TWO-OVER-ONE
by Eric Rodwell
よくある質問
  1. 2/1 システムと第 4 スート・フォーシング
     付録:第 4 スート・フォーシング
  2. オープナーの リビッドが保証する切り札枚数
  3. オープナーが 3 の代で新しいスートをビッドするとき
  4. 2/1 と強いジャンプシフト
  5. バーゲン・レイズと 2/1
  6. ジャンプシフトをゲーム・フォーシングに取り決める (読者提案)
     付録:バーゲン・メジャースート・レイズ
  以下の質問には,2/1 ゲーム・フォーシングの手法によりお答えしますが,その考え方の多くは,標準のビッド手法にも応用できます。
質問 1

第4スートを FSS (第 4 スート・フォーシング) の意味に使う必要が無いのでしたら,第4スートのビッドは,どういう意味を持つのですか ?
 この講座の始めのあたりで FSS が不要だと説明しましたが,2/1 GF システムを使っている場合でも,1/1 応答ならば,標準システムの FSS を使います。
 それでは レスポンダの初回の応答が 2/1 GF ビッドの場合は,どうでしょうか。その場合に,第 4 スートのビッドをゲーム・フォーシングとするのは,重複です。なぜなら,ゲームがあることを既に確認済みだからです。したがって,レスポンダが第 4 スートをビッドするのは,次の 2 通りのどちらかを意味します。
2/1 の後の第 4 スート

 初回に 2/1 ビッドしたレスポンダが第 4 スートをビッドするのは,次のどちらかを意味する:
    レスポンダには,他に適当なビッドが無い。
    レスポンダは,適正な 2 スーターの手を持つ。
このどちらであるかは,レスポンダの次回のビッドにより判明する。

East
Q 2
Q 10 5
6 4 2
A K Q 7 3
WestEast
12
2?
 レスポンダ East が右の手を持っていて,オークションがこのように始まった場合を考えましょう。
 East の初回のビッド 2 は,ゲームを請け合います。しかし, West の 2 回目のビッドを聞いても,East は どのゲームなのか決められません。スペード,クラブ,あるいは ノートランプがあるかも知れません。
 East は,ここで 2 をビッドしたくありません。なぜなら,切り札 7 枚になってしまうからです。同じ理由で,3 もビッドしたくありません。また,5 枚のクラブで 3 をビッドするのは 嫌です。さらにまた,この弱いダイヤモンドで 3NT をビッドする積もりはありません。
 そこで レスポンダは,観測風船 3をポンと打ち上げて
     「他にはビッドしようがありません」
と伝えます。オープナーのその次のビッドが,最良の着地点を見つけるのに役立つ筈です。このオークションが この先どう進むかを見てみましょう。
(1)  West
A K 8 4 3
K J 8 6 2
J 3
4
    
East
Q 2
Q 10 5
6 4 2
A K Q 7 3
    
WestEast
12
23
34
Pass
 West が このように ハートを 2 回ビッドすると,East は 自分のすべきことを直ちに悟ります。
(2)  West
K J 8 5 4 3
A K 6 2
J 3
4
    
East
Q 2
Q 10 5
6 4 2
A K Q 7 3
    
WestEast
12
23
34
Pass
 ここでは,West が長いスペードを示すので,East は喜んでゲームに上げます。
(3)  West
A 8 5 4 3
A K 6 2
3
J 5 4
    
East
Q 2
Q 10 5
6 4 2
A K Q 7 3
    
WestEast
12
23
45
Pass
 ここでは West が をサポートして,やはり最良のコントラクトに達します。
(4)  West
K 8 5 4 3
A K 6 2
K 3
J 4
    
