また今日も大首都クルンテープマハーナコーン都内に行かねばなりませんでした。そうです。二週間に一度の謀議です。秘密組織の会合です。ハイネケンをご馳走になりました。美味しかったです。

　それで、夜も遅く遠回りになりますが王宮前広場を通ってバスを乗り換えて帰ろうとしたのですが、ふとわたくしはあることに気づいて白米通りに行ったのです。いや、こないだ鶏足のサラダ頼んだらご飯四人前くらいただで食わせてくれたサラダ屋台のおばちゃん御礼を言っておおかねばならないと思ったのが理由なのですが。。

　おばちゃんのとこに行くと屋台裏に椅子を出し、座ってお酒を飲んでいるおっちゃんがいます。見たことがない顔です。おっちゃんは一緒に飲もうよ、と日本語でおっしゃいます。なんとなくちょっと違和感はありますがカタカナではなくひらがなの、ある程度流暢な日本語でした。間違いなく日の丸ネイチヴではありません。

　一応気になったのでどこの方ですか？　と聞いてみたら、ネパールです、とおっしゃいます。一応時節柄、ああ大変ですね今お国は、と呟くようにして言ったら、ちょっとここでは書けないような、やばい発言をひらがな日本語で立てつづけにはじめられました。

　いやあ日本語お上手ですね、とわたくしは当然のように話を切り返しました。するとおっちゃんは、奥さんが日本人だそうで奥様の名前と出身地その他奥様の個人情報を思いっきりわたくしに機銃掃射されます当然ひらがなの日本語で。

　いやああんた飲んでいきなさいよ、とおっちゃんは言葉を続けられますが、どうしても今日のわたくしはおっちゃんのそのどう考えても純和風な濃さに耐えられる気がしませんでしたので、ごめんなさいこれから帰らないとバスがなくなるのです、と言ってお別れしてバス停に向かいました。

　バスを待ちながらわたくしはあのおっちゃんがどうして、一緒に飲んだら見る見るうちに体力を消耗しそうな種類の子泣き爺的純和風負のオーラをきっちり身につけているのか理由を考えてみました。

１．奥さんの性格。
２．ただのトラウマ。
３．日本で管理職に就いている。
４．実はホモセクシャル。

　適当に四つほど思いついた原因はどれももっともらしかったのですが、どれももっともらしいけどどれももっともらしいくないような気がしたので、私はあのおっちゃんただの訛りがあるネパールの政情に詳しい日本人、と言うことにして、なんか納得が行かなかった自分の気持ちに結論をつけました。
 
 
 

　疲れているときは日本人以外の人を日本人にしたって構わないと思います。

　バスに乗り座席に揺られ、落ち着いた心が睡気に吸い込まれてゆくのを容認しながらわたくしはつくづく、こういった力業で自己完結するような汚い大人に自分もなってしまったのだなあ、と思ったのでした。結局わたくしはおっちゃんと戦わずして破れたと言うことなのでしょう。疲れているときの自分は嫌いです。