コサックスの同盟国は役に立たないどころか、こちらの勢力圏内の鉱脈にまで進出してきて鉱山を建てるなど、明らかに邪魔する場合もあります。今回のリプレイでもボヘミア=青国にわが国(ファルツ=赤国)の勢力のやや外側の鉱山を先取られ、しばらくして発展したわが国の領域内に納まってしまうという状況でした。ところが、前回の内容での敵国(オーストリア=白国)の襲撃で、ついでに破壊されてしまい、すぐさまわが国が取り返しました。そんなこともありましたが、やっぱり味方がいるのといないのとでは戦いやすさが全然違います。今回のリプレイではボヘミア=青国のがんばりのおかげでわが国が生き残ったようにも思えます。敵の襲撃主目標も同盟国でしたし。そんなボヘミアですが、今回はどうなりましょうか…
それでは、つづきを始めます……
オーストリア軍のファルツ襲撃は1勝1敗であったが、敗れたファルツの実経済には影響を与えていない上、オーストリアの侵攻ルート上に防衛隊を配置したマンスフェルトの手際により以後はオーストリア軍が負け続けることとなった。オーストリアの主力はボヘミアに向いており、ファルツに向かう軍は陽動の意味しか込めていなかったのかもしれない。
逆にファルツからも、擲弾兵中隊(20人)と胸甲騎兵中隊(20人)がバイエルンを経由して長駆オーストリアに侵攻した。しかし、ウィーンの西部にあるリンツの住民を襲ったところで各方面に向かう予定のオーストリアの遊撃部隊に包囲攻撃され、善戦虚しく全滅していた。2度ほど同規模の部隊を派遣したが、距離が長すぎて敵に察知されやすく、奇襲の意味が薄れてしまったのか、最初の戦いほど戦果を上げられなかった。
「補給線が長すぎます。まずはやはりバイエルンを押さえる必要がありますな。」今ではファルツ選帝侯国の軍事大臣ともいうべき地位にたつマンスフェルトが、ボヘミア王にしてファルツ選帝侯フリードリヒにそう進言してオーストリア領襲撃を中止させた。
そのころ、オーストリア軍は旧バイエルン領(マップ中央)と旧モラヴィア領(マップ右)の2方面からボヘミア領内(マップ右上)に侵攻しているが、ボヘミア政府軍が頑強に抵抗しており、双方増援を繰り返す消耗戦を繰り広げていた。そんななか、ファルツは着々と軍備を整えていた。
「いよいよ主力全軍をもってバイエルン領を占拠する時期です。」マンスフェルトはある日、そう進言した。
「とうとうカールの弔い合戦だな。」フリードリヒは若いカールの面差しを思い浮かべる。フリードリヒの姉の子であるカールは、ファルツ占領下のバイエルン侯としてオーストリアのワレンシュタイン軍と戦い、戦死していた。
「今回の戦いは、オーストリア軍をバイエルン領から駆逐し、その勢いをもってオーストリアにまで侵攻することにあります。主力に明らかに多大の犠牲が出るおそれが出ます。陛下におかれましては、くれぐれも軍備の増強並びに増援をお願いいたします。」マンスフェルトは強い口調で言った。「自国がおびやかされるとオーストリア軍は引くはずです。私は主力を率いて出征しますが、ボヘミア軍に援軍を差し向ける余裕があればバイエルンから廻しますので、増援部隊はバイエルンに送られますよう。」
ファルツはそれほど大きな国ではない。どちらかというと小国の部類に入る。軍事能力も国力に比例するのか、ファルツには優秀な指揮官が少ないこともマンスフェルトの悩みの種である。いちいち自ら出陣していれば身が持たない。ところが出陣しないことにはオーストリア軍にいいようにあしらわれてしまう。マンスフェルトとしては、軍を集中させ、自らが指揮できる範囲で戦いたかった。
マンスフェルトが率いるのは、擲弾兵旅団(120人)と胸甲騎兵2個部隊(80人)、それから複銃身カノン砲2門、カノン砲2門、迫撃砲6門、護衛に槍兵2個部隊(72人)といったところ。擲弾兵と胸甲騎兵は全軍を率いているが、国内では養成を続けている。
赤を基調としたきらびやかな軍装のファルツの主力軍を見送るフリードリヒは、勝利を確信していた。
そのころボヘミア方面では、ワレンシュタイン軍がファルツ軍の侵攻作戦を察知していた。すぐさまワレンシュタインは主力の胸甲騎兵と槍兵、擲弾兵、各種大砲を率いて南下しはじめた。