East
Q 2
Q 10 5
6 4 2
A K Q 7 3
    
WestEast
12
23
3NTPass
 第 4 スート (この場合は ) にストッパがあれば,オープナーは特段の特徴が無い手では,ノートランプをビッドします。多くの場合,これは まさに レスポンダが期待していることです。なぜなら,もしも第 4 スートに何か持っていれば,レスポンダは観測風船を上げる必要は無く,自分からノートランプをビッドできます。たとえば:
(5)  West
A J 5 4 3
A K 6 2
6 3
J 4
    
  East
6 2
10 5
K Q 4 2
A K Q 7 3
    
WestEast
12
22NT
3NTPass
このように,ビッドされていないスートにストッパがあれば,第 4 スートの代りにノートランプをビッドできます。この程度の並みのダイヤモンドでは ([注]次のハンドと比較), 自然なスートとして 3 をビッドするだけの値打ちはありません。オープナーが長いスペードとハートを示したので,ノートランプが おそらく最善です。
 また,3NT には不適当な 2 スーターの手を持っていれば,レスポンダは次回にその状況を明らかにします。たとえば:
(6)  West
A 8 5 4 3
A J 6 2
K Q 5
4
    
East
2
5
A J 10 7 3
A K J 8 5 3
    
WestEast
12
23
3NT4
6Pass
 West は,East の第4スート・ビッド 3 が観測風船だと仮定して,3NT をビッドすることにより,ダイヤモンドのストッパを示します。
 そこで East は,もう 1 回ダイヤモンドをビッドして,2 スーターの手であることを伝えます。East のこの形に向かい合って,West は無駄の無い強さを持っているので,スラムを狙うでしょう。キュービッドもブラックウッドも使えますが,スラムへ一気に跳んでも 良いコントラクトになります。
 ここまでの例では,FSS を使ってコントラクトをうまく決めることができました。
ところが次の例では,切り札が なかなか 決まらず,ストッパが無いため 3NT もできないことが分かり,5-2 のメジャースートに緊急避難します。
West
A Q J 5 2
10 6
K Q 6 3
Q 3
    
East
K 3
J 2
7 5 2
A K J 7 5 2
    
 
 
 
FSS→
 
WestEast
12
23
33
4Pass
 ここでは,オープナーが FSS を使い,レスポンダに ハートのストッパを訊ねます。 East は ハートが止まらないことを知って,スペードを プリファー します。

質問 2

2/1 GF 応答に対して,オープナーが最初のスートをもう一度ビッドするのは, 6 枚以上を保証しますか ?

 これは,ブリッジ理論で議論が分かれるところです。私自身は,2/1 を使い始めた頃, ビッドされていないスートにストッパが無ければ,ノートランプをビッドしようとはしませんでした。つまり,ときには 5 枚で リビッドしていました。
 しかし,その後 経験を積んでから,オープナーが自分のスートを再度ビッドするのは 6 枚を約束する というのが良いやり方だと確信するようなりました。今では, ビッドされていない 1 スートまたは 2 スートにストッパが無くても,気楽に 2NT をビッドしています。おまけに,私のオポさんたちも この流儀に乗り換えました。 そこで,私のお勧めは:

2/1 の後のオープナーのビッド

オープナーが自分のスートを再度ビッドするのは,
6 枚を保証する。
ということです。
West
J 8 7 6 5 2
Q 4
Q 3
A K 9
    
East
Q 10
K 5 2
A K 9 5 2
8 6 2
    
WestEast
12
24
Pass
 West が自分のスートを再度ビッドするのは,良いスートを保証するものではありません。単に 6 枚以上であることを示して,8 枚カードのフィットを見つけやすくする目的です。
West
A K J 7 5
10 6 3
K 3
J 7 5
    
