【随伴(モナドへの道)】
前回は、随伴の単位(unit)余単位(counit)
\[
\eta:1_{\mathscr{A}}\to G\circ F\ ,\ \varepsilon:F\circ G \to 1_{\mathscr{B}}
\]
$\eta , \varepsilon$が自然変換であることを確認したところまでだった・・・。
まだまだ、随伴の続き
「モナド」の記述は「圏論の基礎」(S.マックレーン著、丸善出版)に詳しくある。
しかし、「ベーシック圏論」には見当たらなかった。「圏論の道案内」の最終章は「モナド」
で、最初の節(234頁)は「随伴からモナドへ」となっており、「圏論の基礎」にも同様の
説明がある。そこで、もう少し「随伴」を見たい。
「圏と関手入門」(橋本 光靖氏、名古屋大学、http://www.math.nagoya-u.ac.jp/~hasimoto/)を参照すると
随伴関手、定義.
4つ組($F, G, \eta,\varepsilon$)が圏$C$から$D$への随伴(adjunction)であるとは,
(1)$F:C \to D$は関手である.
(2)$G:D \to C$は($F$と逆向きの)関手である.
(3)$\eta: Id_{C} \to GF,\varepsilon:FG\to Id_{D}$は自然変換.
(4)合成
\[
G\overset{\eta G}\to GFG\overset{G_{ε}}\to Gは1_{G}である.
\]
(5)合成
\[
F\overset{F_{\eta}}\to FGF \overset{\eta F}\to Fは1_{F}である.
\]
をみたすことをいう。
定義とあるのでそのままでも良いはずだが、「ベーシック圏論」には(3)から(4)、(5)を示す課題があり
(5)の解答があったのでここでは(4)を示すことにする。
$B\in\mathscr{B}$とする
$\overline{1_{FG(B)}} = \eta G(B)$だから、第14回の(バー)式を参照して
\[
\overline{\left(FG(B)\overset{1}{\longrightarrow}FG(B)\overset{\varepsilon_{B}}{\longrightarrow}B\right)}=G(B)\overset{\eta G(B)}{\longrightarrow}GFG(B)\overset{G(\varepsilon_{B})}{\longrightarrow}G(B),
\]
$\overline{\varepsilon _{B}}=\overline{\overline{1_{G(B)}}}=1_{G(B)}$
だから、(4)式が示された。
あらためて「圏論の基礎」からも
随伴の定義:
$A$ と $X$ を圏とする。$X$ から $A$ への随伴(adjunction))とは、次の条件を満たすような三つ組み
$\langle F, G, \varphi \rangle : X \rightharpoonup A$である。ここで、$F$ と $G$ は函手
\[
{X \overset{F}{\underset{G}{\rightleftarrows}} A
}
\]
であり、$\varphi$は対象 $x \in X$と$a \in A$による各組に集合間の 全単射
\[
{\varphi = \varphi_{x,a} : A(Fx, a) \cong X(x, Ga) \tag{1}
}
\]
で $x$ と $a$ において 自然 なものを割り当てる関数である。
$A(Fx, a)$は、圏$A$における 対象 $Fx$ から 対象$a$への射全体の集合で$Fx \to a$とも書かれる。
また、$x$ と $a$ において 自然 とは、すべての$k:a \to a^{\prime}, h:x^{\prime} \to x$
について
\[
{\begin{CD}
A(F x, a) @>{\varphi}>> X(x, G a) @. A(F x, a) @>{\varphi}>> X(x, G a) \\
@V{k_*}VV @V{(Gk)_*}VV @V{(Fh)^*}VV @V{h^*}VV \\
A(F x, a^{\prime}) @>{\varphi}>> X(x, G a^{\prime}) @. A(F x^{\prime}, a) @>{\varphi}>> X(x^{\prime}, G a)
\end{CD}\tag{2}
}
\]
の両図式が可換になることを意味する。ここで、$k_{*}$は$k$との合成演算$A(Fx,k)$の省略形、また$h^{*}=X(h,Ga)$(103頁)
ここで、次のような立体化らしき可換図に出会った、
上記の可換図式を、$f : Fx \to a$に対して、数式で表すと
\[
{\varphi (k \circ f) = Gk \circ \varphi f,\hspace{5pt} \varphi (f \circ F h) = \varphi f \circ h \tag{3}
}
\]
