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太陽系シミュレータ

2004年2月8日 17:26:42

 書評である。
  SSSP編。太陽系シミュレータ―時空を超えた惑星間飛行、プルーバックス BC01。講談社 2003、ISBN 4-06-274401-5

 MacとWindowsで動く、美しい太陽系シミュレータのCD-ROMが付いた新書である。完全版を動作させるためには、かなり高機能のパソコンが必要である。むろん、最新型パソコンを買えば間違いがないが、私の所有する3年前のノートパソコンでは詳細な表示を選択すると動きがぎこちなくなる。昨年購入したノートパソコンでは快適動作している。なお、「表示設定」で陽に設定しないと詳細な表示はなされない(9等星くらいまで表示させると画面がにぎやかななる)。また、CD-ROMから起動すると、常に粗い表示となる。
 元々は2000年に発行の「太陽系大紀行」という名のソフトのようで、ブルーバックス版は第二版である。観客に見せるための工夫がされていると思ったら、原型は劇場公演用のソフトであったようである。

● オートプレイ

 まずは「オートプレイ」を動作させてみると良いと思う。本ソフトの概要が分かる。
 太陽系シミュレータというからには、任意の時点での任意の方向からの太陽系が計算できる、ということなのだが、太陽系はあまりにまばらであるので、太陽や惑星を拡大表示している。惑星の軌道は緑の線で表示される。天球には恒星と天の川が表示されていて、恒星名や星座を表示させることもできる。主な小惑星、彗星、エッジワース・カイパーベルト天体も軌道とともに表示させることができる。
 各惑星・衛星に着陸し、空を見上げることができる。また、日食と月食のシミュレーションができる。

 淡々と書いてしまったが、サービス精神あふれるショー形式になっているので、なかなか楽しい。「オートプレイ」は自動で進み、最後まで行くと最初から繰り返す。

● 太陽系紀行

 本CD-ROMの見せ場である。14天体への紀行が用意されている。プラネタリウムのショーを見ているようだ。
 その14天体とは、太陽、水星、金星、月、地球、火星、小惑星、木星、土星、天王星、海王星、冥王星、彗星・流星、そして太陽系全体である。
 火星や木星などの詳しい写真には思わず引きつけられてしまう。通常のテレビに比べてずっと解像度が良いためと思われる。できれば高性能パソコンと大画面で見たいところだ。

● 88星座

 天球上の全星座の解説と、9つの基礎知識の解説が入っている。個々の解説はコンパクトだが、数が多いので見ごたえがある。
 太陽系シミュレータの一部なので、ショートカットキーが効く。いたずらに近い操作も可能である。

● 太陽系シミュレータ

 ものすごく良くできたシミュレータ。あまりに盛りだくさんなので、最初は解説書を片手に操縦することになるだろう。「手引」機能がよくてきていて、単なるヘルプではなく、シミュレータが解説に合わせて動くようになっている。
 惑星や衛星の初期配置は本日この時のもので、時間の指定だけでなく、時間を早く進めたり時間を逆転させたりできる。天体の任意の地点に着陸できるので、たとえば火星表面から見るとフォボスはあまりに公転周期が短いので西から上って東に沈むのだが、その再現ができる。
 そこまで行かなくても、たとえば金星と地球の公転面は意外に角度があるとか、小惑星の立体的な軌道などはじめて見るとか、観察するといろんな発見があって、これがシミュレータの醍醐味でもある。

● その他

 細部までよくできていて、しかも経済的なので天文に少しでも関心のある方にはお勧めである。学術的な興味も満たしてくれるし、エンターテイメントソフトとしても良くできている。作者の熱意には頭が下がる。ということなので、多少気が引けるのだが、気づいた点も挙げておく。

 月は日食モードでしか出現しない。太陽系モードでは9つの惑星のみだ。その結果、地球の地表に降りたっても、月と他の惑星は同時には表示できない。通常のプラネタリウムソフトでは、もちろん同時表示である(何か技があるのなら申し訳ないが)。その結果、たとえば太陽系モードで地球付近を拡大しても、相棒の月がいないので、なんとなく寂しい。
 現実の地球の月の反射はかなりおもしろい。歌に「盆のような月」という表現があるが、これは錯覚ではなく、月の反射の特性から平面的に見えるのである(と記憶している)。シミュレータではボールのような月に見える。地球には雲がないし、火星の表面にももやなどがない。惑星の裏側もかなり明るく見える。このあたりは、やりすぎてもかえって本質が分からなくなるので、長所なのか短所なのか分かりづらいところだ。
 惑星の軌道が見る角度によっては折れ線のように見える。理屈ではそうならないから、極端な角度から見た場合の計算精度の問題であろう。