EOS-SCx Ver.0.2w eos-scx
水、メタノール、二酸化炭素の状態方程式による密度および熱力学量の計算プログラム

Copyright (c) 2002- Tsutomu Ohmori

はじめに

機 能概要

動作環境、インストール、アンインストール

項 目の説明

使用方法

表の作り方 TYPE I (行列型)

表の作り方 TYPE II (3列型)


制限事項

想 定FAQ

要 望、質問などの連絡先

参考文献

著作権および免責事項、謝辞


2004/10/17
Tsutomu Ohmori
http://hp.vector.co.jp/authors/VA030090/
(最新情報はこちらのホームページで更新されます)
(古い情報や追加情報を2010/10/9に整理・追加しました)

<は じめに>
EOS-SCxは 水、メタノール、二酸化炭素の状態方程式から気相、液相、超臨界領域と いった幅広い領域において密度、圧力、そのほかの熱力学量について計算するフリーウェアです。

化学を学習された人は理想気体の状態方程式というものをご存じだと思います。
気体は圧力がかかると密度が徐々に高くなり、ふつう気液共存状態を経て液体になります。
こうなると、理想気体の状態方程式は成り立ちません。
したがって現実には、重要な物質に関して経験的な状態方程式がいくつか提案されています。

わたしは博士課程在籍時に大学の研究の中で、超臨界流体というものを扱っていました。
このときに密度の見積もりは大変重要な役割を果たします。
この密度など諸熱力学量の見積もりについては、多くの実験データを元にした経験的な状態方程式を利用します。
しかしながら、これらの状態方程式は電卓で計算できるような簡単なものではありません。
表に載っている値を補間して利用している人も少なくないでしょう。
必要ならばプログラムを組むしかありません。
不幸にもわたしにはそれが必要でした。

そこでわたしは、このプログラムの原型を作りあげました。
このときはメタノールの状態方程式のみを取り扱っていました。
密度さえ見積もれればよかったのです。
とはいえ状態方程式ですから、ヘルムホルツ自由エネルギーをはじめ、あらゆる物性がわかります。
ほどなく、それらも計算されるように改良を加えました。

このプログラムは、わたしの初めての論文の大きな一助となりましたが、大変苦労しました。
そこで、この苦労を報わせる方法を考えました。
それはフリーウェアとして公開をし、皆に役立ててもらうことでした。
ですが、超臨界メタノールの研究はそれほど多くありません。
多くの場合は水と二酸化炭素を使います。
そこで研究の傍ら、このフリーウェアに水と二酸化炭素の状態方程式を組み込みました。
そうしてできあがったのがEOS-SCxで す。

ところがこのプログラムができあがる頃に、PROPATHであるとか、Wagnerのグループが提供する多くの物質に対応した状態方程式の計算プログラム の存在を知ることになる( ̄○ ̄);; のですが、これらのソフトの存在は研究人の中でさえも、意外と知られていないのではないと思われます。
少なくとも、わたしはこれらを自由にダウンロードできる場所を知りません。
それにまぁ、作ってしまったものは仕方がありませんし(´ー`)

EOS-SCxが、 きっとあなたの研究や学習の大きな助 けとなるでしょう。
そしてそうなることを願ってやみません。

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<機 能概要>
温度圧 力から密 度を計算できます。
また、温度密 度から圧 力を計算できます。

さらに、次の熱力学量が状態方程式から計算できます。
融解圧力  (温度に対して。水を除く)
飽和圧力  (温度に対して)
飽和密度  (温度に対して)
内部エネルギー
エンタルピー
ヘルムホルツ自由エネルギー
ギブス自由エネルギー
エントロピー
定積比熱
定圧比熱
圧縮因子
フガシティー係数
音速
ジュール・トムソン係数
第2ビリアル係数
膨張率
等温圧縮率

状態方程式からではありませんが、経験式のある次の量も計算されます。
粘度  (水、二酸化炭素のみ)
熱伝導率  (水、二酸化炭素のみ)
熱拡散定数  (水、二酸化炭素のみ)
誘電率  (水のみ)
イオン積  (水のみ)
屈折率  (水のみ)

さらには、以 上の物理量について多くの状態点を連続で計算して表を作成できます。

おまけに、意 外と面倒な計算である単位換算も簡単にできます。

こんなわけで、EOS-SCx、 かなりオススメですъ( ゜ー^)

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<動 作環境>
Windows95以降のWindows全般で利用できると思います。(WindowsMe, 2000, XPで動作確認)
ウィンドウの大きさは800×600以上を推奨します。
ランタイムなどは必要ありません。

