経済学の試験を受けに言ったんですあたし。そしたらどうやらそれ、大学の卒業がかかった課目らしいんですね。それを取らなければまた留年でそれ以外の課目は許されない、って事らしいんですよ。

　しかもあたし、一度もその授業受けたこともなければ、教科書すら買ってないんです。何でいきなりぶっつけ本番でこんな大舞台に直面しているんだ、と思ったら、隣に高校時代のクラスメイト、ミネ君が座っていろいろと状況を教えてくれるんですが、その説明がさっぱり理解できません。

　何で経済学を取らなければ卒業できないんだあたしは理系の学部なのに、と思いながらミネ君の答案をカンニングしてたら目が覚めました。

　しかし、起きたらあたしは泰語を学ばなければなりません。その現実の方がよっぽど奇妙だわと思いながらちょこちょこと辞書を引く作業をチマチマとやってたわけなんですよあたしは。仕方がありません。これはどうやら天に定められたあたしの宿命なんですから。そう思っているのはあたしだけでかなり電波入ってますけど。

　で、作業をしていたら、昨日お酒を飲む決意をしたことを思いだしたんです。ああそうだな最近お酒飲んでないなあ、と思い始めたとたんに、ちょこちょこと食欲が湧いてきたんで、階下におりたんです。

　ムスリム姐さんの屋台でいんげん牛肉ナムプリック炒めかけご飯を注文したのですが、姐さん、いつものようにご飯大盛りにする？　ときくのでなんとなく慎ましやかにお金を使わなければならないような気がしたあたしは、いやーんそんなに食べられないの、といけしゃあしゃあとカマトトぶって答えたのでした。

　しかし、十五バーツだとばかり思っていたいんげん牛肉炒めかけご飯の値段はいつもと同じ二十バーツです。ケッ、こんな事なら最初っから少なくなんて言わなきゃ良かった、とカマトトからいきなりアバズレになってそう呟き、牛肉なんて久しぶりだなあ、と思いながら食べていたのです。

　するとその自ら頭に喚起した、久しぶり、という言葉に触発されて、昨日、飲むと決めた焼酎を胃に落とし込むときのあのしゃわしゃわしゃわしゃわと胃壁にアルコールがしみこむ感覚がよみがえってくるじゃないですか。言霊というのは恐ろしいものです。

　非常に危険だ、危険な状態だとわたくしは思い、パブロフわんわん状態になった胃を何とか鎮めようとテープルにおいてあった醤油漬け唐辛子を皿の上に思い切りスプーンに山盛り四杯かけて蹴り込みました。

　少し胃がヒリヒリしましたがそれでも気がおさまらず、部屋に戻ってからも何度か階下におり、油ぎったパートンコーを三つと菓子パンを食べました。そして、夕方になるとその結果として手持ちのお金が二十五サタンになりました。

　これ以上何かを買いたいときは、港か国道に出てＡＴＭで現金を引き落とすかもしくは、ご飯を炊くしかありません。今日はもうなんとなくこれ以上お金を使いたくないし、わざわざ港まで出るのは忍びないのであたしは、ご飯を炊くことにしました。

　しかし、今日使いたくない、ということは明日は使ってもかまわない、ということなのです。きっとわたくしは港のＡＴＭまでキャッシュカードを持って歩いて行くことでしょう。しかし港には飲み屋さんがいっぱいあります。そしてお酒を売る雑貨屋もあります。

　もしかしたらあたしはその地雷原でタップダンス状態を避けるために、港には寄らず市場のＡＴＭでお金を下ろすかもしれません。しかし市場は市場で食堂や雑貨屋などいろいろな意味で恐ろしいものが待ちかまえているのです。

　さて、あたしは無事、深夜の市場と港から戻ってこれるのでしょうか？　言霊や決意というものは時折あたしを過酷な状況に投げ込んでしまうのです。あ、なら行かなきゃいーじゃん、ってツッコミはなしね。じゃ、行ってきまーす。