East
Q 10
A 5 2
A Q 9 5 2
8 6 2
    
WestEast
12
2NT3NT
Pass
 West はビッドされていない 2 スート (,) にストッパを持っていません。しかし 私の考えでは,5 枚のスペードをもう一度ビッドするよりは,2NT がこの手をよく記述します。実際,3NT は優れたコントラクトです。オープニング・リードがクラブ以外なら,頭から 9トリック取れます。クラブが打ち出されたとしても,4-3 の分かれが多いし (62%),5-2 とか 6-1 の分かれならブロッキングが起こることもあり得ます。
 もしも上のディールで West が 2NT ではなしに 2をビッドすると,4コントラクトに落ち着くでしょうが,ダイヤモンドの分かれがぴったり 3-3 でなければ,ダウンします。
West
K 2
A J 9 7 5 3
A Q 8 2
4
WestEast
12
?
ただし,重要な点として,オープナーが第 2 スートをビッドした場合,第 1 スートに 6 枚を否定しては いません。たとえば,West が左の手を持っていて,オークションがこのように始まったとします。次に West が 2 をビッドするのは,少なくとも 5 枚のハートと 4 枚のダイヤモンドを示します。
 この場合には,単に 2 をビッドして 6 枚を知らせるよりも, 2 が良いビッドです。
質問 3

オープナーが 3 の代で新しいスートをビッドするには,何点必要ですか ?
 たとえば,こんな場合です。
West (オープナー)East (レスポンダ)
1 2
3
 West の 3 は,ビッド階梯 (Bidding Ladder) の余地を多量に消費します。
しかし,どこで コントラクトをプレイするかは未だ決まっていません。おまけに,どの代 (ゲーム,スラム) かも未定です。ここで 3 をビッドしてしまうと,レスポンダのクラブが十分 強い場合を除いて,3NT 未満でストッパを互いに探す余地は殆どありません。
 したがって,この質問への基本的な原則は:
オープナーの 3 の代での新しいスート

オープナーが 3 の代で新しいスートをビッドするのは,
次のどちらかを示す。
   余分の強さ (Extra Strength)
   余分の形 (Extra Distribution)
(1)  West
A K 10 6 4
7
A K J 5
K 9 2
    
East
J 5
A K J 4 2
Q 7 4
J 6 3
    
WestEast
12
33
3NTPass
 West は,5 枚の と 18 HCP + 1 LP = 19 pts を持つので,East の 2 に対して をビッドできる余分の強さが十分にあります。この 3 に対して,East は ちょっと困ります。こんなに弱いクラブでは 3NT をビッドできません。そこで, オープナーの第 1 スートをプリファーします。すると,West は,自分の手を記述し尽くしたので,安心して 3NT をビッドできます。
(2)  West
5
K Q 8 6 2
6 4
A Q J 4 3
    
East
J 6 3
5
A K Q 7 2
K 10 6 2
    
WestEast
12
34
5Pass
 今度は West の HCP は,たったの 12 です。しかし,5 枚の 2 スートという良い形です。この手では,2に対して第 2 スートを示すのが特に大切です (さもないと,このクラブが埋もれてしまう)。これを受けて,レスポンダがクラブをサポートするので,最良のコントラクトに到達できます。
 オープナーの手がもっと強ければ,4 に続いて キュービッドやブラックウッドも使えて,スラムに行けるかも知れません。
 余分の強さも余分の形も どちらも無ければ,オープナーは 3 の代で新しいスートをビッドする余裕がありません。したがって,アンバランスな手でも,2 回目にノートランプをビッドします。
(3)  West
Q 8 4
A K 8 6 2
6
Q J 4 3
    
East
J 6 3
5
A K Q 7 2
K 10 6 2
    
WestEast
12
2NT3NT
Pass
 5 枚のハートと 12 HCP + 1 LP = 13 pts という下限の手で,5 枚の第 2 スートがありません。2 を受けて,West は 2NT で決着をつけます。これに対し East も,2/1 応答をする下限の手なので,直ちにゲームに上げます。
 クラブについては どちらも触れていませんが,でも,この場合は それが良いのです。もしも West がクラブをビッドしてしまうと (3),East がそれを上げます。その結果 最良のコントラクト 3NT を跳び越えて,5 をプレイすることになりますが,頭から 3 トリック (AK, A) 取られてダウンします。
 ただし,East が余分の強さを持つ場合には,クラブが埋もれることは無く,5 あるいは 6 さえもが良いコントラクトになります。たとえば:
West
Q 8 4
A K 8 6 2
6
Q J 4 3
    