<インストール>
インストールは、EOS-SCX[.zip](圧縮ファイル)を、適当なフォルダに解凍してください。
圧 縮、解凍についてわからない人はGoogleやYahooなどの検索サイトで調べてくだ さい。
DLLなどの特別なファイルは作成されません。

<アンインストール>
ファイルを削除するだけです。

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<項 目の説明>

メ インウィンドウの項目について説明します。
それぞれの項目をクリックすると説明文にとびます。 (ブラウザによっては説明文にとばないかもしれません)
(画面はVer0.2を元にしていますが、操作のほとんどは同じです)

u10
selectfluidTPrhosetcprhoverrmescalculatemaketablesaboutpmeltpsaturhogasrholiqunitofamountUHFGSCvCpZFPWJTC2alphakappaethalambdaDthepsKwnl

Select Fluid
物質名を選択します。水(water)、メタノール(methanol)、二酸化炭素(carbon dioxide)の3つが選択できます。
戻 る

T
温度(Temperature)です。 左のテキストエリアに数値を入力し、右のコンボボックスで単位を選択します。
使える単位は K, degC (℃), Tr (臨界温度による換算温度)です。
単位を変更すると、自動的に数値が換算されます。
戻 る

P

圧力(Pressure)です。入力するためには、左のラジオボタンをクリックします。
左のテキストエリアに数値を入力し、右のコンボボックスで単位を選択します。
使える単位はMPa, Pa, bar, atm(気圧), Pr (臨界圧力による換算圧力)です。
単位を変更すると、自動的に数値が換算されます。
また、密度を元に計算した場合、圧力の計算結果がここに出力されます。
戻 る

rho (V)
密度(Density)です。rho& lt;->Vボタンにより、比体積(Specific Volume) V を用いることもできます。
入力するためには、左のラジオボタンをクリックします。
左のテキストエリアに数値を入力し、右のコンボボックスで単位を選択します。
使える単位は密度の場合、 kg/m3, g/cm3, mol/l, molec/A3 (A = Å = 0.1nm), rho-r (臨界密度による換算密度)です。
比体積の場合はこれらの逆数およびVr (臨界比体積による換算比体積)です。
単位を変更すると、自動的に数値が換算されます。
また、圧力を元に計算した場合、密度(または比体積)の計算結果がここに出力されます。
戻 る

Set CP
設定されている物質の臨界点の値を表示します。
戻 る

rho<->V
密度rhoと比体積Vのどちらの量を表示するか切り替えます。
戻 る

(Error Message Area, タイトルなし)
計算時にエラーがある場合、エラーメッセージを表示します。
戻 る

Calculate
入力された条件をもとに、計算を実行します。
戻 る

Make Tables
表 を作成するためのウィンドウを表示します。
戻 る

About...
参考文献とソフトウェア情報のウィンドウを表示します。
戻 る

P-melt
融解圧力。入力された温度における固液共存状態での圧力を示します。
戻 る

P-satu
飽和圧力。入力された温度における気液共存状態での圧力を示します。
戻 る

rho-gas (V-gas)
気相側の飽和密度(比体積)。入力された温度における気液共存状態での気相側の密度(比体積)を示します。
戻 る

rho-liq (V-liq)
液相側の飽和密度(比体積)。入力された温度における気液共存状態での液相側の密度(比体積)を示します。
戻 る

Unit of Amount
エネルギーや比熱などは単位量あたりの数値を表示します。
その単位量を選択します。
単位はmol, kg, molec (= 分子1個)が選択でき、それぞれに対応するエネルギーの単位はJ/mol, J/kg, kB/molec (kB: Boltzmann定数=1.3806e-23 J/K)です。
molecを選択したときに表示される数値はエネルギーの温度換算に相当します。
この単位を変えると、エネルギーなどの数値は自動的に換算されます。
戻 る

Internal Energy U
内部エネルギー。
熱力学の第1法則より系に与えられる熱量と系にされる仕事量との和として定義されます。
定積、温度変数のときの自由エネルギー。
戻 る

Enthalpy H
エンタルピー。
系が定圧、温度変数のときの自由エネルギー。形式的には、H=U+PV。
反 応生成エンタルピーとは無関係な ので注意してください。
戻 る

Helmhortz Energy F
ヘルムホルツ自由エネルギー(Helmhortz free energy)。
系が定温、定積のときの自由エネルギー。形式的には、F=U-TS。
戻 る

Gibbs Energy G
ギブス自由エネルギー(Gibbs free energy)。
系が定温、定圧のときの自由エネルギー。形式的には、G=U-TS+PV。
戻 る

Entropy S
エントロピー。不可逆性を特徴づける量で、系に与えられる熱量の経路積分÷温度から定義されます。
統計力学ではBoltzmann定数×状態和の対数としても定義されるので、一般には「乱雑さ」とも解釈されます。
戻 る

