もし突然あなたが住んでいるところに素敵な異性が現れ、

「私はあなた様と素敵な性行為を遂行するために、わざわざ遠いところからやって参りました」

　と、言ったりなんかしたらどうしますか？

　しかも、凄くタイプなのですその方は。性的な波動も見た目も容姿もすべて。

　が、しかしそんなうまい話はたまにしかあるわけがありませんからよくよく状況を探ってみると、どうやらその方はここに来るまでの過酷な旅路の途中、病を患ってしまったことが判明します。

　そしてその病は不治の病なのです。もう治らないのです。ほっとくとその方はすぐに亡くなってしまうのです。

　そういう事情ならアタシは当然やります。アタシとの想い出を冥土の土産として冥界に持っていっていただく、というアタシの性衝動を大肯定する大義名分だってあります。世間的にも自分的にも迷う必要なんて何一つありません。やるしかありません。

　しかしひとつだけ問題があるんです。

　その不治の病なのですが、実は行為によって感染する危険性を孕んでいるのです。いや、注意深く遂行すれば大丈夫なのですが、けっこう細かい注意が必要なのです。

　そこでアタシは悩みました。

　そして出た結論は、ゴーでした。

　しかし、どうしても最後まで行為を遂行することが出来ず。中途半端なままで終わってしまいました。そして中途半端なままその方は昇天されてゆきましたのです。

　中途半端なままで終わってしまったアタシを責める方もいらっしゃるかもしれません。
　しかし、ここまで送られてくる途中に瓶が割れた岩海苔をガラスの破片を避けながら食べるのは大変面倒なのです。

　それに何よりあつあつのご飯にまぶして思いっきり噛み思いっきり飲み込む、という岩海苔摂取時の醍醐味を味わえないのはとても辛かったのです。岩海苔は舌でガラスの破片を探ったり、ビクビクしながら飲み込むといった種類の食べ物ではありません。

　あ、わざわざ愛知県から送ってくれた方、有り難うございました。ほとんど食いましたが食ってて凄くストレスが溜まったので少し残して捨てました。そのかわりに少しガラスも食ったので勘弁して下さい。