星形正多面体、つまりケプラー・ポアンソの立体は4つ存在する。いずれも正二十面体と同じ対称性のある魅惑的な立体である。表面には星形正五角形を持つものがあり、この平面図形そのものも中心を二重に覆っている。星形正多面体は中心を三重または七重に覆う立体である。
星形正多面体に相当する四次元の図形は、星形正多胞体と呼ばれる。驚くことに、星形正多胞体は10種もある。
とても残念なことに、私の知るところ、星形正多胞体が星形に見える図は、「かたちと空間」という本に出ている模型の写真にわずかに見られるだけである。したがって、現段階で総覧できるのは、シュレーフリ記号のみである。推理するに、我々三次元人が見られる形に表現することが、非常に難しいのだと思う。
シュレーフリ記号の最初の数字は表面の多角形を表す。3は正三角形、5は正五角形で、5/2は星形正五角形を表す。
次の数字は、各頂点に正多角形がいくつ集まっているかを指す。3は3つ、5は5つで問題ない。5/2は二周で5つ、という意味で、頂点をわずかに切って見ると、集まった面の切り口が星形正五角形に見えるはずである。
星形正多面体は、数字が2つ並んだシュレーフリ記号で表される。
{5/2, 5} 小星形十二面体、{5, 5/2} 大十二面体、{5/2, 3} 大星形十二面体、{3,
5/2} 大二十面体
ちなみに、正多面体、つまりプラトンの立体は、
{3, 3} 正四面体、{3, 4} 正八面体、{4, 3} 立方体、{3, 5} 正二十面体、{5,
3} 正十二面体
である。
四次元図形の場合は、シュレーフリ記号の数字が3つになり、三番目の数字は辺の周りに集まった正多面体の数を示す。例によって、5/2という数字が現れ、2周して5つ集まっていることが示される。
以下に10種の星形正多胞体のシュレーフリ記号を示す。
シュレーフリ記号 | 頂点数 | 辺数 | 面数 | 体数 | 中心を覆う回数 |
{5/2, 5, 3} | 120 | 1200 | 720 | 120 | 4 |
{3, 5, 5/2} | 120 | 720 | 1200 | 120 | 4 |
{5, 5/2, 5} | 120 | 720 | 720 | 120 | 6 |
{5/2, 3, 5} | 120 | 720 | 720 | 120 | 20 |
{5, 3, 5/2} | 120 | 720 | 720 | 120 | 20 |
{5/2, 5, 5/2} | 120 | 720 | 720 | 120 | 66 |
{3, 5/2, 5} | 120 | 720 | 1200 | 120 | 76 |
{5, 5/2, 3} | 120 | 1200 | 720 | 120 | 76 |
{5/2, 3, 3} | 600 | 1200 | 720 | 120 | 191 |
{3, 3, 5/2} | 120 | 720 | 1200 | 600 | 191 |
表を見ると分かるように、いずれも対称性は120胞体/600胞体と同じである。
おそらく四次元人なら星形正多胞体の美しさと多様さに、さぞや驚嘆していることであろう。しかし、我々三次元人に上記の数字のみで美しさを感じろといっても、それは無理な相談である。
▼ いわゆる星形化
理屈から言うと、正120胞体や正600胞体の辺や面や体などを延長すればいろいろな星形図形が得られるはずで、おそらく「かたちと空間」で試みられた方法である。三次元では星形化は愛好家によってしつこく追及されているのだが、なぜか四次元ではほとんどお目にかからない。
▼ 五次元以上の星形
星形正多面体や星形正多胞体に対応する立体は、五次元以上には全く存在しない。数学的に証明されている。
高次元になるにつれ、制限が重なってゆくので致し方ないとはいえ、逆に考えると、制限を少し緩めるだけで多数の美しい立体が得られるのではないだろうか。
以下の章で述べることになるが、四次元ですら三次元には見られない新しい対称性が存在する。そこには独自の図形の種族がいるはずである。
2002年8月20日 岡田好一