Isochoric Spec. Heat Cv
定積比熱(Isochoric specific heat)。定積の系で温度を1K上げるのに必要なエネルギー。
戻 る

Isobaric Spec. Heat Cp
定圧比熱(Isobaric specific heat)。定圧の系で温度を1K上げるのに必要なエネルギー。
戻 る

Compression Factor Z
圧縮因子。形式的にはZ=PV/RT (Rは気体定数)。理想気体からのずれを示す係数。
戻 る

Fugacity Coef. F/P
フガシティー係数。逃散能、逸散度とも訳され、化学ポテンシャルについて理想気体からのずれを示す係数。
戻 る

Sound Velocity W
音速。流体を伝わる音速の低周波数極限の値を示します。
戻 る

Joule-Thomson Coef. m
ジュール・トムソン係数。ジュール・トムソン過程(等エンタルピー変化)における、圧力変化量あたりの温度変化量。理想気体では0となる。
戻 る

Second Virial Coef. C2
第2ビリアル係数。
圧縮因子を密度に対してTaylor展開(ビリアル展開)したときの二次の係数。温度のみに依存します。
戻 る

Isobaric Expansion Coef. alpha
(等圧)膨張率。形式的には(dV/dT)/V。
戻 る

Isothermal Compression Coef. kappa
等温圧縮率。形式的には-(dV/dp)/V。
戻 る

Viscosity etha
粘度。
戻 る

Thermal Conductivity lambda
熱伝導率。
戻 る

Thermal Diffusivity Dth
熱拡散定数。形式的にはlambda/(rho*Cp)。
戻 る

Relative Dielectric Const. eps

比誘電率。
戻 る

Ion Product pKw
イオン積。
戻 る

Refractive Index n(l)
屈折率。光の波長によって異なります。
戻 る


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<使 用方法>
eos-scx.exeのアイコンをダブルクリックして起動します。
次のようなウィンドウが出ます。

u1

まずは試しに右上にあるCalculateをクリックしてみてください。

u2

すると次のようになるでしょう。

u3

おそらく一瞬にして、数値が現れたと思います。
このように、Calculateをクリックするだけで計算はすべて終了です。

今は水の臨界点(647.096K, 322kg/m3)について計算をしたことになります。
出た数値が少々いびつに思えるかもしれません。(この原因については制限事項を ご覧ください)

では、もう少し身近な状態である、25℃、1気圧の水について計算をしてみましょう。

まず最初に物質名を選択しますが、"water"となっていますので変える必要はありません。
次に、単位を選びます。
温度Tの単位は℃ですので、degCを選択します。

u4

圧力Pの単位は気圧ですのでatmを選択します。

u5

ここでは、密度rhoの単位をg/cm3としましょう。

u6

温度の数値25を入力しましょう。

u7

今、圧力のテキストエリアは色がついていて、数値を入力することができません。
圧力の横のラジオボタンをクリックすると、テキストエリアの色が反転して、数値を入力する用意ができます。

u8

圧力の数値1を入力します。

u9

さぁ、計算です。Calculateをクリックします。

u2

計算結果が出ました。

u10

たとえば、密度が0.99705g/cm3と出ました。
水は1g/cm3、と思うと少し小さいですが、正確な測定値は0.99704g/cm3です。
非常によくあっていることがわかります。

では、同じ25℃、1気圧の二酸化炭素ではどうでしょう?
まず物質名で"carbon dioxide"を選択します。

u11

あとは、温度も圧力も同じなので、Calculateをクリックです。

u2

結果は次のようになります。

u12

たとえば密度については0.0018g/cm3と小さく、気体であることがわかります。

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<表 の作り方 TYPE I (行列型)>
TYPE I とはm行×n列の行列様式の表です。
TYPE II (3列型) の表の作り方はこちらへ。

Make Tablesをクリックすると次のような画面が現れます。
すでにTYPE Iに設定されています。
今回は0℃、100℃、200℃、300℃の水の密度を、さまざまな圧力(1気圧〜100気圧)について計算しましょう。

t1-1

このウィンドウを操作する前に、メインウィンドウで物質名、単位を指定しておく必要があります。

t1-2

次に、表について行と列に使う物理量を指定します。
今は、行が温度で、列が圧力として選択されているので、変えなくてもかまいません。
しかし、今回は圧力の点が多いので、圧力を行、温度を列とする表を作ると見やすくなります。
したがって、行と列のそれぞれの選択肢を変えましょう。

