大昔に考えたことをちょっと思い出して書いてみました。コンピュータネタ、目次へ1994年のある日、会社でお茶を飲んでいてひらめいた。
家計簿ソフトはあるものの、なかなか使えないと悩んでいる人がいるらしい。たしかにレシート見ながら、支出明細をパソコンに打ち込んでいくというのは慣れない人には気が滅入るであろう。では入力すべき情報をビットでもらうことができればいいんじゃないか。たとえば、スーパーのレシートにある買い上げ明細についてのPOSシステムの情報をICカードか何かに入れてもらうことができれば、あとで家計簿つけるときに便利なんじゃないか?もちろん仕様はオープンにしないと信用してもらえない。(おお、94年でこの発想)数日後、ニョーボと買い物をしていて気がついた。ダイエーのレジスターはIBM製だ。IBMなら、POSとパソコンでデータを交換する程度のシステムは簡単に作れるだろう。ならば、家計簿ソフトも作ってしまって、家計簿ソフトを起動すればICカードに入ったレシート情報を読みにいき、自動的に仕分けする。例え家計簿ソフトを無料配布しても、その分、買い物を家計簿ソフト対応のスーパー(つまりダイエー)でやってくれれば元は取れるだろう。IBMとしてもレジの取り替え、増設のニーズがでてくるわけだから、悪い話ではない。
日本最大の流通業と世界最大のコンピュータメーカーが手を組むとなれば、これが日本のPOSシステムに大きな影響を与えてくれそうだ。(94年にソフト無料配布、利益は本業の売り上げ増で上げるというビジネスモデルを提唱。4〜5年早すぎたかも。)会社に提案したものの、完全に無視されたのでしばらく忘れていたが、95年9月にIBMのChipCardを見てひらめいた。こいつはようするにPCMCIA型のコンピュータだ。これにプログラムを書き込めば去年のアイディアのデモプログラムくらいは書けるかも。
ついでに、と考えた。そういえば最近話題になっている電子マネー。これと組み合わせられないか。つまり、電子財布をChipCard上につくりこみ、というかPCMCIA規格で作り、支払い時にはそれをレジに突っ込む、代わりに買い上げ明細がPCMCIA電子財布に戻ってくる。自宅のノートパソコンにそいつを突っ込むと、家計管理ができる。ついでにキャッシュカードの機能も付けると面白いな。
これについては、落とし穴があった。プライバシー保護のために、情報は暗号化するがChipCardの処理速度では公開鍵暗号なんて複雑な計算を現実的な時間ではできないのである。そんなわけで忘れていた。(ちなみに現在でもICカードでキー生成をすると30分近くかかるらしい。)
このあとに残念がって書いたのがこれ。業界団体に応募したが、もちろん選外。そんなことで、また5年近く忘れていた。でも時々昔買ったChipCardを見ては思い出していた。それと電子マネーのかけ声がどんどん小さくなってゆくなと感じるときも、思い出していた。だって、電子マネーを使った方が便利だよ、ということを誰も消費者にアナウンスしないんだもの、好きこのんで使おうという奴はいないよ。たしかに家計管理と連動させる、というのは大した利便性を提供するものではないかもしれない、でも「お釣りをもらわずに済む」以外の利便性を考えついたのは僕だけだよ。少なくとも「小銭から解放される」というメリットだけでは人は電子マネーを使わないということは明らかになっているはずなんだから。硬貨がものすごく大きくて重くて、財布がすぐに駄目になるイギリスですら、MONDEXの実験はスゥインドンから外に出ていけないじゃないか。
今週の火曜日、ICカードのパイオニア、仏「強気」の人と話す機会があった。ICカードのパンフレットを見るとまだ、電子財布とか載っている。 昔こんなこと考えたんですけどねえ、電子財布を使うという利便性を、こういうやり方であれば提供できるんじゃないでしょうか。 と日本語混じり英語で伝えた。(途中から通訳をしてくれた方、ありがとうございました。)よく考えると失礼なやっちゃ>自分。
多分無いと思いますが、「みいそ」と「強気」が共同で似たようなことを発表したら、このページを思い出してくださいな。彼らはさっさとビジネスモデル特許をとるかもしれないなあ。(私がここで書いたということを根拠に「周知の技術」ということで無効を訴えられるかもしれませんが。)
まあ、私の元には一銭も入りませんが、話を聞きたいとかの理由で一度フランスに招待してくれると嬉しいですね。あ、ご飯はナシオン広場のブーケ・ド・トロンヌの定食でいいです。でも飛行機はコンコルドにしないでね。