きいたこともない見たこともない、謎の型番 MI-TR1。 これはいったいなんだろう??? その答えは このあたりのページにありました。
「ザウルスで最先端のモバイルトレーディング」 「活用テクニック」
よく探すと SharpSpaceTown にもちらほら TR1 の文字が出てきます。
どうやら ICRUISE MI-EX1 のカスタムバージョンのようです。 一般の店では手に入りません。 基本部分は MI-EX1 と同じで、 いくつかの機能を省いてコストダウンをはかり、 専用ソフトが搭載されています。
MI-TR1 の説明にはどこにもアイクルーズと書かれてませんが、 分類の都合上、MI-EX1 と MI-TR1 を含めて ICRUISE (アイクルーズ) 表記することにします。それぞれ個別に分ける必要があるときは MI-EX1 や MI-TR1 と書くことにしておきます。
MI-TR1 で省かれているのは、内蔵フラッシュメモリ容量(半分の8M)、 辞典機能、デジカメ機能、地図ビューアです。 あとクレードルやリンクソフトが付属しないで、 代わりに携帯電話(PDC)接続用ケーブルがついています。 それ以外は MI-EX1 と全く同一機能であるとのこと。 もちろん画面は VGA の 640x480dot です。 おそらく ICRUISE 用 MOREソフトの動作確認には必要十分なスペックです。 もしこれが手に入れば、GA 3D Engine やら zxLinux やら、 アイクルーズ対応版を作ることができるに違いありません。
突然こんな話が舞い込んだのは、 「The Thirde Wave」 さんの方から メール連絡をいただいたからです。 こちらのページ の方にも MI-TR1 に関する説明が載っています。 この MI-TR1 を 200台限定で販売しているとのこと。 ついつい申し込んでしまいました・・・。 え?ついこの間 MI-P10 を手に入れたばかりなのに。
何ともタイミングの良いことです。 2000年9月24日の日曜日、ようやく各ステージのプログラミングが終わって、 あと残っている部分をいくつかプログラミングすれば完成というところ。 早ければ夜にでも ChiRaKS をアップロードできそうだと思っていたところです。 その完成直前に MI-TR1 が届いてしまいました。
これは何が何でも動作チェックするしかありません。 急いでバッテリーをはめ込んで AC アダプタ接続。 電源が入りません。 おかしい、いきなり壊れたか。 あわてず騒がず「まずはじめにお読みください」を見てみると、 最初は AC アダプタにバッテリーをつけて充電しなければならないとのこと。 しょうがないのでマニュアルの手順通り、まずは3時間ほどかけて バッテリー充電を行うことにします。 その間に ChiRaKS の詰め作業を行っておくことにします。
いきなりケーブル繋いでデバッグモード。 GA 3D Engine は ICRUISE では遅かった。 予想できたこととはいえ、 R-panel や ChiToShu、そして 3D Engine DEMO の動作も含めて、 一般の Zaurus で動かすよりずっと遅いものでした。
単純に考えると、画面に描画する面積は 4倍です。 一般の Zaurus の画面が 320x240dot であるのに対して、 ICRUISE MI-EX1/TR1 は ほぼ同面積ながら4倍の密度、 美しい 640x480dot です。 これがあだとなって、書き込むべき画面のドット数も4倍に ふくれあがってしまうのです。
逆に4倍もの転送を行ってこの速度ですから、 MI-EX1/TR1 はかなりのマシンスペックを持っていることになります。 MI-C1 なら、きっとこの半分程度の速度になってしまうはずです。 もったいない。
VGA モードにして QVGA互換を無くし、 ゲーム画面の面積を一般の Zaurus 用 GA 3D Engine と同じ 160x160dot にしてみます。 互換モードの 1/4 の非常に小さいゲーム画面が現れました。 小さいけれど、ゲームはちゃんと動いています。 この状態だとゲーム速度はなんとシステムの上限MAX、 ものすごい速い速度でゲームシーンが回っています。