まず、行(ROW)に圧力であるPを選択します。

t1-3

次に、列(COLUMN)に温度であるTを選択します。

t1-4

ここで、それぞれ計算したい圧力、温度の数値をカンマ(",")区切りで入力します。
まずは数の少ない温度のほうを先に入力しましょう。
"0,100,200,300"とスペースなしで入力してください。

t1-5

圧力のほうは"5,10,15,20,25,30,35,40,45,50,55,60,65,70,75,80,85,90,95,100"とスペース なしで入力します。
しかし、圧力の方は数値が多くて入力するのが大変です。
そこで、入力を支援する方法で行いましょう。
何はともあれ"ROW series x, y, z=" の右のテキストエリアに"5,5,20"と入力してください。

t1-6

次に、"<= make x, x+y, ..., x+(z-1)y" ボタンをクリックします。

t1-7

カンマ区切りの数値が自動的に生成されます。
"5,10,15,20,25,30,35,40,45,50,55,60,65,70,75,80,85,90,95,100"となっていることがわか ります。
以上の操作は、「5から始め、5ずつ増える20個の数列を作る」という操作に対応します。
ROW series x,y,z= のテキストエリアに"5,5,20"と入力したのはそのためです。

t1-8

1気圧も計算したいので、生成された文字列のいちばん左に、"1,"を付け加えましょう。
このように後から付け加えたり、また削除、変更することもできます。

t1-9

下のコンボボックスから、表として出力したい量を選択します。
ここでは密度"Density: rho"を選びます。

t1-10

Make Tablesボタンをクリックします。

t1-11

すると表をファイル保存するためのダイアログが開きます。
表はテキストファイルとして保存されます。
自分が表を作成したいフォルダに移動してから、 適当な名前をつけます。
ここでは"test"とします。

t1-13

名前をつけたら"保存"をクリックしてください。
すると計算が始まります。
後ろの画面で数値が変化している様子が見て取れます。
この計算過程を表示したくないときは、事前にShow Calculation Processのチェックを外しておきます。
チェックを外すと処理が少し速くなるので大きな表を作るのに適していますが、寡黙になり、あたかもフリーズしたように感じます。しばらく待たねばなりませ ん。

計算が終了しますと、次のメッセージが出ます。

t1-14

作成された表のファイルを開いてみましょう。

t1-15

表をメモ帳で見るとこのような感じになります。ちょっと崩れていますね。
これはタブ区切りテキストです。
今はこの表にタイトルがついていますが、このタイトルを付加しない場合は、事前にAdd the title at the 1st line のチェックを外しておきます。

t1-16

タブ区切りテキストはデータ解析用ソフトに読み込むのに便利です。
下のように、きれいに読み込むことができます。(ここではKalaida Graphを用いています)

t1-17


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<表 の作り方 TYPE II (3列型)>
TYPE IIの表とはn行×3列のものです。
これはn行×2列の行列様式のタブ区切りテキストファイルを読み込み、各行の1列目と2列目の数値をもとに計算して、計算結果を3列目に付加して出力され ます。
したがって、n行×2列の行列様式のタブ区切りテキストファイルが前もって必要になります。
TYPE I (行列型) の表の作り方はこちらへ。

Make Tablesをクリックすると次のような画面が現れます。

t1-1

"TABLE TYPE"で TYPE IIを選択すると、ウィンドウは下のように変化します。

t2-1

TYPE IIの表を作るためには、n行×2列のタブ区切りテキストファイルが必要ですが、サンプルとしてt2_samp.txtをパッケージの中に含んでいます。
内容は以下の通りです。
今回はこれをもとにして、表を作りましょう。
(余談ですが、これはわたしが研究の際に、ある論文の値を実際に解析する時に使ったものです)

t2-2

表を作成するウィンドウを操作する前に、メインウィンドウで物質名、単位を指定しておく必要があります。
このサンプルテキストは二酸化炭素のもので、温度の単位が℃、圧力の単位がMPaです。

t2-3

このサンプルテキストは1列目が温度、2列目が圧力となっています。
1st COLUMN、2nd COLUMNのコンボボックスで、選択します。
起動直後には変える必要がありませんね。

t2-4

"FILE for reading columns"の下のテキストエリアに、読み込むファイル(今回はサンプルテキスト"t2_samp.txt")のファイル名をフルパスで入力します。
これは右端の"ref."ボタンから探して指定することもできます。
(フォントの関係上、"\"がバックスラッシュになったり、日本語が文字化けしますが、動作に問題はありません)

t2-5

サンプルテキスト(t2_samp.txt)を見てください。
タブ区切り数値は4行目から始まっています。
プログラムはタブ区切りの数値しか正しく読み込むことができませんので、はじめの3行分をとばす必要があります。
そこでSkip linesの横のテキストエリアに"3"と入力します。