(4)  East
A J 6
5
A K Q 7 2
K 10 6 2
    
WestEast
12
2NT3
44NT
56
Pass
 East は,この場合,2NT に対してゲームに留まるには強すぎるので,クラブを示します。West がこれを上げて,スラムに突入します。
 オープナーが下限のセミ・バランスハンドを持って,2 回目に 2NT をビッドすると,オークションは 通常 なめらかに進み,最善のコントラクトに達します。
 質問 4: 2/1 GF を使う場合,強いジャンプシフトは必要ですか ?
 レスポンダのジャンプシフトは,必要以上に 一つだけ代の高い新しいスートでのレスポンスです:
West (オープナー)East (レスポンダ)
1 3
 古典的な使い方では,このジャンプシフトは,非常に強い 19+ pts の手とスラムへの 関心を示します。しかし,そんな手は珍しいので,多くのペアは 強いジャンプシフトの基準を 17+ pts に下げています。
K 3
A Q 9 4
A K J 5 4
Q 2

 ジャンプシフトはビッド余地を大量に消費するので,これを使うとどこで コントラクトをプレイするかを決めるのが難しくなります。たとえば,1 オープンに対してレスポンダが右の手を持っているとしましょう。ダイヤモンド 5 枚で 19 HCP + 1 LP = 20 pts の手です。ジャンプシフトできる強さは 確かにあります。したがって,スラムを目指すことになるでしょう。けれども,その出発点として,ジャンプシフト 3 は うまくありません。考えられるコントラクトは, です。もちろん,ノートランプもあります。残されたビッド余地を使って,これらの可能性をすべて調べることができるでしょうか ?
 こういう複雑な手に対しては,ビッド余地を残しておきたい ・・・ これが まさに 2/1 GF 手法の大きな利点です。単に 2 をビッドすれば,多くの余地が残り,それを使って どこで プレイすべきかを解明し,スラムへ行くことができます。
3 にジャンプして,この利点を捨てたくはありません。
  2/1 GF を使うとき,強いジャンプシフトを使うのは 気に入りません。
このビッドの使いみちは,他にもいろいろあります。たとえば:
2/1 でのレスポンダのジャンプシフト
  レスポンダの 3 の代へのジャンプシフトは,自然なビッドであり,
    オープナーをゲームに誘う。
  レスポンダの 2 の代のへジャンプシフトは,弱い (プリエンプト)

誘いのジャンプシフト ( 3 の代 )
 3 の代へのジャンプシフトは,良い 6 枚スートを持つ 9〜11 pts の弱い手を示す。これにより,2/1 では扱いにくい ある種のハンドが扱いやすくなります。
West
Q J 8 5 2
A K 9 5
A 10
J 5
    
East
3
J 8 3
K 3 2
A Q 10 9 4 3
    
(A)WestEast
13
3NTPass
6 枚のクラブと 10 HCP + 2 LP = 12 pts を持つ East は,ゲーム・フォーシング 2 を掛けるには不足です。その代り,3 へ 誘いのジャンプをします。West は,うまいコントラクト 3NT に異議無く進みます。
WestEast
11NT
23?
Pass?
 もしも 弱い直接ジャンプシフト (A) を使うことに取り決めていなければ,オークションは,右のように進むでしょう。ここで,East は 2 回目のビッドで何を選択すべきか困ります。
    パスは悲観的すぎる。
    2NT に見切りをつけて のパートスコアを選ぶとしても,
    3なら,もっと弱い手でも できる。
   おまけに 3 をビッドすれば,West は パスでしょう。
 さらに言うと,3 の代への直接ジャンプシフトを 上のように 誘い (A) の意味に取り決めておけば,レスポンダが弱い手の場合,フォーシング 1NT を使って,最善のパートスコアで止まることができます。
West
Q J 8 5 2
A K 9 5
A 10
J 5
    
