Tiny Particle(速読法を考えていたら・・・)

 速読法というのがある。
 その中の一流派として高速逐次視覚提示(RSVP)というのがあるそうな。
 ようするに眼球を動かすロスを省けば速読ができる、というの。
 そのための手段として、パソコンであれば特定の箇所に逐次的にテキストの今読むべき部分を表示してやれば良い、という、まあそういう発想のプログラムがつくられている。
 これを日本語向けに実装し、さらには独自のアレンジを加えたのがQiitaで活躍されている@youwhtさん(ファンになってしまった)が開発した「瞬間速読」というアプリ。

 しかし、@youwhtさんが苦労されているのはわかるが、ようするに「英語なら一単語ずつ」「日本語なら文節に区切って」連続表示している、ってことではないか。実はこうすることで切り捨てたものがあるのは@youwhtさんも気がついている。だから現在表示している前後の文節も強調表示を抜いて上下に表示したのであろう(入力ガイドプログラムを開発した経験があるのだろうか)。手動で切ったと思われるものは一文節でなく複数分節となっている部分もある。(不思議なのは先ほど紹介した「瞬間速読」の開発物語で@youwhtさんがただの一度も「文節」という単語を使っていないこと。小学校の国語の時間寝てたのか?頭が良すぎて理解が授業を追い越して退屈するあまりつい、ということはありうることである。「文節区切り」というキーワードに思い至れば、かな漢字変換システムを開発した先人の肩の上に乗ることができただろうに。)

 というわけでRSVPに不満を感じた私はそれでも「この文の(なんらかのたんいの)ひとかたまりを逐次表示するという手法は英文読解の訓練に使えそうだ」と思った。ようするに「後ろから訳しあげる」学校英語で覚えさせられる技法を、頭から読んでゆくという英語ネイティブのやり方に矯正して、結果正確で速い読解を可能とする訓練に使えると考えたのだ。

 実験のためには瞬間速読程度のプログラムを一つ書く必要がある。最初のユーザーとしてうちの子を想定しているが、こいつ友達の影響でマックなんだよなあ。仕方ない、マルチプラットフォームを想定して・・・あ、Microsoft Excelでいいんだ。というわけで書いた。
 やることは単純である。〜と気楽に構えていたらバグりまくってしまった。

  TinyParticle実行画面 画像はこんな感じ。セルの幅はこれから表示しようとする「ひとかたまり」のうち最も幅の広いものにあわせてます。これで「予想に反して急に長い文字列が表示され、眼球運動がついていけない」という問題を予防することができます。(ほんとに予防できるかどうかは実験しないとわからない。)
 "particle"という単語が出てこなかったので、元のテキストを表示単位に分けたワークシートに登録しておくと、きちんと語頭を揃えて訳語を表示してくれます。つまりついでに「単語の暗記」にも使えるかもと欲張って。
・・・こんな調子で仕様を追加してゆけばバグが出ること、あるよなあ。(自己弁護)

 この画面では一つ前に表示した「ひとかたまり」にも注目してください。” some of the "と名詞とひとかたまりになるはずの定冠詞が前のかたまりにくっついている。もちろん意識してそうしている。定冠詞を予め見せることによって、次に名詞が来ると予見させたほうが読解が容易になるに違いない、と考えてのこと。
 元の文章を区切るのは当然のことながら手作業ですが、たとえば同じような理由により"is "も区切る直前にもってきます。そうそう、さっきの” some of the "、someの前のスペースは意識して空けてます。複文の従属節をインテンドしてるつもりなんですが、あまり意味ないかなあ。このへんはこれから。

 @youwhtさんのもう一つ面白いところは「速読ツールを手にした人が最初に読むのは『走れメロス』」と決めてかかっていること。これ、そのうち重要になってくるような気がする。
 いや『走れメロス』って言うと「文豪ストレイドッグスわん」で活躍している太宰治でしょ。『人間失格』読んだことなかったので「瞬間速読」で読んだの。ここ、夏目漱石なら絶対こうしないな、と思ったところがあって。「文のかたまりをどこで切るか」という観点で文章を見ると、やっぱり癖があるのよ。漱石の癖は、きれいなのよ。さあて小林秀雄と谷崎潤一郎は?

 さて、つくったこのソフトの名前なんにしよう。目的が今ひとつはっきり決まってないのでペットネームにするとして。よし、さっき出した"tiniest particles"が何となくハマったので「Tiny Particle」で決定!

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