kr_ryo 徒然日誌 <2002年6月30日分>

戦争芸術リプレイ記その8…コサックス体験記その11

長きにわたったコサックスリプレイもいよいよ終盤戦です。前回のボヘミアバルトの戦いで敵主力を壊滅させて優位に立ってはいるものの、あいかわらず敵は増援を繰り出してきます。ここで後退するとせっかく敵主力を壊滅させたことが無になってしまいかねないので、敵の本拠地に打撃を与えて生産力を減らしていかねばなりません。ところが敵の反撃はいよいよ激しくなるばかり…別の戦いでも無謀に突出してしまってせっかくの味方主力が壊滅したこともよくありました。終盤戦は、いかに敵の反撃をかいくぐり、敵の生産力を破壊していくか、攻城戦の行方が勝敗を決します。今回のリプレイではどう戦っていったのでしょうか?

それでは、つづきを始めます……

ウィーン遊撃戦

ボヘミアバルトの戦いでオーストリア軍主力を撃破したファルツ選帝侯国軍の総司令官マンスフェルトは、自軍の損害とオーストリア軍の新手の集結具合から、すぐさまのオーストリア侵攻を断念した。まずはボヘミアバルト山脈上に大砲を配置し、バイエルンとオーストリアの国境沿いに防衛隊を配置し、バイエルンの確保を優先した。本国ファルツで連絡を待ちかねているはずの選帝侯フリードリヒに戦勝報告の伝令を走らせるとともに、増援を要請した。

全ての戦後処理を終わらせると、マンスフェルトにどっと疲れが押し寄せてきた。とりあえず勝った。しかし、これからだ。翌日以降、今度は荒廃したバイエルンの復興計画を立て始めた。大金はかかるが、新陸軍兵営や騎兵養成所、大砲製造所を新たに建築をはじめた。民政部門の建築も次々と指示していった。

そんな折り、マンスフェルトのもとに騎兵隊司令官のオットーが訪れてきた。

「総司令官殿、オーストリア軍は主力をボヘミア攻略に向けたようです。ボヘミア救出とともに、オーストリアの国力を削ぐために、オーストリア侵攻を行うべきではないですか。」

「確かにそうだ。しかし我が軍には余剰戦力が不足している。圧倒的大軍をもってしなければ、敵地で壊滅する。貴官も部下に犬死にしにいけとはいえんだろう。」マンスフェルトは皮肉っぽく言った。オットーは赤くなり、唇をかんだ。

「しかし、敵に打撃を与えないことにはいつまでたっても掠奪ができん。貴官の言うことにも一理ある。」マンスフェルトはにやりとしてさらにいった。

「敵の中枢に打撃を与えることはぜひとも必要だ。私はバイエルンをオーストリア攻略の橋頭堡とするために復興させねばならない。バイエルン復興が成るまで、遊撃隊を編成し、貴官が指揮をとれ。」

しかしやはり、オーストリア軍の壁は厚かった。バイエルンとオーストリアの国境沿いにはボヘミアバルトで戦った規模ではないものの、胸甲騎兵と擲弾兵からなる旅団(120人)規模の部隊が待機しており、先の戦いで破壊しきれなかった10数門の大砲が配置されていた。マンスフェルトのいうとおり、大軍をもってしなければウィーンやリンツに着く前に壊滅してしまう。オットーはしばらく考えてから、マンスフェルトにクロアート軽騎兵隊の編成の許可を求めた。あまり効果はないかもしれんな、というマンスフェルトだが、編成の許可は与えてくれた。

オットーは本国ファルツからクロアート軽騎兵小隊(15人)の増援を受けた。クロアチア人の精悍な連中に敵防衛隊を迂回し、リンツで掠奪を行えと指示した。

クロアート軽騎兵小隊の進行速度はコサック騎兵隊に次ぐ。彼らが疾風のように駆けると、オーストリア軍は慌ててばらばらと後を追う。リンツに到着したクロアート軽騎兵隊は木材搬入中の住民数十人を捕虜にし、倉庫や住居を掠奪していった。以前のコサック騎兵隊の襲撃のときから明らかに敵の防衛隊の数は減っている。けれども深追いしすぎたのか、防衛隊に囲まれ善戦するも結局壊滅した。多少の損害は与えたといえる程度、とマンスフェルトは評価した。

「オットー中佐、襲撃だけではいつまでたってもウィーンの鉄壁は崩せんぞ。どうするのがよいか考えてみろ。」マンスフェルトは再びクロアート軽騎兵の増援を求めるオットーにそう答えた。オットーは首をひねりながら、また出直しますといった。

そのころ、いよいよワレンシュタイン率いるオーストリア軍はボヘミアの要地を次々に攻略、占領していき、首都プラハにも戦火が及んでいた。ボヘミア政府軍首班ツルン伯の要請を受け、フリードリヒもファルツの胸甲騎兵連隊(90人)と擲弾兵部隊(50人)を増援に派遣したが、ワレンシュタインにいいようにあしらわれ兵を失っていく。それでもオーストリアの迫撃砲を数門破壊し、数門を奪取した。しかし、オーストリアの擲弾兵隊に突っ込んでいった胸甲騎兵隊は次々に倒され、敵の倍の損害を出して壊滅、これを見たファルツの擲弾兵隊は後退、ボヘミアバルトに登り、守備に入った。そんな折り、プラハ郊外の戦闘でボヘミア政府軍の首班ツルン伯がとうとう戦死したと報告が入った。この戦いでボヘミア政府軍は壊滅、プラハになだれ込んだワレンシュタインは一気にプラハを攻略した。ボヘミア軍は各地でオーストリアに降伏する者、抗戦する者と分かれた。抗戦する者はワレンシュタインの部隊が次々と襲っていった。ボヘミアはとうとう滅亡した。

