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MSXマガジン永久保存版3―1チップMSX

2005年5月24日 21:24:16

 どうなることかと思っていた、アスキーの「MSXマガジン永久保存版3」が無事発売された。フォローアップも素早く、気合の入っていることが分かる。
 まずは祝福である。関係者には頭が下がる。個人的には8bit時代には他機種の所有者であったから、ものすごくうらやましい。もっとも、MSX2には職場で少なからず使用経験があるので、まったく他人事でもないのだが…。
 公式エミュレータに関しては、これで完成、であろう。これからは「1チップMSX」に重点を移すようである。後述するように、この方向性は正しいと思えるので、大切に育てられることを祈っている。

● 収録ゲーム

 もちろん今回も、往年の優良ゲームが目玉である。といっても今回、私の知っているのは、アレスタ(コンパイル)、プリンセスメーカー(GAINAX/MICRO CABIN)くらいで、どちらも名前だけ、しかも苦手のジャンルである。それにしても、毎回よく集めるものだと感心する。それだけ、MSXには名作ゲームがこれでもか、とあったことになる。

● MSX Player

 公式エミュレータのMSX PlayerはWindowsで直接動作するものになった。MSXturboRモードとMSX2+モードが用意されている。turboRでは高速すぎるプログラムのためにMSX2+版も用意されたようだ。
 分かっている範囲では、両者とも、漢字ROM(16ドット、単漢字変換付き)、SCC音源とFM音源が付いている。MSX BASIC 4.0/3.0とMSX-DOS 2.30が使える。
 MuSICAと呼ばれる音楽エディタが同梱されていて、SCC音源(ウェーブメモリ)利用のデモシーケンスがびっくりするほど素敵な音を出す。
 MSX Playerの仮想フロッピーディスクをWindows上で利用しやすくするフリーソフトがCD-ROMに同梱されている。
 純正のMSX-Cが付いている。このC言語で開発されたプログラムは自由に配布できるようだ。開発系では今回のハイライトだろう。少しだけ使ってみたので、後述する。
 そんなことからか、永久保存版2のturboRエミュレータに付いていたBASICコンパイラ「MSXべーしっ君」は入っていない。
 他に開発系として、シンセサウルスv3.0、R-SYSTEM 3.4(RPGツール)、ゲームランドスペシャルが入っている。

● MSX-C

 8bit機でC言語によるセルフ開発とは夢のような話だが、現実である。
 CD-ROMから開発系をインストールすると、準備完了となる。他にすることはなく、いきなりC言語でプログラミングが楽しめる。
 エディタはKID/AKIDというのが用意されているので、最低限このエディタのマニュアルには目を通しておく必要がある。長大なプログラミングにはWindowsのファイルを送り込んだ方が良さそうだが、軽快なエディタなので後々まで役に立つだろう。

 C言語のプログラムができたら、
  cc hello
 などとコマンドを打つだけである。本当にこれだけ、まるでUNIXである。ただし、CPU速度は3倍速等にしないと、コンパイルにはかなり時間がかかる。当時のC言語の文法なので、きわどい書き方をする場合は、マニュアルを参照しないといけない。有名な開発元なので、別の同社のC言語を使った人も多いだろう(私もその一人)。
 ROM化もできるようなので、1チップMSXとあわせて考えると、重大な出来事と思う。

▼ MSX-Cは役立つか
 もちろん、MSX自身の動作が目的の場合は大いに役立つ。
 しかし、改めてC言語として見ると、いくつか考えねばなるまい。
 まず、C言語自体の学習としては、いまさら、である。というのも、Windows等で有料/無料の良質の処理系があるし、その方が32/64bitマシンであるから、根性が曲がってしまいがちなアクロバットプログラミングも不要だからである。
 たとえば、適当な線を描くだけなら超豪華なMSX-BASICがあるわけだし、WindowsのC言語でもプログラミングは比較的容易である。プログラミングの本質論からいうと、BASICで何がいけませんか?、ということになる。
 とすると、主体はMSXのためのプログラミングになる。ここはひとつMSX自身に頑張ってもらわなくてはならない。