MI-C1 と同じ条件にすると、ICRUISE の方が圧倒的に速いことがわかります。 基本スペックが高く、 システム全体が、他の Zaurus の倍程度で動いていると思われます。 ネックなのはあくまで描画「だけ」なのです。 さすがモバイルの最高峰。 うまく使えばいろいろできそうでもあり、非常に興味深いハードです。 もったいない。
仮にマシンパワーが MI-C1 の倍あったとしても、 画面に書き込む量は 4倍です。 結果として描画を伴う場合は、また描画に関しては、MI-C1 の半分の 速度しかでないことになります。
GA 3D Engine のレンダリングエリアは 160x160dot です。 MI-EX1/TR1 はこれを 320x320dot 転送しなければなりません。 ちょっと前までの家庭用ゲーム機ですら 320x240dot のフレームバッファで 動いていました。それを越えるサイズです。
そんなわけで、GA 3D Engine v1.02 では ICRUISE MI-EX1/TR1 対策を行いました。 転送量が半分で済む工夫を行い、 速度的に他の Zaurus と全く変わらないゲーム速度を実現しています。 それどころか、ゲーム中の負荷が高くなっても MI-EX1/TR1 では 全く処理落ちしませんので、ゲームが若干難しくなっています。
こうして ChiRaKS の公開予定日が月曜の夜にずれ込んだのでした。 この辺の話は、また機会があったら書いてみたいと思います。
MOREソフトの動作テストはおいといて、 あらためて MI-TR1 を見てみます。 実はこれまで、ICRUISE をさわったことがありません。 モバイルの最高峰である MI-EX1 は、価格も 16万というべらぼうに高いもので、 とても手が出る代物ではありませんでした。
本体は今となってはかなり大きく感じますが、 これでも PowerZaurus MI-500/600 に比べると一回り小さくなっています。 特に縦が短く、横に細長いボディです。 重さは意外にも軽く、255g しかありません。 MI-500/600 で 320g、MI-C1 で 180g、 なんと MI-310 が 240g ですから、ColorPocket と 15g の違いです。
液晶画面の大きさは MI-504 より若干小さく、MI-C1 とほぼ一緒です。 カタログスペックを調べると、MI-EX1/TR1 が4型液晶。 MI-500シリーズが 4.3型、MI-C1 は 3.9型です。 モノクロの MI-P1/P2 や MI-P10 は 3.8型です。 液晶画面はさほど変わらないのに VGA 640x480dot ですから、 ドット密度は 4倍にもなるわけです。
コネクタ類は、本体の上側にACアダプタ(MI-500/600と同じ)、キーボード、 336モデム用モジュラー端子、赤外線ポート。 右サイドに PCMCIA Type2 スロット、本体の下側にオプションポート16があります。 オプションポート16が下についているので、 MP3プレイヤー CE-AP1 を繋いだ場合はちょっと持ち歩きにくい形になってしまいます。
MI-EX1 にはこのほかにデジカメ専用端子がありますが、MI-TR1 にはついていません。 MI-TR1 は紺色で、MI-C1-A(青) をより濃くしたような色をしています。 MI-EX1 はシルバーです。
ちょっと驚いたのがケースです。 液晶部分にカバーはついていません。 そしてなんと、専用のソフトケースがついてきます。 このソフトケースはまるで、SHARP のかつてのポケコン、 PC-1500 シリーズのようです。
さてその液晶の美しさは・・ため息が出るほどです。 ICRUISE 最大の特徴である液晶画面は VGA 640x480dot に 65536色表示です。 これが 4インチの大きさに詰まってるんだから とにかく画面の画素の密度が細かい。 プリンタの性能がドット密度で決まるように、 ICRUISE の液晶密度は本当に美しいと感じます。
メニュー画面もフォントの輪郭がなめらかで、 ブラウザ画面で見る webページはパソコンで見るのと何ら変わりません。 ページの画像も、PC同様そのままのサイズで表示されます。 この画面だったら、外に出てまともにブラウザを使おうという気にもなります。 確かに。
モバイルトレーディングマシンとして、 外でブラウザを最大限使う目的で ICRUISE を選んだ。 これ非常によくわかります。 閲覧性と携帯性を考えると、なかなかベストな選択です。