t2-6

下のコンボボックスから計算する物理量を選択します。
今回は音速 "Sound Velocity: W" でやってみましょう。

t2-7

Make Tablesボタンをクリックします。

t1-11

すると表をファイル保存するためのダイアログが開きます。
自分が表を作成したいフォルダに移動してから、 適当な名前をつけます。
ここでは"test"とします。

t1-13

名前をつけたら"保存"をクリックしてください。
すると計算が始まります。
後ろの画面で数値が変化している様子が見て取れます。
この計算過程を表示したくないときは、事前にShow Calculation Processのチェックを外しておきます。
チェックを外すと処理が少し速くなるので大きな図を作るのに適していますが、非常に寡黙になり、あたかもフリーズしたように感じます。しばらく待たねばな りません。

計算が終了しますと、次のメッセージが出ます。

t2-8

作成された表のファイルを開いてみましょう。

t1-15

表をメモ帳で見るとこのような感じになります。
これはタブ区切りテキストです。
今はこの表にタイトルがついていますが、このタイトルを付加しない場合は、事前にAdd the title at the 1st line のチェックを外しておきます。

t2-9

タブ区切りテキストはデータ解析用ソフトに読み込むのに便利です。
下のように、きれいに読み込むことができます。(ここではKalaida Graphを用いています)

t2-10


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<制 限事項>

有効桁数と誤差
数値の表示に有効桁数は考慮されていません(明 らかで すけどね(´ー`))。
有効桁数はどんなによくても6桁程度(二酸化炭素は5桁)とお考えください。
また、これらの状態方程式は誤差が評価されています。
具体的には参 考文献をご覧ください。

臨界点付近の計算
メタノールは提案されている状態方程式そのものが臨界点のきわめて近傍では正確ではありません。その他の状態方程式でも、臨界点に近くなる とその性質上、計算される量の誤差は大きくなります。
また、あまりに臨界点に近いと負の値など、あり得ない値を出すこともあります。
エラーの可能性は極力防いでいますが、出ないとは言い切れません。

圧 力と密度からの計算、その他の量からの計算
できません。
水の場合は、参考文献にはBackward equationが提案されていますので、該当するならばこれを使ってください。

準安定状態
気相側と液相側の飽和密度の間の密度は、過冷却などでない限り実現しない値ですが、数値が計算される場合があります。
このとき"(meta-stable?)"とエラーメッセージを出すようにしていますが、この数値は過冷却などの準安定状態の実験値には原理的に近いもの になりますが、単純な補外値を表示しています。信用性については状況判断が必要です。
な お、表を作るときに、こういったエラーメッセージの表示は一瞬で、確認することが事実上 できません。注意してください。

状態方程式の適用範囲を超える補外値
範囲を区切ってあ えて計算しないようにしています。
理由 はここ。
必要ならば表を作って補外してください。

作成した表の整合性
表の作成時にある要素についてエラーが出た場合でも計算が続行され、適切でない値が含まれているにもかかわらず、表が正常に作成されたように見えることが あります。

二酸化炭素の気相の粘度について
一部の領域で数値計算的に正しくない値を出力することが明らかになったため、5kg/m3未満の領域では0密度の計算値と5kg/m3の計算値をもとに線 形的に補間しています。

二 酸化炭素の粘度の臨界補正について
1.実は補正式の一部の項を無視しています。この項を考慮すると文献値と合いません。しかし、この項を無視する ことで文献との一致は非常によくなっています。というわけで現在はこのままにしています。バグの可能性がありますが、原因がよくわかりません。
2.粘度の臨界補正の評価には3次方程式を解きますが、臨界点に非常に近いときは3次方程式が重解となって評価することができません。このとき、粘度は "N/A"括弧付きの数値として臨界補正を含まない数値評価を出力しています。しかし、粘度の臨界補正の値は一般に小さいので括弧付きの数値の信頼度は必 ずしも低いとはいえず、ケース バイケースになると思います。このことは熱伝導率の評価にも少し影響します。次項を参照してください。

二酸化炭素の熱伝導率の臨界補正について

1.虚数が出ます。ですが最終的には無視しています。熱伝導率の臨界補正を評価するときに4次方程式の解を用いますが、このときに複素数の解が出ることは どうやら避けられないようです。参考文献にこの虚数の取り扱いについては何の説明もありません。検証した結果、最終的に取り出される複素数は、虚数部分が 実数部分に比べて十分小さいようです。したがって今は計算された複素数の実部のみをとりだして評 価しています。それでも、文献の表と数値を比較したところ良い一致をしています。
2.熱伝導率の臨界補正には粘度の値が必要になります。しかし、前項で述べたように臨界点に非常に近いときは二酸化炭素の粘度の臨界補正の評価ができませ ん。したがって臨界補正していない粘度の値を使った熱伝導率の臨界補正の値はずれてしまう可能性があります。しかし、このようなことが起きるほど臨界点に 近い場合は熱伝導率の臨界補正 の値は非 常に大きくなり、精度は下がります。したがって、粘度によるずれが大きな影響を及ぼさないものと考えています。