East
3
J 8
K 3 2
Q 10 9 7 4 3 2
    
(B)WestEast
11NT
23
Pass
 このオークションで,West は 3 を問題なくパスします。なぜなら レスポンダは,クラブが長い 弱い手を持っているに違いありません。もしも 誘いを掛けられるだけの強さ (A) があれば,初回に 3 をビッドした筈です。

弱いジャンプシフト ( 2 の代 )
 2 の代へのジャンプシフトをフォーシングに取り決めるのは,多少の利点があります。というのは,1 の代の応答がゲーム・フォーシングではないからです。そうは言っても,さきに述べたように,レスポンダが 17+ pts を持つことは稀であり, 仮に持っていたとしても,1 の代から始めてフォーシング・ビッドを続ければ (FSS なども使い) 処置できます。したがって,多くのペアは,2 の代へのジャンプシフトを まともな 6+ 枚スートの弱い手として使っています。
West
8
K Q 6 4
A K Q 10 7
K 9 5
    
East
K J 10 9 7 3
7 3
8 4
7 6 2
    
WestEast
12
Pass
 良い 6 枚のスペードの他に何も無い East は,辛うじて 2 へと弱いジャンプシフトします。West は強い手を持っていますが,パートナーとフィットが無いので,それ以上ビッドする気にはなりません。East-West は良いパートスコアで止まります。
WestEast
11
22
2NT?
 もしもこのペアが弱いジャンプシフトを使っていなければ,オークションはこんなふうになるでしょう:
 最初のレスポンスで East は,そもそもビッドするかどうかの決断を迫られました。しかし,一旦 1 をビッドすると,オープナーの リバース 2 をパスは許されないので,スペードを もう 1 回ビッドします。オープナーはこれより良い手を期待しているので,おそらくビッドを続けるでしょう。このペアは,負のスコアに向かって進んでいるように見えます。
West
5 2
A 9 5
K 8 7
A J 10 8 3
    
East
Q J 9 7 6 4 3
7 4
6 4
Q 6
    
WestEast
12
Pass
 弱いジャンプシフトは,プリエンプトとして有効です。上のような手の組み合わせでは,相手側が 4 を作れそうです。しかし,East が 2 にジャンプすると,それを乗り越えてオークションに参入するのは困難でしょう。

2/1 でのジャンプシフトに関するこれまでの議論は,
読者から新たな質問を呼び起こしました。
質問 5

ロッドウェルさん,
 この質問の前に申し上げると,あなたが 2/1 をよくご存じであること, そしてまた,その使い方をよく教えて下さることについて,私は何の疑いもありません。 つい先だっての Cavendish Pairs での成績は殊に見事なものでした。
                     Tom MacLean
                     Portland, Oregon
 [1] 1 または 1 オープンに対するレスポンダのジャンプ 3 または 3 を自然な誘いとする考え方は,バーゲン・レイズ (Bergen Raise) と矛盾しませんか ? バーゲン・レイズを 2/1 の基本要素と見なす人もいるからです。
 Tom さんが言うのは,次のようなオークションです。
 オープナー →1 Ê
N
W E
S
  Pass 
 レスポンダ →3 Ã
 2/1 システムを使っているとき,レスポンダの 3 には,どんな意味を割り当てるのが良いでしょうか ?
 前回の議論では,一般的な手法として 低いランクの 3 の代へのジャンプシフトを 誘いの意味に使いました。これは,9 ~ 11 pts と良い 6 枚スートを示します。
 ジャンプシフトをこのように使う理由は,1 オープンに対して,レスポンダが 次の 2 種類の手を区別してビッドできるようにするためです:
(1)  10 7 2
5
Q 3
Q J 9 8 7 5 3
    