マンスフェルト率いるファルツ軍は、バイエルンに駐留していたオーストリア軍守備隊を蹴散らすと、荒れたままの首都ミュンヘンを通り過ぎ、南西のオーストリア方面に進出した。山脈に囲まれたバイエルンからオーストリアへの出口は狭い。出口に向けて進出すると、オーストリア軍が前方に現れた。槍兵隊と重騎兵隊である。マンスフェルトは麾下の擲弾兵を固めて前方に進出させた。
「撃ち方用意!」
オーストリア軍が突進してきた。重騎兵の立てる地響きが耳を圧する。
「撃て!」
錐上に突入するオーストリア軍に、ファルツの擲弾兵のマスケット銃弾が命中し、蜂の巣状になった兵が落馬する。前をふさぐ味方の兵馬を乗り越えた重騎兵も、次の的となって落馬する。ファルツの擲弾兵は正確に狙いをつけ、次々とオーストリアの騎兵を撃ち殺していく。結局、ファルツの胸甲騎兵の突入のないまま戦いは終わった。ファルツの圧勝である。
マンスフェルトはバイエルンとオーストリアの国境沿いの出口を固める形で陣を組んだ。ワレンシュタインの本隊の到着が報告されたためである。ワレンシュタイン軍はファルツのカノン砲の射程外に駐屯した。密集陣形を取ったオーストリア軍は騎兵と擲弾兵、歩兵が入り交じっており、実数は不明である。しかしその隊伍は、旅団(120人)と同じ規模であり、ファルツ軍と同数かそれ以上である。それよりも、カノン砲、榴弾砲それぞれ5門以上と、大砲の数ではファルツを圧倒していた。
「下手に進むと危険だな…」マンスフェルトはそう独り言ちた。大軍同士の決戦になる。勝っても負けても被害は大きい。相討ちがいいところで、おそらく国力の高いオーストリアの方が軍の再建は先になるだろう。しかも決めてのないまま決戦を続けたとすれば消耗戦になる。地力で勝るオーストリアの方が有利だ。マンスフェルトとしては、この勝負には負けられないだけでなく、勝負できない。ところがオーストリア軍にも動きがない。敵将ワレンシュタインもここで負ければ本国オーストリアが敵前にさらされることになり、勝負できないのかもしれない。
「如何にすべきか…」マンスフェルトは悩んだ。戦いはないが神経は張りつめたままだ。味方はバイエルンの端にあり、自国ファルツからかなり離れている。増援部隊が到着するのもかなり時間がかかる。ところがオーストリア軍は自国内にあり、続々と増援部隊、遊撃部隊が進出し始めている。こちらも遊撃部隊を出すべきか…?
マンスフェルトはファルツに伝令を出し、フリードリヒにコサックの傭兵を雇ってもらった。コサック騎兵中隊(20人)は荒くれを絵に描いたような連中だった。歯の欠けた隊長に、マンスフェルトはこのまま南下し、東に向かってオーストリア領のリンツを脅かすよう命じた。
疾風のように出撃するコサック騎兵。途中でオーストリアの遊撃隊を襲い、かえって数騎を失いながらもリンツに到着、数十人の住民を捕虜にするが、リンツから現れた守備隊に囲まれて全滅した。ワレンシュタインの本隊はまったく動かなかった。古典的な奇襲だが、効果はなかったといってよい。先のオーストリア襲撃同様、ワレンシュタインは奇襲遊撃隊程度では動揺する男ではないようだ。
続いてマンスフェルトは、カノン砲を前線に進出させ、敵陣に砲撃させた。数人の敵兵がカノン砲弾で倒されたが、ワレンシュタインは動かなかった。逆にオーストリア軍もカノン砲で応射し始めたため、マンスフェルトはカノン砲を前線から下げた。
「決め手に欠けるな…」膠着した両陣営。救いは、ボヘミア軍が一息つけたことぐらいか。ファルツから援軍として擲弾兵と胸甲騎兵が送られてくるが、オーストリア軍にも大砲と胸甲騎兵、擲弾兵が送られていた。膨らむ両軍。
嘶く軍馬が新たな増援の到着を知らせた。胸甲騎兵隊の隊長の少佐はフリードリヒの書簡を携えていた。オーストリア遊撃隊の幾度かの侵攻に、ファルツ南部の山脈に陣を張った複銃身カノン砲を主力とする守備隊がこれまた幾度目かの撃退に成功したらしい。
マンスフェルトははたと気がついた。これだな!
|index|
このページへのリンクはフリーです。