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<想 定FAQ>
いくつかの反響をいただいていますが、FAQと呼べるほどは 来ていません(笑)
ですので、勝手によくある質問を想定してみます。

Q. 動かない。
どの段階で動かないかわかりませんが、まずは動 作環境、インストール手順を確認してください。
ダウンロードが不完全だと圧縮ファイルを解凍することができないので、ファイルサイズを確認してください。
サイズがサイトで表示されている値と違っているときは、ダウンロードをもう一度やり直してください。
ダウンロードしてきたファイルはzipという圧縮ファイルの形式で、そのままでは動きません。
解凍したファイルの中でのこんなアイコンeos-scx のeos-scx[.exe]を実行してください。
圧 縮、解凍の概念がわからない人はGoogleかYahooで調べましょう。
以上に該当しない場合はバグの可能性があります。早急に連 絡してください。

Q. 計算された値が参考文献の値と全然違います。
物質を正しく選んでいますか? また、単位を正しく選んでい ますか?
また、制 限事項に該当していましたら、それはすぐには対処できません。ごめんな さい。
以上に該当しない場合はバグの可能性があります。早急に連 絡してください。

Q. 計算された値が参考文献の値と全然違います。たとえば、室温常圧の二酸化炭素のエンタルピーは-393.51kJ/molでは?
それは生成(燃焼)エンタルピーであり、C(solid) + O2(gas) = CO2(gas) + 393.51kJ/mol に相当する反応において意味をなす量です。ここでいうエンタルピーHは内部エネルギーUと外にする仕事量PVの和で定義される熱力学量で、相図(状態図) に関連する量です。

Q. 計算された値が参考文献の値と微妙に違います。
実験値とのずれは普通わずかにあります。この状態方程式のこ のプログラムの妥当性を確認したいときには、用いている状態方程式の参考文献を 用いて比較を行ってください。
制 限事項にも書きましたとおり、有効桁数は6桁合えばいい方です。
ただし、二酸化炭素の粘度や熱伝導率はこのプログラムの用いる密度が、参考文献で用いている密度とわずかに異なりますので、少しずれがあります。
以上に該当しない場合はバグの可能性があります。早急に連 絡してください。

Q. 圧力はゲージの値をそのまま入れたんだけど、数値が微妙に合わないなぁ。
通常、実験では大気圧を0としてキャリブレーションされています(ゲージ圧)から、大気圧分(1 atm)を足してください。

Q. 熱力学量の値が全然違うんだけど、温度変化とかは正しそうなので、単純に数値にオフセットがかかっている形になっているようです。正しい挙動ですか?
理論的には絶対零度を持ってエネルギー0となりますが、通常は各媒質にある基準値を設定して相対的な数値を議論することが行われています。たとえばこのプログラムは、二酸化炭素の場合は参 考文献に従って298.15K, 0.101325MPaで計算される理想気体標準エンタルピー、理想気体標準エントロピーを0とした基準値になっています。

Q. 熱力学量の値にオフセットがかかっているだけなら、自分用の基準値(オフセット値)を設定できませんか?
自分用に基準値を決める機能は搭載していません。ごめんなさい。

Q. 計算された値はどれくらい信頼できますか?
わりと信頼できます。あるいは使う用途によるかもしれませ ん。
少なくとも表示されている値は、確認した限り、その状態方程式が提案する値を忠実に再現しています。
したがって、多くの場合、信頼性の問題はその状態方程式の信頼性となります。
仮にどちらに問題があるにせよ、疑いがありましたら、参 考文献を見て信頼できるかどうか判断してください。
ただし制 限事項により、誤った値が出る場合があります。

Q. "N/A"って何だ?
Not applicable、適用できないという意味です。
論文の中で明示的に制限されている場合と、現実的にエラー回避メッセージとして表示しているものがあります。

Q. 二酸化炭素の粘度を計算したときに、"N/A"の横に括弧付きで数値が出ている。
制 限事項を参照してください。

Q. 二酸化炭素の誘電率とか、メタノールの熱伝導率とかは空白だが、計算できないのか?
実験値が報告されていると思いますが、わたしが調べた限り、 広く一般に使える式が提案されていません。
今後、論文として確立されれば検討します。

Q. 状態方程式はどうやって決めたのですか?
わたしが開発したのではなく、参考文献から引っ張ってきただ けです。
この手の開発は、方法論がある程度あって、それらに対して実験値とのフィッティングによって決定されているかと思います。
詳細は参 考文献をご覧ください。
また、状態方程式を作る方法論について興味のある人は、次の本が参考になるでしょう。
R. Span, "Multiparameter Equation of State" (Springer-Verlag, Berlin, 2000)