(2)  10 7 2
5 2
Q 3
A Q J 8 7 3
 左側 (1) は,レスポンスできる ぎりぎりの手であり,2/1 GF のビッド 2 はできません。そこで,フォーシング 1NT から始めます。オープナーが 2 巡目に 2 とか 2 をビッドした場合には (パスして この役立たずのダミーの手を晒すよりは) 3 を選びます。このビッドは,長いスートと弱い手を示し,パートナーにパスしてもらって,3 のプレイを望んでいます。
 右側 (2) も,同様に 2/1 GF ビッドの強さはありませんが,でも ほんの少し足りないだけです。ここで もしも 1NT から始めて,パートナーが 2 とか 2 をビッドした場合,どうすれば 誘いを掛けられるでしょうか ? たとえ 3をビッドしても,パートナーは (1) のような手だと思うでしょう。
 この難局を救うのは,誘いのジャンプシフト 3です。
 ハンド (1) では 1NT を経由しますが,ハンド (2) では 1に対して いきなり ジャンプシフト 3します。こうすれば,どちらの場合にも,オープナーは レスポンダの手を正しく想像できます。
 Tom さんの質問は,上の手法がバーゲン・レイズと相容れないという点です。
バーゲン・レイズは,後の説明の中に書いてあるように,1 または 1 オープンに対するコンベンションです。これを使うと,1 に対するジャンプ応答 3 は人工的なビッドになり,ハート 4 枚と 7〜10 pts (10〜12 pts というのもある) を示します。
 このコンベンションの長所を議論するにあたっての 要 (かなめ) は,ある人たちが考えているのとは違い,バーゲン・レイズは 2/1 システムの不可欠要素では ない ということです。誘いのジャンプシフトも 同様に不可欠要素ではありません。
 2/1 と それ以外とを ごっちゃにしては いけません。
 2/1 GF システムではなしに標準システムを使っていて,バーゲン・レイズを採用するペアもいます。また,2/1 を使うけれども バーゲン・レイズを使わない人もいます。さらには,2/1 と バーゲン・レイズを併用する人もいます。 バーゲン・レイズは,誘いのジャンプシフト,強いジャンプシフトと相容れませんが,2/1 とは 両立します。
 では,バーゲン・レイズにはどんな長所があるでしょうか ? 調べて見ましょう。
 Marty Bergen が バーゲン・レイズを展開したのは,合計トリック数の法則の主唱者である Larry Cohen とペアを組んでいた時でした。この法則から導かれる一つの考えは, ペアの間で 9 枚のフィットがある時には いつでも,3 の代まで ( 9 トリックまで) 喜んで競り合うというものです。
 相手側がどんなに強い手を持っていても,また,相手側が未だオークションに入っていなくても,このように機先を制して競り合います。
 オープナー →1 Ê
N
W E
S
  Pass 
 レスポンダ → ? Ã
Q J 7 4
5
8 4 2
Q 9 4 3 2
 メジャースートの 9 枚フィットがある場合, バーゲン・レイズは,コントラクトを直ちに 3 の代に上げます。たとえば,パートナーが 1 オープンした場合を考えましょう。
 標準システムでは,この手を持っているレスポンダは 2 に上げます。オープナーが下限の手でこれをパスすれば,相手側がオークションに参入して,自分たちのフィットを見つけるでしょう。
 一方,バーゲン・レイズを使っている場合には,オープナーはジャンプして 3 プリエンプトします。相手側は強い手を持っていても, オークションに割り込むことが一段と難しくなります。また,パートナーが良い手の場合には,3 が手の内容をうまく表現しているので,どの代 までビッドできるか決めてもらう上で助けになります。

K 9 7 3
8 4 3
K 10 6
K 8 3
 標準システムでは,この場合にも 2 に上げます。その結果, 相手側にビッド余地が残り,もしも同程度の点数を持っていれば,オークションに参入してくるでしょう。
 一方,バーゲンを使っている場合には,3 (または 3) にジャンプして,切り札 4 枚の建設的な手を示します。このビッドは,相手側の競り合いを一段と難しくしますが,それと同時に,4 枚の切り札と何らかの絵札を約束するので,パートナーに 余分の強さがあれば ゲームを視野に入れることができます。

