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元ネタについて

 いちおう参考文献の紹介である。本プログラムpolyhedに関係する書籍を私の本棚から集めてみた。いくつかの本は、夏休みの宿題のネタなどに使えるのではないかと思う。

● たぶん、中学の先生向け指導参考書
 私がはじめてアルキメデスの立体を知ったのは、中学校の図書館で数学の指導に関する分厚い本を眺めていた時だった、と記憶している。もちろん、正多面体はいつの間にかどこからか知っていたので、周囲が多種の正多角形で囲まれた立体の図は非常に新鮮に映ったと記憶している。その本にはアルキメデスの立体が「準正多面体」という名で載っていたので、今でも「半正多面体」と言われると、一瞬戸惑ってしまう。

● 多面体と建築。宮崎興二。彰国社、1979。
 不思議で楽しい本だと思った。著者紹介を見ると、おやおや、すぐ身近におられるではないか、と教室を尋ねてみることにした。当時、神戸大学教養部図学教室の宮崎先生の部屋は、その本に載っているような多面体の模型で満ち溢れていた。学生が絶えず出入りしており、学生が描いたという幾何学図形で構成された不思議な植物の写生を見せていただいたりした。
 多面体入門には最適な本だと思う。しかし、今では図書館でしか見られないと思う。

● 多面体の模型、その作り方と鑑賞。MJ Wenninger。教育出版、1979。
 日本の多面体愛好者が必ず読んでいる書籍、だと思う。正多面体(プラトンの立体)、半正多面体(アルキメデスの立体)、ケプラー・ポアンソの星形正多面体、正八面体の星形、正二十面体の星形、立方八面体の星形、十二・二十面体の星形、そして一様多面体の紙による表面模型の作り方が、これでもかとしつこく、詳しく述べられている。星形は完全ではないが、一様多面体は完全なリストである。理論面でも簡潔で十分に述べられている。polyhed開発の遠因である。

● かたちと空間、多次元世界の軌跡。宮崎興二。朝倉書店、1983。
 100ページほどの簡潔な本だが、四次元までの多面体の大百科といった趣向のカラー本で、愛好家からの評価は高い。宮崎先生はどちらかというと理論家ではないので、この本にも数式はほとんど出てこない。それにもかかわらず、polyhedの座標計算には、この本を参考にさせていただいた。実は、私が作った絵も出ていたりする。

● HSM Coxeter. Regular Polytopes. Dover, 1973. ISBN 0-486-61480-8
 英語の本だが、ここに入れざるを得ない。シュワルツ三角の完全なリストはここでしか手に入らなかった。密度が濃く難解。ただし、以下にあげる一松信先生の二冊の著書の一部が、この本の抜粋の訳ではないかと思えるほどなので、雰囲気なら日本語でも味わえる。

● 多面体。PR Cromwell。シュプリンガー・フェアラーク東京、2001。ISBN 4-431-70925-8
 polyhed開発の直接の動機になった本。三次元多面体大百科である。歴史的考察が楽しい。
 372〜374ページの記述から抜粋引用させていただくと、
 空間内の点の位置と対称群変換という情報が与えられると、そこから多面体を構成することができる。(中略)…(もし読者がプログラミングに精通しており、しかも強力なマシンがあれば、)コンピュータに描かせてみると多面体の変化とそれらの相互関係がよく分かるであろう。インタラクティブなグラフィックを使うと多面体の移り変わりを直接理解するのに大変役立つ。マウスを使って三角形内で基点を動かしてみると、それに応じて多面体の形が変わる。そうすることで実際に多面体の変形が体験できる。
 「マウスを使って」という点は違うのだが、polyhedは多分、この著者の言うプログラムの動きに近いのであろう。ただし、381ページの群Th(四面体的対称性の一つ)は実現していない。とりあえず一様多面体の発見にはつながらない、と私が判断したからである。しかし、polyhedにおける「対称」「捩れ」とは異なる動作なので、何か面白い発見があるかもしれない。
 三角外でも球面の任意の位置に移動できるとか、さまざまなシュワルツ三角で試せるなどは、polyhedならではのはずである。そのアイデアは「多面体の模型」に記述されていたもので、polyhedと「多面体」の対称群変換プログラムは、似て非なるものだと私は考えている。
 ちなみに「強力なマシン」は、今やパソコンでも実現できる。ただし、2002年7月現在では、まだマシンの構成を選ぶ必要がある。ごくあっさり言うと、今でも「強力なOpenGLアクセラレータのあるパソコン」であれば、文句なしである。

● 多面体の数理とグラフィックス、ザルカラー多面体とMathematica。関口次郎。牧野書店、1996。
 24ページからの「一様多面体の構成」の章は、大いに参考にさせていただいた。シュワルツ三角から一様多面体を構成すると、いくつか工夫を要する点があるのだ。その点については、polyhed付属のReadMe.txtとReadMeD.txtで簡単に述べた。

◆ 以下は直接の参考文献ではないが、polyhedに関連していると思える書籍である。

● 数理地図投影法。丸山隆玄。槙書店、数学選書、1970。
 特にこの本でなければならない、ということでもないが、地図ウィンドウの図法に関して参考にさせていただいた。

● 正多面体を解く。一松信。東海大学出版会、1983。
● 高次元の正多面体。一松信。日本評論社、1983。
 日本では貴重な多面体に関する理論の本。前者は最近改訂版が出た。

● 不思議おもしろ、幾何学辞典。D Wells。朝倉書店、2002。ISBN 4-254-11089-8
 読めば感動の数学愛好家による幾何学解説書である。もちろん、一様多面体に関するまじめな記述もある。

● 多面体の折り紙。川村みゆき。日本評論社、1995。ISBN 4-535-78224-5
 ウェニンガーの「多面体の模型」に唯一日本から対抗しうると思える本。

2002年7月26日 岡田好一