Q. なぜ、この状態方程式を選んだのですか? 
IAPWSやIUPACで推奨されていること。
Journal of Physical and Chemical Reference Data という雑誌に掲載されていること。
パラメータが引用でなくその論文に全て記載されていること。
実験値との評価を詳細に検討していること。
表があって検証可能であること。
これらのいくつかの理由を満たしていて、最新のものを選択しています。

Q. 水−メタノールなど、混合流体の物性は計算できますか? 
できません。
混合比率から想定できるほど、この手の問題は簡単ではありません。
ここまで広い温度範囲、密度範囲を網羅しているとは思えませんが、いくつかの論文で報告があるのでそちらを使った方がいいでしょう。

Q. 状態方程式による補外値を表示してくれないか?
このような措置をとったのは作者の責任回避策です。
計算して数値が出たときに、誰しもがエラーメッセージに気を止めるならよいのですが、きっとそうではないでしょう。
誤った値が使われる可能性があります。
表の作成時には事実上エラーメッセージが確認できないので、適切でない計算値が使用される可能性が非常に高いと作者は考えます。
以上のことをカバーできる良い方法がありましたら、ご意見をください。

Q. 作った表の見た目が悪い。
タブで区切った形で表を作成しますので、メモ帳などのテキストエディタで見ると表示は崩れます。
Excelなどの表計算ソフトやデータ解析ソフトで読み込むときれいに読み込めるはずです。

Q. 作った表の一部が空白または文字列だ。
計算できない場合は空白、および明確なエラーの場合はそれに 応じた文字列を返すこともあります。
表の作成ではその状態点において計算を行ったときに、その項目に表示されるものと全く同じものが出力されます。

Q. TYPE I の表を作るとき、1行だけ、または1列だけの表しかできない。おまけに、密度を指定したはずなのに圧力になっている。
融解圧力、飽和圧力、飽和密度、または第2ビリアル係数の表 を作成したかと思います。
これらの値は温度のみに依存するので、温度一定で他をどのように変えても値は変わりません。
したがって、自動的にもう一方をどのように指定しても表を作成するときには圧力を指定し、数値は臨界圧力を設定します。結果に違いはありません。

Q. TYPE II の表を作るとき、ファイルの読み込みでエラーが出る。

読み込みファイルがテキストファイルでタブで区切った形のn行×2列の配列となっているか確かめてください。
サンプルテキスト(t2_samp.txt)を見て、参考にしてください。
途中の行に不正な行がないか確かめてください。

Q. 部屋の壁紙にできるくらい巨大な表を作りたい。
行、列とも、2048項目しか指定できません。
適度に作り分けてください。

Q. 文献を勝手に引用してフリーウェアとして公開してもよいのか。
作者は著作権などの知識にあまり通じていないのですが、プログラムはソースコードなどが著作物として保護されるようです。
一部参考にさせていただいたコードはありますが、少なくとも流用しておらず、一から組み上げたプログラムですのでこのプログラムに作者が著作権を主張するこ とに問題はないと思います。
なお、ごく一部の誤解があるといけないので念のためにいうと、フ リーとはfree of charge(無償)以上の意味はありません。再配布、転載にも条 件が付いていま す。

Q. シェアウェアにする予定は?
今 のところシェアウェアにする予定はありません。
なぜなら。
無料で使ってもらえれば皆が喜んで使ってくれるし、広まるのも早い。
有料にしても払い込む方も払い込まれる方も手続きが面倒。
価値は高いと思うが、どの程度の値段設定をすれば妥当なのかよくわからない。
バグ修正、損害補償の義務がきっと生じる。
法的にうるさくなると思うのでそれを回避するため。
しかし、カンパを受け取ることはやぶさかではありません。
どうしてもカンパしてあげたい、という方は作者に連絡を お願いします。

Q. 他の人に配布してもいいか?
再配布はzip ファイルの形式で改変しない場合のみ可能です。
た だし、このプログラムはVECTORラ イブラ リに登録しており、ダウンロード数の統計を取っていただいています。
VECTOR からダ ウンロードするように他の人に薦めていただけると、数が増えて作者が喜 びます。
なお、サイトや各種メディアによる配布については、できる限り作者と連絡を 取っていただきたいと思いま す。
よっぽど変なことがない限りは快諾します。

