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塗り分けの大切さ

No.110 小変形20・20・12面体

 polyhedはシュワルツ三角を基にして多面体を作成するため、機械による系統的な色の塗り分けが可能です。つまり、各シュワルツ三角の3つの頂点に対応する多角形が、それぞれ赤(マゼンタ)、黄、青(シアン)で彩色されます(色の変更は可能)。
 その結果、たとえば上図の変形一様多面体(No.110)は正三角形を一色で彩色すると左右対称の立体ですが、polyhedでは正しく捩れて見えます。最後の変形一様多面体、No.119も同じ多角形を同色で塗ってしまうと左右対称に見えてしまいます。polyhedではvortexアルゴリズムが正しく左右を塗り分けています。
 つまり、彩色により対称性が異なって見えてしまいます。塗り分けにより、斜方立方八面体(No.13)や変形十二面体(No.18)のような簡単な図形でも、新しい表情を見せてくれます。

N0.22 大星形十二面体

 polyhedではOpenGLの照明効果により面が識別されるので、プラトンの立体やケプラー・ポアンソの立体の一色表示はそのままにしています。たとえば大星形十二面体(No.22)はpolyhedでは黄金の置物のように見えます。形だけでなく、色によって各面が同一の由来を持っていることが示されます。

 一様多面体の多角形には表裏があります。シュワルツ三角を頂点周りに折り返すと多角形ができますから、その頂点の方向を表としています。表裏の色は変えていないのですが、OpenGLの照明特性により裏表の識別が可能です。polyhedでは手前からの照明に比べて、立体の裏からの照明の輝度を半分弱にしています。そのため、多角形の裏が見えている場合は面が暗くなります。いくつかの立体で表面に近い面の色が濃く見える理由で、mapの表示からはシュワルツ三角の頂点から半周以上離れている様子が読み取れるはずです。(polyhed v1.4以上)
 変形三角形は辺で接する3つの多角形の順序で裏表を決めています。変形立方体や変形十二面体では外側が表で、矢印キーで縦横に変形させても表裏は保存されます。矢印キーでmapを操作し、対称点の正三角点にカーソルを合わせると、立体表面がみごとに裏返ります。
 No.119多面体は特別で、vortexアルゴリズムが面の向きを保存する特性をそのまま利用しています。偶然ですが、平面を共有する変形四角形が裏表で識別可能です。断面機能を使うと分かりやすいと思います。

No.67 四面半六面体

 多面体に詳しい方なら、No.67の四面半六面体は「裏表の無い一様多面体」として有名ではないか、と言われるかもしれません。たしかにこの多面体はメビウスの輪と同様に表面に沿ってたどると裏面に到達可能なので、その意味での裏表はありません。一方、シュワルツの三角形は表裏がはっきりしています。私もpolyhedを作成するまでは事態がよく分からず、「あまり考えたくない」状態でした。
 polyhedで四面半六面体を表示させ、矢印キーを少し操作してみると分かります。なんと、すべての面は二重になっていて、裏の点、と思っていた点は「他の面の表」だったのです。3種の多角形は互いに絡んでいるので、これ以上言及するにはさらに洞察が必要ですが、シュワルツ三角との一見した矛盾の理由は、おおざっぱには二重性で説明可能と思います。四面半六面体のような、ある多角形の頂点が半球の縁に乗っているような多面体(つまり立体の中心を通る多角形のある多面体)には共通した特性があるので、機会があればまとめてみたいと思います。

 polyhedに無い機能で、何とかしたかったのは透明表示です。面が激しく込み合っている多面体では無力でしょうが、多くの多面体では効果的な表示になりそうです。ただし、一様多面体のように絡んでいる面を透明表示するのは、OpenGLではかなり苦労しそうです。別の言い訳としては、多くの人が期待するクリスタル表示ではなく、あくまでステンドグラスのような光の屈折がない表示になります。一様多面体ならステンドグラスでもいいのですが、ケプラー・ポアンソ立体などは、ぜひ中心部が多重になっている様子を表現したいものです。

2002年8月2日 岡田好一