● 正多角形の星形
正三角形の辺を延ばしても各線は離れてゆくばかりです。正方形の辺を延ばしても、どこまでも平行線です。
正五角形の場合、辺は一回交わり、星条旗などに見られる五芒星(pentagram)ができます。このように正多角形の辺が交わるまで延ばしてできた図形は、星形多角形と呼ばれます。この場合、元が正五角形ですから、星形正五角形です。
星形多角形ととらえる場合、頂点同士を辺が結んでいると考えるので、辺の数は5つ。内側に見える正五角形は錯覚です。それにもかかわらず、「多角形」ですから、周囲を区切られた「面」の一種です。何となく正五角形の部分が二重に見えるのは、正しい認識です。
正六角形の辺を延ばすと、やはり一回交わりますが、その図形はイスラエル国旗にも見られる正三角形を2つ合わせた図形で、辺をたどると一筆書きができません。通常、星形多角形という場合は、辺を一巡すると一筆書きで書ける場合をいい、正三角形2つの場合は別のグループ、「複合多角形」に分類されます。
正七角形の場合は2種の星形ができます。一つは正七角形の2つ先の頂点をたどったように見え、もう一つは3つ先の頂点をたどったように見えます。そこで、前者を正7/2角形、後者を正7/3角形と呼ぶと後々計算に便利です。星形正五角形は正5/2角形になります。
● 正多面体の星形
正四面体の面を延ばしても、元の正四面体以外に区切られた空間はできません。立方体でも同様です。
正八面体の場合は、面を延長すると、各面の外側に閉じた空間ができます。この閉じた空間は正四面体です。元の正八面体と合わせて、立体の星形になります。正八面体の星形はこれしかなく、ケプラーの星形8面体と呼ばれています。
しかし、よく見るとこの星形は2つの正四面体の複合多面体になっています。たいへん美しい形をしているので惜しいのですが、それでもケプラーの星形8面体は星形正多面体には分類されません。
正十二面体からは、3つの星形正多面体が導出されます。
▼ 小星形12面体 ―正十二面体の第一の星形―
正十二面体の各面に正五角錐をかぶせたような立体です。
▼ 大12面体 ―正十二面体の第二の星形―
小星形12面体の頂点を結んで、くさび形の四面体で埋めたような立体です。
▼ 大星形12面体 ―正十二面体の最後の星形―
大12面体のくぼみに、とげを埋め込んだような立体です。
上述の記載で「…ような」と歯切れが悪いのは、これらは星形多角形の立体版で、均一な正多角形で囲まれた立体だからです。小星形十二面体は正5/2角形12枚で、大十二面体は正五角形12枚で、大星形12面体は正5/2角形12枚で覆われた「立体」です。石膏やプラスチック製の立体を作っても、中心部が何重かになっている様子は想像力を働かすしかありません。
正二十面体の星形は非常に複雑で、数え上げは難航を極めたようです。結局、58の星形が確定しました。その中で、星形正多面体が一つだけ存在します。
▼ 大20面体
20枚の正三角形が辺でつながった図形、ととらえると、空間内で正三角形が交わったオブジェです。この見方は、別のプログラムpolyhedで紹介している、一様多面体の考え方です。
別の見方としては、正二十面体の辺の延長で区切られた、中身が均一に詰まった立体図形の一つです。本プログラムicocelでいう星形はこれです。
最後の見方は、正三角形20枚で覆われた、中心部が何重かに折り重なった立体です。星形正多面体、という場合はこれでしょう。
以上、三次元の星形正多面体は4つ存在します。これら4つの立体は、ケプラー・ポアンソの立体と呼ばれています。
2002年7月20日 岡田好一