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電気電子分野専用電卓

2003年1月7日 19:47:19

 仕事と趣味の関係で、関数電卓には昔から関心がある。最初に手にした関数電卓は、たしかカシオの「fx-1000」という型番で、単純な関数電卓であったが、当時は感激した記憶がある。
 それ以来、電卓マニア、というほどではないが、関数電卓はたくさん買った。特にプログラマブル電卓は、それぞれに非常に個性があって面白い。

● カシオ fx-61F

 そんな中でも、異色なのが「電機電子分野専用電卓」の、カシオ fx-61Fである。
 どこが特別なのかは、見れば一目で分かる。キートップに電子部品のコイルやコンデンサの記号があしらってあるのだ。
 この電卓、ずいぶん昔から売られていたが、やや高価(定価\6,900)に思えたので、つい最近まで購入を控えていた。しかし、ついに、とあるきっかけで衝動買いしてしまったのである。

 コイルキーとコンデンサキーは、インピーダンス(交流の抵抗)計算に用いる。複素数計算のできる関数電卓なら、虚数キーが目立つのだが、fx-61Fでは、周波数をあらかじめ設定しておけば、インピーダンスとして適切な複素数値が計算され、入力される。
 買ってから知ったのは、並列回路キーである。[]の表示で、+や×と同様の2項演算のキーであって、(a×b)/(a+b)を(複素数でも)計算する。応用として、後で項目数を掛ければ、調和平均値が算出できる。

 あとは、バランスの取れた通常の関数電卓である。薄い印象がするのは、手帳型ケースに入っているからで、同社の代表的な関数電卓であるfx-992sとほぼ同じ大きさである。今では珍しい、関数ボタンが直ちに演算する、いわゆるTIタイプ(Texas Instruments社の関数電卓にちなむ)のキー動作である。7つのメモリがある。

● プログラム機能

 fx-61Fはシリーズ物のひとつのようで、通常のキートップを持つ同様の姿の関数電卓が、あと2機種ある。仕様も似通っていて、メモリが7つ、30ステップ程度のプログラミングができる。
 fx-61Fの場合、プログラム数は1つだけである。ステップ数も30、と少ないので、ワンパターンのキー手順を単純に繰り返すのが主な目的であろう。

 ところが、単純に話は終わらない。判別とループ機能があるからである。
 ループ機能は、無条件で先頭のステップに戻す命令である。判定機能は、現在の数値と0または独立メモリーとの内容を比較し、大小によって続行または先頭のステップに戻す命令である。

 単純ループ機能は連続計算で役立つとして、さて、条件リターン命令は実際に役立つのだろうか。マニュアルには最大値を求める手順が書かれている。
 素朴に考えれば、前処理の無い多重ループは書けそうである。前処理は通常は必要であり、最初の一回のみは手操作で電卓に入力すればよいのだが、ループ内で必要ならお手上げである。複数のプログラムが組めて、呼び出せるのなら前処理専用関数などで解決するのだが…。

● コンピュータとの対比

 一方、分岐は無いが、判定のある「コンピュータ」というのは、あることはある(例: Motorola MC14500B)。その場合、条件によって以下の命令を(特別の命令が出るまで)無効にしてしまう、という荒技を用いる。多重分岐と同じことができることは、容易に想像可能だろう。その「コンピュータ」では最後の命令が終了すると先頭に戻るので、多重ループも何とかできそうだ。

 このfx-61Fプログラム電卓には配列や間接命令は無い。四捨五入機能はあるが整数化演算の代わりには使いづらいので、数値の各桁を配列代わりに使用するのも難しい。また、プログラムのエディタ機能は一切無い。であるから、C言語のようなプログラム言語から見ると、ずいぶんと不自由である。
 しかしそれでも、判別とループ機能により、ある程度自動計算と呼べるものができそうであり、数値計算では結構遊べそうである。唯一残念なのは、何かゲームを組むのは至難であろう、ということである。

 一般にステップ数の少ないプログラム電卓には超個性的ともいえる工夫が払われていて、fx-61Fも十分楽しめる内容になっている。暇があれは、どこまでプログラミングを主目的としたプログラム電卓に迫れるのか、試してみたい。
 もちろん、実用関数電卓としては満足な出来なので、仕事の現場で使っている。