Q 10 9 4
A J 8 5
7 4
K J 5
 
 
標準システムでは この場合 リミット・レイズ 3 を使います。
バーゲンを使っていれば,リミット・レイズを伝えるために 3 (または 3) にジャンプします。オープナーは 3 で打ち止めもできるし,誘いを受け入れて 4 をビッドすることもできます。さらに,スラム・トライをしたければ, 標準システム以上のビッド余地が残っています。

Q 8 5
J 6 4
A J 6 3
9 4 2
この場合には,標準システムでも バーゲンでも 共通に 2上げます。 両者の違いは,バーゲンを使っていると,切り札枚数が 正確に 3 枚であることが伝わり,オープナーが対応しやすいことです。標準システムの場合には,3 枚なのか 4 枚なのか オープナーには分かりません。
 バーゲン・レイズは,特に競り合いの状況で,ペアの間で上手な判断をするのに役立ちます。私も気に入っていますが,でも,バーゲンは 2/1 の不可欠要素ではありません。
 [2] 2 または 2 への ジャンプシフトを使って,5+ 枚のスートと 13+ pts を示すのが便利だと思いつきました。この方法は 2/1 に矛盾しません。 なぜなら レスポンダによる 2 の代の新しいスートがゲーム・フォーシングになるからです。これについて どうお考えでしょうか ?
 この手法の例を示しましょう。
 オープナー →1 Ê
N
WE
S
  Pass 
 レスポンダ → ? Ã
  
A 6
A K 8 5 3
J 9 5
8 4 2
 
 この場合,標準システムでも,通常の 2/1 でも,レスポンダは 1 をビッドします。レスポンダの新しいスートはフォーシングですが,ゲーム・フォーシングではありません。 そのため,ゲームに達するまでレスポンダはフォーシングのビッドを続ける必要があります。
 あなたの手法は,ここでの 2 をマラソン・ビッドとして使い,ゲーム・フォーシングに取り決めようというものです。これは,2/1 GF で 1 オープンに対して 2 をビッドするのと似ています。
 面白い考えですね。2/1 オークションの中に,2 の代へジャンプすべきか否かを取り入れてみましょう。変則的ではありますが,必ずしも悪いとは言えません。オークションがそれにより楽にできるようなら,何らかの長所があるでしょう。ただし,標準から外れるので,あなたの手法を相手方に必ずアラートするように気をつけて下さい。
 このような手法を取り入れるにあたっては,その得失をよく吟味するのが良いでしょう。ジャンプシフトの使い方として広く知られているのは,
   強いジャンプシフト
   Soloway ジャンプシフト
   弱いジャンプシフト
です。あなたの手法は,13+ pts を持つ手で 1 の代での応答を捨てています。