ワレンシュタインはボヘミア攻略の功により、フリートラント公爵に叙せられたらしい。マンスフェルトのもとにもフリードリヒから使者が訪れた。マンスフェルトをバイエルン公爵に叙するという。マンスフェルトは、一介の傭兵隊長には過分だな、といいつつも喜んで受けた。実際、バイエルン統治はすでにマンスフェルトが行っていた。ワレンシュタインはボヘミアから主力をオーストリア本国に引き上げ、マンスフェルトの部隊と対峙させた。

新たにバイエルン公となったマンスフェルトは、ボヘミアバルトの防備を強化するとともに、槍兵2個部隊(72人)、胸甲騎兵部隊(40人)、擲弾兵2個部隊(70人)、迫撃砲8門をもって、モラヴィア経由のウィーン攻撃を計画した。ボヘミアバルト(マップ中央)からモラヴィア(マップ右)に抜け、南下してウィーン(マップ右下)を迫撃砲で攻撃する計画である。ボヘミアが予想外に早く瓦解したことがこの計画を生んだともいえる。ウィーンからモラヴィアを経由してボヘミアに至るオーストリアの増援ルートがなくなったため、バイエルンから直接オーストリア攻撃を行うより安全に思えた。もしオーストリアのバイエルン側防衛隊(マップ下)が動けば、バイエルンの本隊をオーストリアに向けて進撃させる予定である。ウィーン攻撃隊の指揮官はオットー中佐。彼の計画でもあった。

勇んで出撃するオットー隊を見送りながら、マンスフェルトは、新たにバイエルンに建築した新陸軍兵営や騎兵養成所、大砲製造所からの新部隊を編成していく。ボヘミア軍がもう少しもちこたえればバイエルンからも増援を送れたものを、と思いながら編成を続けた。

オットー隊は、モラヴィアのオーストリア軍守備隊の一部を撃破しながら、予定通りウィーン近郊に到着、迫撃砲撃をしていく。迫撃砲の周囲に、槍兵隊を守備につかせ、その後方に擲弾兵隊を配置、さらに後方に胸甲騎兵隊を置いた。ウィーンの守備隊が数名規模で接近を試みるが、擲弾兵隊の銃撃で撃退する。ウィーンの騎兵養成所のひとつを破壊し、要塞塔のひとつも破壊、さらに新陸軍兵営を攻撃するために前進したところ、とうとうオーストリア軍主力が動いた。なんと全軍が怒濤の勢いでオットー隊に接近していく。

ワレンシュタイン隊を見張っていた気球隊からの報告を受けたマンスフェルトは、急いで麾下の胸甲騎兵隊と擲弾兵隊を前進させる。

オットー隊にもワレンシュタイン来る!との報告が届いた。オットーは、勇躍麾下の槍兵隊を横隊2段構えにし、その背後に擲弾兵隊を配置してワレンシュタイン部隊に備えた。槍兵隊が持ちこたえている間に擲弾兵隊で狙撃する策である。迫撃砲は変わらず新陸軍兵営を攻撃していく。

オットーの部隊の再配置が終わる寸前、早くもワレンシュタインの部隊が到着、正面から攻撃してくると読んだオットーの浅はかさを笑うように、ワレンシュタインの騎兵隊は横に伸びた槍兵の端を攻撃する。数騎対一兵では勝負は明らかで、あっと言う間に槍兵が倒されていく。たまらず後方の槍兵隊が前進して敵騎兵隊を攻撃しようとするが、左右に展開するワレンシュタインの騎兵隊は、オットーの槍兵隊を左右後方から押し包む。擲弾兵隊も狙撃を行うが、こちらにも騎兵隊が殺到し、次々と倒されていく。白兵戦に移る擲弾兵隊が援護しきれなくなった槍兵隊に、遅れて到着したワレンシュタインの擲弾兵隊が狙撃を行い、こちらも次々と倒されていく。オットーは胸甲騎兵隊を突撃させた。乱戦のさなか、オットーは戦死し、擲弾兵隊も全滅、最後まで残った槍兵隊も押しつぶされた。壊滅である。ワレンシュタインはすぐさまバイエルン国境まで引き返していった。

マンスフェルトは、ワレンシュタインが打ち捨てていった大砲を鹵獲もしくは破壊していた。全体の半数以上、カノン砲6門、榴弾砲8門、迫撃砲4門といったところだ。ところが、早くもワレンシュタイン隊が到着したとの斥候の連絡を受けると、マンスフェルトは少し思案した。ここで決戦を行うべきか?

結局マンスフェルトはバイエルンまで引き上げた。ワレンシュタインが早くも戻ってきたとなると、オットー隊ははや全滅したのだろう。編成も十分でない部隊で戦うのは無謀であり、敵より圧倒的優位でない以上、わざわざ決戦を行う必要もない。無駄死には避けるべきである。

マンスフェルトはウィーンの空に向かってオットーに祈りを捧げる。仇はとってやるからな。

つづく

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