、ファルツは騎兵育成所、大砲製造所を3倍に増やすとともに、新陸軍兵営(18世紀歩兵育成所)を建設し、科学技術や軍事技術の研究も行った。バイエルン征服の際の収入が空になる勢いであったが、旧バイエルン領の西側に防衛隊を前進させ、安全となった地域に次々と入植させて国力育成に努めた。

そのころワレンシュタインの軍は、バイエルン北部のボヘミア保護領であるバイエルン伯爵領を侵攻し、これを壊滅させるとともに、他のオーストリア軍と合流、ボヘミア侵攻を行っているようであった。この時点でフリードリヒが配下に様々な条件を分析させた結果、ファルツ、ボヘミア、オーストリアの国力差(得点の差)は、3対5対8であった。

「意外とわが国の国力が低いではないか…」フリードリヒは報告書をマンスフェルトに示した。

「客観的な事実を知ることは大事です。我が国は今や貝のように門戸を閉ざしているが、オーストリアは侵攻軍を次々派遣しています。現に、ティロル方面(ファルツの南方)から敵の擲弾兵と射手が迫っているようです。」

「傭兵隊か。あちらにも防衛隊がいたはずだ。蹴散らしておいた方がよいな。」

ファルツの南部は、山脈が北西から南東に走っていた。オーストリアは、バイエルン、ティロルを経由して擲弾兵やアルジェリア射手からなる部隊を移動させていると、気球部隊が報告をもたらしていた。そのまま西進され、北上されると、ファルツの防衛戦を迂回して直接ファルツ領内に侵攻されることになる。無視はできなかった。規模は旅団(120人)とまではいかないまでも、3個部隊(108人)程度はあった。

「槍兵隊だけでなく、胸甲騎兵隊もつけましょう。」

「たかが傭兵隊ではないか?」

「獅子は兎を倒すのにも全力を尽くすものです。」

しかし、槍兵2個部隊(72人)、胸甲騎兵小隊(20人)でも、かなわなかった。シュバルツバルトにつながる山脈上の戦いは、ファルツ軍が傭兵と見ていたオーストリア軍の擲弾兵が実は正規兵であったことから、相手をなめきっていた槍兵隊が高所にいるオーストリア軍の擲弾兵の弾丸のまととなり、攻め上った胸甲騎兵も複数の擲弾兵の銃剣の前に馬と自らを突き刺されて両者ともあっけなく全滅寸前にまでいたることとなった。敵は半分以上生きのこり、住居を焼き払いつつ北上中との連絡を受けたマンスフェルトは、いつになく驚愕しながら、育成中の擲弾兵と竜騎兵の全部と共に自ら救援に向かった。結果として、敵と同数の損害を出しながらも敵兵を全滅させることはできた。

「オーストリアは擲弾兵の編成に成功しているようです。」マンスフェルトは自ら初陣の擲弾兵隊を率いてフリードリヒに報告した。苦い勝利であった。擲弾兵としての実力はどうやらオーストリアの方が上のようであった。竜騎兵の援護がなければ負けていたかもしれない。これは早急に擲弾兵の練兵を急がねばならないが…

「マンスフェルト、また敵の擲弾兵部隊が接近しているようだ。」フリードリヒが心配そうに出迎える。どうやらオーストリアは消耗戦に持ち込みたいようだ。ファルツ領内での戦いではじり貧に陥りかねない。今回は生産力に直接影響のない住居を焼かれただけだが、次第にエスカレートされて民政部門にまで迫られてはまずい。やはり内向きの戦略はまずかったか…?

マンスフェルトは決断した。こちらも敵を脅かすべきだ。しかしその前に、どれだけの部隊を防衛に残すべきか…?それにしても胸甲騎兵がこんなにあっけなくやられるとは…

しばらく自ら指揮した擲弾兵達を眺めていたマンスフェルトは、ふと思い至った。あれを使おう。

擲弾兵は銃剣と投擲弾(手投げ弾)を装備した兵で、マスケット銃兵の射撃力と槍兵の白兵戦能力を併せ持ち、敵の建造物も破壊できる精鋭であった。しかし、鎧を着用していないため防御力が弱い。通常ならば耐久力と防御力が高い胸甲騎兵の敵でないはずなのだが、十分訓練された擲弾兵は騎兵でさえ追い散らすことができることがわかっただけ、これからの戦いには有利となる。マンスフェルトは確信すると、大砲製造所に向かった。

ファルツとティロルの国境に近い山脈の南端上の高所に、竜騎兵と擲弾兵が防備にたった。マンスフェルトの思惑より敵が早く来襲したため、実は今回の戦いでは主力でない彼らが高地から低地のオーストリア擲弾兵を狙撃する。今度は高低入れ代わっているためややファルツが有利だった。攻め上るオーストリア軍は射程内にようやく達したのか、高地のファルツ兵を狙う。早くも戦死者は五分五分に達したころ、ファルツの指揮官が退却命令を出した。オーストリア軍が追撃しようとするころ、見慣れないファルツの新兵器が現れた。

軽い発射音で断続的に放たれたのはぶどう弾(散弾)。一瞬のうちにオーストリア軍の擲弾兵達の体は蜂の巣のように穴だらけになり、倒れていった。複銃身カノン砲という兵器の最初の活躍の場面であった。

マンスフェルトは防衛のため数台の複銃身カノン砲を生産させていた。先の戦いの行われたファルツ南部の山脈はもちろん、他国との国境沿いにも早急に配置した。複銃身カノン砲は鎧を着用していない兵には絶大な効果を発揮した。これで防衛はほぼ大丈夫だろう。南部山脈からの報告によると、ファルツにいたる峠の要衝に配置したおかげで、何度もオーストリア軍が接近したが、防衛戦を突破できずに壊滅させることができたとのことであった。

ファルツが防衛に専念しているころ、ワレンシュタイン率いるオーストリア軍の本隊はボヘミアの村や街を次々に攻略、掠奪を繰り返し、すでにプラハにまで迫られることもあったという。マンスフェルトはフリードリヒに進言した。「ボヘミアを救うためには、ウィーンを脅かす必要があります。」

フリードリヒはにやりとしていった。「いよいよだな。」

つづく

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