式(3)の最初の式の図解は
\[
\xymatrix{
& & \\
X(x,G_{a})\ar@{-}[r] & \ar@{-}[dd]_{\varphi=\varphi_{x,a}:\cong} \\
& & \\
A(F_{x},a)\ar@{-}[r] &
}
\hspace{1.0cm}
\xymatrix{
& x^{\prime} \ar@{->}[rr]\ar@{->}[dd]|(.33)\hole|\hole \ar@{->}[dl]_{h}& & G_{a^{\prime}} \\
x \ar@{->}[rr]^{\hspace{1.0cm} \varphi_{f}}\ar@{->}[dd] \ar@{->}[urrr]^{G_{k}(\varphi f)} & & G_{a} \ar@{->}[ur]_{G_{k}}\\
& F_{x^{\prime}} \ar@{->}'[r][rr]\ar@{->}[dl]_{F_{h}}& & a^{\prime}\ar@{->}[uu]\\
F_{x} \ar@{->}[rr]_{f} \ar@{->}[urrr]|(.66)\hole^{k\circ f} & & a \ar@{->}[ur]_{k}\ar@{->}[uu]
}
%\\
%F_{x}\xrightarrow{k\circ f} a^{\prime},x \xrightarrow{G_{k}(\varphi f)} G_{a^{\prime}}\\
\]
式(3)の2番目の式の図解は
\[
\xymatrix{
& & \\
X(x,G_{a})\ar@{-}[r] & \ar@{-}[dd]_{\varphi=\varphi_{x,a}:\cong} \\
& & \\
A(F_{x},a)\ar@{-}[r] &
}
\hspace{1.0cm}
\xymatrix{
& x^{\prime} \ar@{->}[rr]\ar@{->}[dd]|(.5)\hole \ar@{->}[dl]_{h} \ar@{->}[dr]^{\hspace{-0.1cm}(\varphi f) h} & & G_{a^{\prime}} \\
x \ar@{->}[rr]^{\hspace{1.0cm}\varphi_{f}}\ar@{->}[dd] & & G_{a} \ar@{->}[ur]_{G_{k}}\\
& F_{x^{\prime}} \ar@{->}'[r][rr]\ar@{->}[dl]_{F_{h}} \ar@{->}[dr]^{f(F_{h})} & & a^{\prime}\ar@{->}[uu]\\
F_{x} \ar@{->}[rr]_{f} & & a \ar@{->}[ur]_{k}\ar@{->}[uu]
}
\]
「すべての随伴は普遍射を生み出す」
[p.104]の証明の過程の図解.
\[
\xymatrix{
& & \\
& \\
& & \\
& \ar@{->}[uu]^{\varphi}
}
\hspace{1.0cm}
\xymatrix{
& x^{\prime} \ar@{->}[rr]^{\eta_{x^{\prime}}}\ar@{->}[dd]|(.5)\hole \ar@{->}[dl]_{h} \ar@{->}[dr]^{\hspace{-0.1cm}X(x^{\prime},F_{x})} & & GF_{x^{\prime}} \\
x \ar@{->}[rr]^{\hspace{1.0cm}\eta_{x}}\ar@{->}[dd] & & GF_{x} \ar@{->}[ur]_{G(F_{k})}\\
& F_{x^{\prime}} \ar@{->}'[r][rr]^{1_{F_{x^{\prime}}}}\ar@{->}[dl]_{F_{h}} \ar@{->}[dr]^{\hspace{-0.1cm}A(F_{x^{\prime}},F_{x})} & & F_{x^{\prime}}\ar@{->}[uu]\\
F_{x} \ar@{->}[rr]_{1_{F_{x}}} & & F_{x} \ar@{->}[ur]_{F_{k}}\ar@{->}[uu]
}
\]
この立体化らしき可換図は、
"http://www.eco.nihon-u.ac.jp"
以下で見た「圏論におけるいくつかの図解」(坂本實氏)というものを参照して作成した。
式(3)で表される自然性の条件は,$\varphi^{−1}$が自然であることの次の条件と同じことである
すべての$ h, k$ および$g:x\to G_{a}$について
\[
\varphi^{−1}(g \circ h)=\varphi^{−1}g\circ F_{h} \hspace{0.4cm} , \hspace{0.4cm} \varphi^{−1}(G_{k}\circ g)=k\circ \varphi^{−1}g
\]
「圏論は鳥の目で数学を鳥瞰する」、いやいや、まだそこまでは・・・。
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