筆者が所有している WindowsCE のハンドヘルドPC は、 画面インチ数は大きいものの 640x240dot しかありません。 筆者が GA 3D Engine の開発に使った小型ノートPC は、 Windows98 が動いているものの画面が 800x480dot しかありません。 (Lib100 MMX166です。ほんとにこのマシンで R-panel を作った。)
とにかく液晶画面に関しては、 ICRUISE は比類無きすごいマシンであることは間違いありません。
液晶タッチで電源が入らないのです。 ああそういえば igeti MI-P1/P2 もそうでした。 ハードウエアキーの[電源]ボタンを押す必要があります。 あれ、そういえば igeti MI-P10 は液晶タッチで電源が入ります。
本体左側にはスクロールキーとハードウエアボタンが付いています。 igeti や MI-C1 とは違って [戻る] [決定] [電源/HOME] の3ボタン構成です。 MI-P1/P2 の [戻る] が ICRUISE の [電源/HOME] に相当し、 MI-C1/MI-P10 の [戻る] は、ICRUISE の [戻る] (+[電源/HOME]) です。
液晶横のタッチキーは画面の右側にありますが、インデックスボタンがありません。 ペンを使う場合は、メニューから「ホームへ」を選択しなければなりません。 igeti MI-P1/P2 と同じで、ハードウエアボタンを押さなければ インデックスに戻れません。
[戻る] キーはそれぞれのアプリケーション内で一つ上に戻る役目しか無いようです。 MI-C1 や MI-P10 の場合、アプリケーション内で戻れない場合は インデックスを呼び出してくれますが、ICRUISE は何も起こりません。 インデックスを呼び出す [電源/HOME] ボタンが別にあるからです。
ICRUISE の各機能は、他の Zaurus と根本的に異なっています。 フォトメモリが無くマイコンテンツだったり、 インデックス画面が特殊なタブ構成だったり。 それでも、よくよく考えればなるほど、これがベースになって MI-C1 に進化したんだなとわかるところもあります。 これが ICRUISE なのだと納得することにします。
MI-TR1 のホームインデックス画面はカスタム仕様になっています。 igeti MI-P1/P2 でいうホームインデックスに、 専用のホームページを見に行くボタンが付いています。 (画面横のタッチキーにも専用機能が割り当てられています)
画面が詳細でフォントが細かくきれいなのは良いことです。 その分画面描画が全体的に遅く、 どの機能画面でもかなりのもたつき感があります。
他機種の Zaurus ユーザーにはおなじみの 「情報ファイル」「レポート&自由帳」「インクワープロ」「表計算」 の各機能は、SharpSpaceTown からダウンロードして追加することができます。 このうち 「レポート&自由帳」「インクワープロ」「表計算」は有料ですが、 キャンペーン期間中は無料とのこと。 はて、キャンペーン期間はとっくに終わったはずなのに、 値段が書いてないので無料でダウンロードできそうです。 とりあえずダウンロードしてみますが、 もしかしたら課金されるのかもしれません。
「情報ファイル」と「ワープロ」は Zaurus Support Station の方から無料でダウンロードできます。 ワープロの MOREソフトは本体に最初からついてきますが、 バージョンアップしたものがあがってるようです。
Support Station では他にも、 MI-C1/P10 では本体機能に含まれている「データ追加受信ソフト」や、 ICRUISE オリジナルの「マイコンテンツフォーム作成ソフト」 をダウンロードすることができます。
マニュアルには、通信できる機種として MI-EX1(1999/4) よりあとに出た MI-P2(1999/7) が載っています。 でも MI-C1(1999/12) や MT-300(1999/9) は記載されていません。 MI-TR1 は、MI-P2 と MT-300 の間(1999/8?)に出たマシンであることが わかります。