(1) 強いジャンプシフト
 強いジャンプシフトのコンベンションは,19 +pts とスラムへの関心を示しますが, これを捨てることに異存は全くありません。このような手は稀であり, この方法を使う人は,現在では ほとんどいません。
(2) Soloway ジャンプシフト
 Paul Soloway は,3 種類の手にジャンプシフトを使うことを提案しました。
  トリックをよく取れる可能性がある強いスート,15+ pts。
  パートナーとの良いフィット ならびに 良い第 2 スート,15+ pts。
  18〜19 pts の強いバランス・ハンド。
レスポンダは,次回のビッドで,この 3 種類のどれであるかを示します。
 これは,スラムの探索に役立ちます。こういう手は 19+ pts の手よりずっと頻度が高いですが,覚えることが沢山あり過ぎて,あなたの手法の方が使いやすいと思われるでしょうね。
(3) 弱いジャンプシフト
 この手法を使うと,レスポンスできる ぎりぎりの強さと良い 6 枚スートを示せます。これは,手の形を良く伝え,しかも相手側のコントラクトを締め出す効き目があります。評判の良い手法です。
(4) 1 の代の新しいスート
 あなたの方法に一番合わないのが,これです。
 2 の代にジャンプせずに 1 の代で応答すれば,ビッド余地が残ります。これは,時として重要です。最良のコントラクトに達するのに必要な情報交換をするために,このビッド余地が欠かせないことがあります。長いオークションが好ましいと言うのでは ありません。できると思うコントラクトを素早くビッドすれば,大抵は うまく行きます。
 いずれにせよ,2 や 2 へのジャンプを 2/1 応答として使うのが お気に入りでしたら,そのようにジャンプシフトを使うことをお勧めします。
 ビッドの方法については,考えるべきことが山ほどあります。その一つは,自信を持って楽にビッドできるかどうかです。

バーゲン (Bergen)・メジャースート・レイズ
パートナーが 1 または 1 オープンして,その次のオポが パスした場合:
   3, 3 へのジャンプ・レイズは,プリエンプトであり, 切り札 4 枚と 6 HCP 未満を示す。
   3へのジャンプは,誘いであり,4 枚の切り札と10〜12 pts を示す。
   3へのジャンプは,建設的レイズ。切り札 4 枚と 7〜10 pts を示す。
   2, 2 へのレイズは, 切り札 3 枚と 6〜10 pts を示す。
 * ただし,3 と 3 を反対に取り決めるペアも多い。

第 4 スート・フォーシング
 標準のシステムでは,レスポンダによる第 4 スートのビッドは,通常,  人工的なフォンシング・ビッド として使われます。たとえば:
West
J 5
K 8 7 6 3
A J
K J 5 4
    
East
K Q 9 4 3 2
A 4
7 4
A 9 6
    
WestEast
11
22
2NT3
4Pass
 West が 1オープンして,East が 1を答え,West が次に 2をビッドすると,East は困ります。13+ HCP を持っている East は,ゲームに行く強さがあることを知ります。でも,どんなゲームへ ?
 East は,4にジャンプしたくはありません。West のスペードがシングルトンやボイドのこともありうるからです。そうかと言って,たった 3のジャンプだったら,ノン・フォーシングです。また,3NT にもジャンプしたくは ありません。ダイヤモンドに ストッパが無い からです。
 ハートを 2 枚でサポートするのも嫌です。West が示したハートは 5 枚だけです。同様に,クラブを 3 枚でサポートしたくもありません。West の第 2 スートは,おそらく 4 枚です。
 ここで,East は何かフォーシング・ビッドを捻り出して,もっと情報を集める必要があります。そのためによく行なわれるのは,第 4 スートのビッド 2人工的なフォーシング・ビッド ── 多くのペアのあいだでは ゲーム・フォーシング ── にする取り決めです。こうしておくと,あとのビッドが ずっと楽になります。
 上のディールの場合,West はダイヤモンドのストッパを持っているので, 2NT をビッドします (East の 2 が人工的なビッドなので, このダイヤモンドを West は当てにして いません)。このとき,East はスペードを気楽にビッドできます。なぜなら,2がゲーム・フォーシングなので,3がここではフォーシングだからです (もしも 6 枚のスペードでゲームに誘いたければ,前回 3をビッドしたはずです)。 これに対し West は,スペードのサポートを示し,両者は最善のコントラクト 4に落ち着きます。
 この場合のビッド経過は,2/1 GF を使っている場合にも全く同じです。
East の 1 は 2/1 ビッドでは ないので,オークションは標準システムに沿って進みました。
 Eric Rodwell:"Frequently Asked Questions" (2008 May/June)
 Eric Rodwell:"More Frequently Asked Questions" (2008 July/August)
 Eric Rodwell:"More Frequently Asked Questions" (2008 September/October)