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■デジクリトーク

そしてまた出版社とのコンタクト。

白石昇

●そしてまた出版社とのコンタクト。

 そしてオペレーションの方が、インフォメーションデスクのメール担当の方に繋いでくれました。

 まず、僕が出したメールがちゃんと向こうに伝わっているか確認する必要があります。聞いてみたところ、僕が送ったメールはちゃんと担当編集者様の手に渡っているようです。

 非常に向こう側にとっては煩わしい、僕の片言泰語での会話の果てに、ようやく僕は担当編集者様への連絡先である四桁の番号をゲットいたしました。

 非常に合理的なこの大企業の電話応答システムなのですが、説明している途中に電話が切れてしまい、何度もかけ直すたびに違う人に繋がってしまうので非常に申し訳ない思いを向こう側にさせてしまいました。

 これもすべて、以前お伝えしたように七分間しか繋げないこのアパートメントの電話と、わたくしの泰語での会話能力に責任があるのは間違いないのではあります。

 しかしそれよりもなによりも、説明すべき事情がそもそも非常に説明しにくい事情だということがもっとも大きな原因かと思われます。




 おそらくすべてにおいて前例がない事情なのです。今回の出版は。

 電話会話に疲弊したまま僕はようやく担当編集者様とお話ししました。担当編集者様はメールは読みました。こちらで検討して四日後の二十八日までにそちらに連絡します、とおっしゃいました。




 そして三日後の二十七日、電話が鳴りました。

 いきなり上機嫌で担当編集者様は、DTP作業の手順や、ネットでの販売方法などを詳しく質問され、泰国内でも販売するかどうかなどの確認がありました。僕は即答します。当然です売ります売ります。

 了解しました。こちらで出版する方向で会議にかけたいと思います。ところで、いつ頃完成しますか? 担当編集者様はそう質問なさいます。

 今ネイチヴ泰人にチェックして貰い全面的に文章を整えているので、速くても三月中でしょう。と僕は答えました。

 うーん、と言うようなうなり声が受話器の向こうから聞こえてきます。いやですね。せっかくだから、泰語原本を現在刊行している出版社で一度絶版にして、日泰版両方ともうちから同時発売、って事を考えてるんですよ。だから、出来れば早いほうがいいんですよ。




 えーっ。

 えーっ、です。えーっとしか言いようがないのです。なんでいつの間にこんなに話が大きくなってるんだ?




 さては僕の知らないところで大手出版社と事務所の方でうち合わせしやがったな。

 こんなにお気軽に動いちゃいけないだろう。下訳の品質も確認せずにどこの馬の骨ともわからない日の丸藝人の口車に乗せられて。




 それが殴ったら人殺せそうなほど分厚い国語辞典出版してる立派な企業のやることですか?

 正直、この大手出版社から出すと言うことはまあ予想した範囲内のことだったのですが、泰語版の原本も同時に出版社を変えるようなことになるとはもちろん予想の範囲外です。




 話がいきなり大きくなり過ぎです。

 とりあえずこれから社内会議にかけてみますから、と言って担当編集者様との電話は終了いたしました。

 出版社ほぼ決定です。あっさりと。

 どうして必ず売れる人がからむとこうも話が早いんだろうか、と思いながら僕は、さらに大きくなってゆく話にいささかビビリはじめたながら仕事を進めてゆくのでありました。

 つづく。

初出・【日刊デジタルクリエイターズ】   No.1065-2 2002/04/10.Wed.発行


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