MI-TR1 には MI-EX1 用のデジカメ接続コネクタはついていません。 でもカードスロットがあるので、PowerZaurus 用デジカメが使える可能性は 残っています。 が、どこにもカメラの機能アイコンが見あたらないので、 デジカメ機能は本当に使えないのかもしれません。 MI-C1 用のカメラ CE-AG06 があるので、 試しに繋いで SZABサポート にあるムービーソフトを動かして みましたが、もともと対応していないせいかだめでした。
MI-EX1 のソフトウエア管理番号(本体ファームウエアのバージョン)は 2000年8月の最新のもので「15」です。 MI-TR1 の管理番号は「31」でした。 MI-EX1 用のファームアップデートは実行できないと思われます。
せっかくなのでダウンロードして試してみます。 MI-EX1 アップデータ 2.7 を実行すると、 すでにアップデートされているので、実行する必要はありません、 と表示されました。
NTT DoCoMo の PHS 用 64K ドライバが入っていなかったので、 Zaurus Support Station から MI-EX1 用の NTT DoCoMo 用 64K PHS アダプターソフトをダウンロードします。 DDI Pocket 用ドライバを取り外してから NTT DoCoMo 用 64K ドライバを組み込みます。 これで接続機器設定の画面で「ドコモ、アステル PHSアダプター」 の転送スピード「64kbps PIAFS」を選択できます。
うまく PHS 64K でつながりました。640x480 の画面で 64Kbps。快適です。
haramasa さんの TTV BookReader ICRUISE専用版 と L.Force さんの LfLogBrowser ICRUISE専用版 を落としてみました。
文字サイズ最小でもきちんとしたフォントで文字が読めます。 テキストファイルの横80文字表示は大変ありがたいのですが、 QVGA ではどうしても文字が読みにくくなってしまいます。 それが全然崩れないみやすいフォントのまま表示できるのだから VGA は全然違います。
TTV ブックリーダーも、 非常に美しいフォントで本が読めます。 これらの ICRUISE 専用ソフトは かなりいい感じです。
他にも ICRUISE 専用ソフトとして、 Squeak/Zaurus、 痕 for ICRUISE ver.0.50 があるようです。 今後は MI-TR1 も含めて ICRUISE 専用ソフトが増えてくるかもしれません。
ICRUISE の CE-AP1 再生時間は、マニュアルによると次のようになっています。
どれも他の機種より時間が短いのでかなり油断しました。 すぐ終わるだろうとフル充電状態からテストを開始しました。 電源が切れたのは・・・5時間40分後。表にまとめます。
機種名 | カタログ値 (プレイヤー画面を隠す) | カタログ値 (AnimationON) | 画面OFFでの実測値 |
MI-C1 | 3時間30分(210分) | 2時間(120分) | 5時間 1分(301分) |
MI-P2+ニッケル水素 | なし | なし | 3時間25分(205分) |
MI-P2+アルカリ電池 | 3時間20分(200分) | 1時間30分(90分) | 未計測 |
MI-P10 | 3時間30分(210分) | 1時間40分(100分) | 5時間10分(310分) |
MI-TR1 | 2時間10分(130分) | 1時間20分(80分) | 5時間40分(340分) |
MI-TR1 の演奏条件は 前回 の MI-P10のテストと完全に同一です。 間違いなくバックライトつき液晶は大電力食いです。 それだけ強力なバッテリーを積んでいることも想像つきます。 だから画面を OFF にしただけで、きっとバックライトが無いだけでも かなりの効果があるんでしょう。結局画面OFF時の実測値では、 MI-TR1 が一番のスタミナでした。
MI-C1 用に作っていた CFカードをそのまま挿入してカーネル起動。 ちゃんと起動し zxLinux のコンソールが表示されました。 画面が広い広い! 表示フォントも Linux そのもの。 VGA 画面に起動出力されるそれはまさしく Linux です。
MI-C1、MI-P10、そして MI-TR1(ICRUISE) まで、ついうっかり zxLinux の動くマシンを 3機種そろえてしまいました。 終わっています。
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