硬貨の枚数


[問題 ]

 1円,5円,10円硬貨が、いずれも各1枚以上でb枚あり、合計金額はa円である。各硬貨の枚数は 何枚か求めなさい。

問題2->

[解答]

$$1円,5円,10円硬貨をそれぞれ、x,y,z枚とする。$$

題意より

$$x+5y+10z=a\cdots(1) , x+y+z=b\cdots(2)$$ $$(1)-(2)\ \ 4y+9z=a-b$$ $$\ \ \ \ \ 4y=a-b-9z$$ $$a-b-9z\equiv 0\pmod 4$$ $$a-b\equiv 9z\pmod 4$$
$$9z \equiv 1 \times z\equiv z\pmod 4$$ だから $$9z\equiv z\pmod 4$$ ゆえに $$a-b\equiv z\pmod 4$$ $$1\leqq x,1\leqq y,1\leqq zと(1)から、z\leqq \frac{a}{10}-2$$ としてよい。

要するにこの場合、 合計金額と 硬貨枚数の差を4で割った余りと、
10円硬貨の枚数を4で割った余りが一致するものをさがせ
という話になる。

$$実際には、a-b\pmod 4 の値をあらかじめ求めておき$$ $$z\leqq \frac{a}{10}-2$$ $$だから、$$ $$z=\left(\frac{a}{10}-3\right),\left(\frac{a}{10}-4\right),\cdots ,2,1$$ $$のうち$$
$$ z\pmod 4 が上で求めたもの(a-b\pmod 4)$$ $$と一致するものについて、次のように計算すればよい。$$ $$x=\frac{ \left | \begin{array}{cc} a-10z & 5 \\ b-z & 1 \end{array} \right | } { \left | \begin{array}{cc} 1 & 5 \\ 1 & 1 \end{array} \right | } , z=\frac{ \left | \begin{array}{cc} 1 & a-10z \\ 1 & b-z \end{array} \right | } { \left | \begin{array}{cc} 1 & 5 \\ 1 & 1 \end{array} \right | }$$ $$となるので、$$ $$x=-\frac{a-5z-5b}{4} \cdots(3) , y=-\frac{9z+b-a}{4} \cdots(4)$$

[例]
 1円,5円,10円硬貨が、いずれも各1枚以上で20枚あり、合計金額は70円である。各硬貨の枚数は何枚か求めなさい。

$$a=70 , b=20 ,a-b=50 \ より$$ $$50 \pmod 4\equiv 2\pmod 4$$ となるものは
$$1 \leqq z\leqq \frac{70}{10}-2=5だから、$$ $$z=5,4,3,2,1 のうち$$ $$z=2だけである。これを(3),(4)に代 入して解くと、$$ $$x=-\frac{70-5\times 2-5\times 20}{4}=-\frac{-40}{4}=10$$ $$y=-\frac{9\times 2+20-70}{4}=-\frac{-32}{4}=8$$

[答]1円10枚,5円8枚,10円2枚

 こういう問題を小学3、4年生に出す例があると聞いた。試行錯誤の末、わかる子もいるだろうが、これは小学3、4年生には易しくはないと思う。ネット上にも、QアンドAのサイトが幾つかあるほどだ。何はともあれ上のような解き方を試みた。硬貨の枚数と金額を文字a,bとしたのは、いろいろな問題を作れるように、ということからだ。合同式を使ったのは、試行錯誤少なく整数解を定め、また求めるためと考えた。割り算の余りをみることが意外な結果を導く。余りといえば残り物のイメージだが、”福あり”だと思う。この割り算の余りなどを対象とする。 合同式 は初等整数論の豊かな内容の一員であるが、銀林浩氏はその著「初等整数論入門」(ちくま学芸文庫)で、整数論は「近年やや冷遇され」ていると書いておられる。