Q. 日本語にしてください。
日本人に限らず、世界中の人に使ってもらいたい配慮から英語 にしています。
このヘルプだけでは物足りないでしょうか?
わたしも英語は得意ではありません。がんばって使ってください。

Q. 日本語版でないWindowsでも使えますか?
海外からもいくらかの反響をいただきました。
おそらく問題ないということでしょう。(最初に作者に連絡をいただいたDr. Gary Combesに感謝!
もしうまく動作しなかったりしたら、早急に連 絡してください。

Q. MacやLinuxなど、他のOSでも使いたい。
使えません。このプログラムはWindows でのみ動作します。
エミュレータを動かせばわかりませんが。
CUIベースのプログラムや、Javaで組もうかという漠然とした考えも持っていますが、全く手をつけていません。

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<要 望、質問等の連絡先>

免責事項に より、作者はこのプログラムによって起きた損害について補償する義務を負 いません。
しかし補償はせずとも、作者にもできることはあります。

わからないことやこれがあるといい!と思ったことなどは遠慮なくメールで問い合わせてください。
た だし、一般常識、ネチケットと免責事項を理解した上でお願いします。


作者は緻密な作業はあまり得意ではありません。
見つかってないバグもあるでしょう。バグを発見しましたらぜひ報告していただきたいです。
ソースコードまで指摘していただければなおさらありがたいです。
なお、物質の種類についても、将来的にはできる限り多くをカバーしたいと思っています。
この物質についてプログラムを組んで欲しい!というのであれば、ご意見をください。ただし、そのときは参考文献をあげてください。
その他、「このように改良しては?」という指摘に対しては、できるだけ取り入れていきたいと思っています。


連絡先
最 新バージョンや最新情報については、EOS-SCxのページをまずご覧ください。
http://hp.vector.co.jp/authors/VA030090/

2010年10月現在の連絡先は、

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<参 考文献>
[WATER]
W. Wagner and A. Kruse
"Properties of Water and Steam"
(Springer-Verlag, Berlin, 1998)

W. L. Marshall and E. U. Franck
"Ion Product of Water Substance, 0-1000 degC, 1-10000 Bars, New International Formulation and Its Background"
J. Phys. Chem. Ref. Data 10, pp. 295-304 (1981)

[METHANOL]
K. M. de Reuck
"Methanol, International Thermodynamic Tables of the Fluid State Vol. 12"
(Blackwell Scientific Publications, 1993)

[CARBON DIOXIDE]
R. Span and W. Wagner
"A New Equation of State for Carbon Dioxide covering the Fluid Region from the Triple Point Temperature to 1100 K at Pressures up to 800 MPa"
J. Phys. Chem. Ref. Data 25, pp. 1509-1596 (1996)

A. Feenghour, W. A. Wakeham, and V. Vesovic
"The Viscosity of Carbon Dioxide"
J. Phys. Chem. Ref. Data 27, pp. 31-44 (1998)

V. Vesovic, W. A. Wakeham, G. A. Olchowy, J. V. Sengers, J. T. R. Watson, and J. Millat
"The Transport Properties of Carbon Dioxide"
J. Phys. Chem. Ref. Data 19, pp. 763-808 (1990)

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<著 作権および免責事項>
EOS -SCxのプログラムおよびソースコードの著作権は、作者である大森努が所有しま す。
このことは、ヘルプの冒頭もしくはプログラムのAbout...に示しています。
プログラムの転載・配布は、営利・非営利ともに自由ですが、その際は事前にご一報ください。
転載・配布はオリジナル書庫ファイルの形態で改変しない場合に限ります。
ソースコードについては抜粋・改変しての利用は原則自由ですが、常識の範囲内で行ってください。抜粋・改変したソースコード、プログラムを組み込んだプロ グラムを配布・販売する場合、その旨をマニュアルなどへの記載を必ず行い、必ずご一報ください。
このプログラムには誤りを含んでいる可能性、動作に不具合が生じる可能性を100%排除したものではありません。
自己責任にて使用してください。

このプログラムによって生じた損害等については、作者は補償する義務を負いません。


<謝辞>
メタノールの参考文献を閲覧させていただいた同志社大学工 学部の伊吹和泰助教授に感謝申し上げます。
(おそらく)英語版Windowsでの動作を確認していただいたSchool of Chemical Engineering and Industrial Chemistry, The University of New South WalesのDr. Gary Combesに感謝申し上げます。

3次方程式、4次方程式の解の公式については横浜国立大学 工学部卒の品川仁さんの卒業論文を参考にしました。逆行列の 計算については群馬大学社会情報学部の青木繁伸教授の ソースコードを参考にしました。ありがとうございます。

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