私はつい最近まで、就職というのは夢をあきらめることだと思っていました。私の親がふたりとも夢をあきらめて就職したということの影響が大きかったのでしょう。 夢なんて所詮子供の感情。生きてゆくためにはいやいや働かなけれ ばならない。両親の顔にはそんな感情がありありと現れていました。いつだったか野球選手のイチローが活躍して多額の年棒を稼ぐようになって父親が仕事を辞めたという話を聞き、両親は「当たり前だ」と口を揃えていました。しかし私は、少々疑問符をつけずにいられませんでした。 そんな矢先、話題になっている「鉄道員(ぽっぽや)」という映画を見ました。 鉄道員を生業にして、同僚からの路線廃止後の仕事の誘いを断り、路線廃止直前に死ぬという主人公の生きざまに涙が止まりませんでした。 好きなことを持って立派な社会人として生きるというのは夢物語じゃない。そんなことを発信しているように、私には聞こえたのです。 もちろん、社会人になって夢を持つのが大変だということはわかっています。成功するとは限らないからです。 「人生は二番目で生きろ」などという言葉もあるほどです。 この言葉を、嘘とは言いません。一番好きなことを趣味にしてのび のびと生きられる人は、そのほうがいいかもしれません。 しかし、こういう格言ほど人によって差のあるものもありません。 本当は好きなことで生きたかった。しかし何かの原因で、あるいは失敗することが怖くて好きなことを選ばず、愚痴ばかり言って人生をつまらなくしている人を私は何人も知っています。まあ、自分の人生だけならいいですが、他人を引きずり込むように嫌味など言ったりする人もいます。 たった一度の人生です。自分の願いどおりに生きたいじゃないですか。もちろん、その通りにいくことはまれです。でもだからといって最初からあきらめてしまう必要はありません。やってみなければわからないですよ。 一番好きなことで生きてゆきたいなら、それに向かって最大限努力することは人生を輝かせると私は思います。もちろんそれに伴って、苦労したり悩んだりすることは増えます。傷つくこともあると思い ます。けど、それをくぐり抜けることで人生は輝きます。夢を持つことは、人間の特権なのですから。 |
BGM:夢路より/フォスター