● 資料

 書籍にBIOS/ワークエリア、CD-ROMにVDP/VRAM、FM BIOS/OPLLの資料がある。2+やturboR関連の資料は貴重と思う(CPUであるR800自体の解説はあまり見ないが…)。
 MSX BASICやMSX-DOSの資料は、永久保存版1,2にある。

● 1チップMSX

 FPGAと呼ばれるプログラム可能な論理ICで作られたMSX1ボードが完成している。アスキーよりその名も「1チップMSX」で発売されるので、予約してしまった。
 エミュレータと同様に、まずはMSXの再現を狙っている。本物の、実売されているMSXが無いことには、話が始まらないのは、良く理解できる。エミュレータではどうしても親OSの「改良」に翻弄されてしまうからだ。まずは、自主独立。MSXがあらゆるしがらみから解放されてはじめて、次の手が打てるようになる。何とか成功してほしい。
 ちなみに、今回の「1チップMSX」は予約が5000台にならないと生産されないそうである。流行のFPGA自体の学習にもなるので、ファンでなくても、もの好きな人は購入するように!

 その「1チップMSX」ホームページ(2005-5-24)によると、仕様はMSX1相当とのこと。
 しかし、中身はめちゃくちゃ充実していて、いきなりメインRAM 256KBとある。現在の標準的なマイコンの256倍もあって、(使えるのならだが(^_^;))完全に持て余してしまいそうである。私の経験からいうと、文字列処理の1プロセスに必要なRAMというのはせいぜい16KBだから、16プロセス同時稼働可能で、ざっと10人の同時使用が可能だろう。ロボットの制御など楽々である。
 度肝抜く機能から順次紹介すると、MSX-DOS2が付属。これはMS-DOSv2相当なので、かつてコンピュータサイエンスをけん引したミニコンに引けを取らない。MSX-BASICv1が付属するので、開発システムとしても充実している部類に入る。
 SD/MMCカードスロット有。もしこれがMSX-DOS2のファイルシステムでハードディスクとして使用できたらデータベースとしての利用も可能で、夢のMSXマシンとなる。もうこれだけで、コアがMSX1かMSX2かはどうでもよい気分になる。
 漢字ROM(相当)付属とのこと。中身が気になるが、通常の漢字表示に問題はなかろう。
 キーボードはDOS/Vの通常のキーボードを流用する。これは賢明な選択である。というのも、名作キーボードに事欠かないからだ。
 あとは、MSXジョイパッドポート、ビデオ端子、音声端子、その他となっている。MSXカートリッジスロットは1個装備(2個ではない)。VGA出力は端子のみのようだ。

 これ以上の詳しい仕様は(この文章記述時には)発表されていない。以下、推理が混ざる。
 CPUはZ80A相当。驚くことに、かなりの加速が可能かもしれない、とのことである。10倍速が可能なら、趣味をはるかに超えた強力マシンとなってしまう。かつてDOS/Vでは50MHzの486CPU搭載機に「これ以上高機能のCPUは必要ないので、アップグレードサービスはありません」との意味のことが書いてあったほどである。
 VDPはTMS9918相当。多少癖があるが、とにかくビットマップ表示は可能である。もちろん、漢字表示に困ることはない。サウンドはPSG(AY-3-8910相当)なので、方形波とノイズとなる。こちらも、MSX2/2+級までの発展が可能とのことで、そうなったら何も言うことはない。(FM音源は使用可能らしい。2005-7-18追記)

▼ FPGAから見たMSX
 というのが、とあるMSXファンサイトに話題として載っていた。私はFPGA使いではない。しかし、想像するに、CPUコアなる概念があるのだから、MSXコアがあっても良いと思う。標準化は歓迎なはずだから、事の重大性に気付くのが誰で、いつになるか、MSXファンはにやにやしながら待っていれば良い、と思う。

(続く)