第9話 〔 無 敵 な 貴 方 〕
Muteki na Anata


 

 

気がついたら、彼女の手をとっていた。
まったくもって、俺らしくない。

 

今朝、久々に彼女に会った。
彼女に会うのは、みぞおちを殴られて以来で、俺はそんなこと全然気にしてないよってかんじで声をかけたんだ。

 

「よう、くん!」

 

なのに、彼女ときたら仏頂面して振り向いた。
きれいな顔だからその顔も可愛かったけど、きっと笑えばもっと可愛いだろうと思って

「なんだい、仏頂面して。綺麗な顔だけど笑った方がいいよ?」

て、言った。

そしたら「失礼します」なんつって歩いていっちまった。
そこで思い出したんだ。そういや俺が口説こうとして鳩尾なぐられたんだって。
ついついいつもの調子で言っちまったが、遊郭の女と違って慣れちゃないんだろうな。

それでまぁ、もうちょっとちょっかいかけてみようかと思って後をついていったら、山南さんと何か話ているところだった。

ちょっとしたら、急に彼女泣きそうな顔をして、でもそれを我慢するようににっこり笑った。

その笑顔は瞬きができないほど綺麗で、女ってのはこんなに綺麗にも笑えるんだなって惚けちまった。
そしたら突然山崎がでてきてバカしやがるから、勢いで彼女を連れ出していた。

 

 

「――近藤さん! どこに行くんですか!?」

「…あ、ああ」

気がつくと、だいぶ町のほうまで歩いてきていた。

「…近藤さん?」
「…ごめんな」
「え??」
「いや〜、君はちゃんと女物の着物着てもらおうと思ってさ。主人〜この子にあうの、2,3揃えてやって!」
「へい、まいど!」
「ちょ、近藤さん!? 私はこれで…」

彼女は自分が着ている男物の着物をつかんで言った。
彼女は剣ではなく徒手拳で戦うから、隊務のときは山崎が着ているような動きやすい着物を着ていたが、それ以外は男物の着物を着ていた。

「チッチッチッ。君はどうせ仕事のときは着替えるだろう? だったら普通のときは普通にしててよ」
「だ、だったらずっと戦闘着でいます!」
くん? 君、局長の言うことが聞けないのかい?」
「そんな私事で権力を使う局長の言うことなんで聞けません」
「わかってないな〜」
「なにがですか」
「君は刀を射さなくていいだろう? 女性の格好をしていれば監察方として大いに働いてもらえると思っているんだよ」
「わ、私が監察ですか!?」
「そうだよ、うってつけだろう」
「んっふっふ〜、私にも着物買ってくれるなら、預かってあげてもいいけどぉ?」
「や、山崎さん!!」

どこからともなく現れた山崎は、二人の間にわってはいり、近藤に不敵な笑みを向けていた。

「どぉ? 勇ちゃん…」
{べつにお前に言わなくても斉藤君あたりに…」
「勇ちゃ〜ん? あーんなことやこーんなこと、純なちゃんに言っていいのかしら?」
「…」
「お返事は〜?」
「わかったわかった。一着だけだぞ、どーせ高いもん選ぶんだろうし」
「当然じゃな〜い!」

「あ、あの、近藤さん…?」

二人の駆け引きがよく聞こえてなかったは不思議そうな顔をしていたが、近藤はそこの着物、きっと君に似合うよとごまかしたのだった。

 

後日、女の格好をしていることでライバルが増えるとはつゆ知らず…

 

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さぁって、これでどんどんみんなを落としていっちゃいますよ!(え!?)
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