先日ですね、いきなり電話がかかってきて呼び出されたんですよ。ネイチヴオスに。この人はまだ会うのが二回目だというのに、いろいろとご馳走してくれるんですよわたくしに。 初めて会ったときもいろいろご馳走してくれたんですけどね。

　お食事は三人でした。その元長距離トラック運転手のネイチヴオスと、いい年した小太りのおっちゃんと三人で飯食ったんです。東北ラオス料理ですねいわゆる水牛スープ、鶏スープ、家鴨挽肉の香菜和え、と肉も三種類フルコースで。

　で、お腹が一杯になるとそりゃ多少性衝動という物も誘発されて増大なんかしたりするものらしいので、そのいい年した小太りのおっちゃんは、よし俺は今からマッサージパーラーに行くぞ、力強く宣言なさいました。

　そうです。マッサージパーラーというのはいわゆる日本でゆうところのソープランドなのです。食うだけ食ってビールも飲んでいい気持ちのそのおっちゃんはお風呂で身を清めてすっきりしたいようなのです。お前も行くか？　とおっちゃんはわたくしに聞いてきました。ええ行きますとも、

　わたくしは即座にそう答えました。ここ何年もそんな淫靡なところに顔を出したことがなかったわたくしはすっかりどきどきです。わたくしたち三人はおっちゃんの車へ乗り込みました。そして元長距離トラック運転手ネイチヴオスの運転で多くのマッサージパーラーが建ち並ぶペッブリー通りへと向かいました。

　そしておっちゃんが選んだのはクリスティーナ、と言うお店でした。クリスティーナですクリスティーナ、この国でクリスティーナと言えば この方。

　三十過ぎていまだアイドルのクリスティーナ・アギラーを連想せずにはいられません。バリバリのセックスシンボルなのですクリスティーナ・アギラーは。歌声も色っぽいのです。ええそれはもう。

　わたくしは、クリスティーナ・アギラーはこれからいくつくらいまでクリスティーナ・アギラーでいられるのだろうか？　と思いつつおっちゃんのあとについて車から降りました。もしかしたらあと十五年ほど経ってもクリスティーナ・アギラーでクリスティーナ・アギラーのままで日本でゆうところの由美かおる的存在になり得るかもしれません。

　そこまで考えるとわたくしの脳裏にはお約束のように長寿番組水戸黄門でちょうど八時半過ぎに湯船に使っているクリスティーナ・アギラーの姿が映し出されます。そしてそのクリスティーナ・アギラーは顔こそはクリスティーナ・アギラーなのですが身体はたっぷりと由美かおるなのです。なんと見事なご都合主義なのだろう、とわたくしは自分の妄想地力を見直さずにはおれませんでした。

　そして店に入ってみると正面に雛壇がありました。その雛壇の中には年齢だけはクリスティーナ・アギラー以上にクリスティーナ・アギラーの年齢っぽいお姉さま達が座っていて、多分雛壇の再下段、わたくしたちからは見えない死角に設置されているらしいテレヴィを見たりしておられました。化粧を直されている方もいらっしゃいます。

　おっちゃんは注がれたビールに一口くらい口を付けるととっととその中で若そうな娘さんをピックアップし階上の個室に消えてゆきましたが、残されたわたくしと元長距離トラック運転手ネイチヴオスは二人でずっとその硝子の向こうを見みる事になったのです。時折硝子の向こうでは、お姉さまの一人がピックアップされ、中の娘様方が入れ替わります。

　しかしそのなかでもずっとピックアップされないお姉さまがいらっしゃいました。なんか凄く疲れたような表情をされているお姉さまで、わたくしはそのお姉さまに向かってはやくピックアップされるようにお祈りせずにはいられませんでした。

　結局おっちゃんがひとっプロ浴び終える一時間半ほどの間、ずっと二人でビール飲みながらああだこうだとお話をしておりました。

　え、何故てめーは入浴しないかって？

　わたくしここ何年かケダモノ本能維持のために極力金銭が介在する性行為は遂行しないようにしております。それに、わたくし先月からおこづかい帳をつけてはじめているのですがそのおこづかい帳が公開なのです。

　だから、そこに、

　そうです。売買春は犯罪なのです。そんな犯罪行為の状況証拠を自ら全世界に公開してしまうバカがどこにいるのでしょうか。はい、ここにいます。多分わたくしは買ったら公開してしまうでしょう間違いなく。

　とりあえずこのメールマガジンはもしかしたら家族が登録して読んでいる可能性もあります。実際に親戚の何人かは登録されているのです。そういう方々に恥ずかしい思いをさせてはなりません。

　あ、ちったあてめえ本人が恥ずかしがれ、って突っ込みは聞かないフリします。商いは極力正直に、が当事務所の方針なのです。

　で、結局おっちゃんが戻ってくるまでにその、表情が痛んだお姉ちゃんは見事にピックアップされました。なんとなく自分のお祈りが通じたようでとても嬉しかったです。