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平成十三年十一月二十五日(日)

 十月二十六日の日記でお伝えしたように、今翻訳している本の市場出荷に際して出版元に連絡したところ見事なほど軽くあしらわれたのです僕は。。

 しかしそう簡単にはいそうですかと引き下がるわけにも行かないので、いろいろな紆余曲折を経て検討し、結局、翻訳サンプルを著作者の事務所宛に書留で送るという甚だ幼稚な作戦をとっておいたのです。

 そうして待つこと一週間以上経ったおととい、一本の電話がありました。著作者側関係者を名乗る人からです。翻訳許諾されました出版に関しては追ってまたメールで連絡します、と言う内容の電話でした。

 思わずガッツポーズを取りそうになりましたが、再度コンタクトが無い限り安心はできません。なにしろ相手は出す本全て書店のベストセラー棚に陳列され、出した本が何年にも渡り版を重ねられるという非常に羨ましい結果を残してやがる、泰国書籍流通業界では知らぬ人がいないほどいい仕事をしている大物です。

 ですからどこの馬の骨ともわからない泰日翻訳言語藝人に郵便物ひとつでたぶらかされて日本上陸しようなどと簡単には考えないはずです。これはもしかしたら僕をからかうためのちょっとした猿芝居かもしれまない、と僕は考えました。裏に日本人が動いているのであればその可能性は大いにあります。

 なにしろ僕は某巨大匿名掲示板の、タイ在住で氏んでほしい日本人、スレッドの七番目に名前が書き込まれたり、公式サイトのお客様ご相談窓口に東京近辺のマンガ喫茶ゲラゲラから多重書き込みや解除しにくいメルマガをいくつも登録されたり、泰国内在住の方から偽者を語って誹謗中傷されたり、某王立大学留学生の間で作品を見てもいないのにエロ小説を書いていると誹謗中傷されたりするほど一部の方に恨まれたりしているらしいからです。

 もしこれが日本人によるいやがらせ等なのであれば、今年ずっとチマチマとこの本を訳してきた僕に対しての効果は絶大です。ぬか喜びすればするほどほどダメージは長引きます。下手すると立ち直れないほどの致命傷になるかもしれません。

 甚だ疑心暗鬼がすぎると思う方もいらっしゃるかもしれませんが、こちらでは日本人同志で足下を掬い合うことが多いとしょっちゅう聞きますので、疑心暗鬼でなければならないことも多々ありますのですええそれはもう。日本人社会から離れている僕でさえも過去、掬われることがありましたええそれはたびたび。

 が、しかし昨日、今度は著作者アシスタントを名乗る別の人から電話があり、忙しいのでまだはっきりとは言えないが来週時間を作るから申し訳ないが週末時間を空けて待っていて欲しい、とと言われました。

 出版形態や出版業者など少しつっこんだことも聞かれましたし、冷静に考えていくらなんでも二人以上のネイチヴを使ってこのような猿芝居を打つほどの日本人はさすがにいないと思います。第一、うちの電話番号を知っている人間なんて数えるほどしかいないのです。
 それが故、これは本物だ、と僕は判断しました。どうやら本当に僕の泰日翻訳言語藝作品は市場出荷の方向で動き始めたようです。
 
 
 
 

 いえーい。

 いえーい。

 いえーい。

 いえーい。

 そういうわけですので作品が商品として出荷されることはほぼ間違いないと思います。

 当然、契約はじめその他の諸条件のとりきめの段階において僕がぶち切れたり、ナマ邂逅した僕を著作者側が嫌ったりしない限りではありますが。

 なお、これからいろいろな段取りが決まれば納期等が絡む作業に入ってしまい、今までより忙しくなると思いますので、このメールマガジン配信及びサイト更新、メールの返事などが滞ったりすることが十分予想されますのであらかじめご了承下さい。

 皆様に作品をお届けし、そのかわりに木戸銭を徴収する準備等が整いましたらここでいの一番に報告いたしますので漱石一枚ほどの現金を用意してお待ち下さい。
 
 
 

 でも、下訳すらまだ完全には終わってない、と言うのはここだけの秘密。
  

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