ポストクロマチック1.手の大きな人のためのフィンガリング

 「プレ・クロマチック」を書いてから一年。反響はゼロである。
 それを言うならフリーソフトウェアへの反響もここ10年ほどゼロである。
 しかし、性懲りもなく続ける。ほんの先月気がついた重要なことなんかがあるので。

 下のガキが吹奏楽部に入った。ホルンパートになった。ところがホルンの音が分からないようだ。「花のワルツ」も「木星」も反応がないのである。なるほど、と思いホルンの音を聞かせるべく連れ出した。自分が出すべき目標の音がないわけだから練習しても迷走するだけだ。少なくとも上達は遅い。逆にいうと強豪校はこれがあるから強い。伝統の音を、先輩のような音を出そう!でぶれることはない。
 というわけで、普通の人は演奏会に連れて行くのだろうが、私は違った。野球場である。夏の県予選、東の横綱、習志野高校の応援席に紛れ込ませてもらった。曲は短くシンプルにアレンジしてあるのでわかりやすい。演奏している人たちと同じ方を向いて、応援団に合わせて「オー」とかやっているとそこは小学生、一緒に演奏したかのような気分になるだろう。この経験は小さくない。
 やはりすばらしかったです。屋外で5万人を相手に演奏することを前提とした吹ききり感。ヒットがでた直後1拍のずれもなくコンバットマーチに移行する鉄壁のアンサンブル。炎天下の攻撃中片時も休まない体力。グランドの選手よりもスタミナが必要なんじゃないでしょうか。(バトン部はもっと大変だろうが。)

 というわけでマリンフィールドに初めて行ったのだが、そこにロッテの選手の手形を集めたモニュメントがあった。自分と合わせてみました。一挙に渡辺俊介投手のファンになりました。手の大きさが各指のプロポーションまで合わせて同じ(細かくは掌底が僕の方がわずかに長い)。自分の手を当てていると気持ちいいのなんの。チャリティでグラブが出品されたら私買います。
 しかし渡辺投手と同じということは・・・。「プロ野球選手の手って案外小さい」んだな。違います。私の手が大きいのです。大きい方らしい、とは思ってましたがほんとに大きいのです。

 自覚してごちょごちょやっているうちに気がつきました。私は教則本作者にだまされていた。あれは「手の小さい人向け」に書かれているのだ。手の大きな人には別のメソッドがある。具体的にはフレットハンドの親指の位置。通常の教則本は「4本の指を自由に動かせる〜ぶっちゃけ小指が使いやすい〜クラシックフォーム」、「チョーキングがやりやすいロックフォーム(ただし小指の運動が犠牲になる)」と使い分けが推奨されてます。親指をネックの裏につけてヘッド方向に流すのがクラシックフォーム、6弦側のネックの縁にひっかけるのがロックフォーム、ってことです。
 ところがそういうことを書いている連中の中に一人として「クラシックギター」を弾いている奴がいないことをもっと問題視すべきでありました。つまり「クラシックギター」が弾けないくせに「クラシックフォーム」という言葉を使っている。信用できると考える方がおかしい。

 そこで悟った。使い分けは不要である。親指は適当に置けばよい。正確には適当になる点に置けばよい。
 ただし留意すべきは「親指はどっちかというとブリッジ方面を向く」である。これがナチュラル。以前、フレットハンドは「箒」と言ったが親指まで含めて「箒」ということだ。腕が「柄」になる。5本の指がそろって自分の頭の方を向く。こうやれば小指や薬指と親指の間隔が狭くなりこの2本の指で直接ネックを挟む形にできる。すると、薬指や小指で弦を押さえるときも力が入りやすくなるのだな。押弦に必要な力が無理なく供給できるので結果として力が抜ける。
 チョーキングの時はどうするかって?いわゆる「ロックフォーム」で親指を引っかけるのはチョークアップの時だけど、チョークアップが使われるのは1,2,3弦(一部4弦)。このときは同じフォームのつもりでも親指がネックの上にはみ出しているから、そこを利用すればよろしい。それにこのフォームだと自然とチョークアップが掌を絞り込んだ形になります。しかも1本の弦を複数の指で自分の体の方向に引っ張り上げることになります。結果、一番わかりやすい薬指でいうと2弦をチョークアップしたとき、1音分もあげると3弦まで指が達して引っ張り上げることになりますが、この3弦を中指+薬指で持ち上げることになります。ここでリリースすると3弦からはまず薬指がはずれ、ついで中指がはずれることになります。薬指が最後まで残るとリリース時3弦をはじいたような形になり演奏ノイズが出ることが多いですが、当方のフォームの場合、二段階で離れまして一時的に中指でのミュートがかかりますので「ノイズがぐっと少なくなる」。

 きわめてシンプルな原則「指先は5本そろって頭を向ける」一つで、フレットハンドのフォームが整い、演奏がしやすくなった。どうして誰も教えないのだろう。手がでかい人でないと出来ないからと遠慮したのかなあ。気持ちは分からなくもない。僕でさえ「プレ・クロマチック」を書くときは「手が大きくなくても無理なく」と気を使った感は否めない。教則本を書くような人はギターがうまく(付録のCDを聴く限り惚れちゃうような音色の人はいないが)、たぶん手もでかいのだろう。でも編集者の意向もあって気を使っているか?ぶっちゃけ「手の小さい人にはこうするのがいいだろう」と想像して書いてないか?
 でも何を遠慮することがある。手の大きさを生かすメソッドがあってもいいではないか。少なくとも手が大きい人を手の小さい人の枠にはめるのが好ましいとは言えない。

 この「親指を含めた5本の指を頭の方向に向ける」フォーム、更に別のメリットもある。リズムがヨレにくいのだ。親指をネック側に伸ばすと、薬指、小指が弦を押さえる力が弱くなる。その分弦を押さえる感覚が人差し指、中指とずれるのだな。具体的には、力を入れたり、反動をつけたりして押さえることになる、その分、押弦のタイミングがずれる。たいしたことではないが速く弾くとこの押さえる感覚の違いによるタイミングのずれが効いてくる。脳では同じタイミングで左右の手に信号を送っているつもりでも、フレットハンドがずれてしまうのである。指のバタツキがなくとも、この現象は起きる。ん?自分が下手な理由を合理化するなって?でも、たぶんだけど、ジミー・ペイジの弾き方にはこのずれが紛れ込んでいる。

 あー、ギターを始めた頃、今の自分にギターを教えてもらいたかった。というわけでモルモット募集。
 たしかに手がでかくて、フレットハンドの指4本使うときと3本しか使わないときの親指の位置を変える必要がないから、という理由で思い切れたメソッドではあるんだが、このフォームにしてから逆に小指にも余裕が出てきたんだよね。というより写真見てよ。小指以外は余裕がありすぎて邪魔なくらいだ。ということは手が小さい人にとってもメリットが大きいんじゃないかな?ところが、自分の手では実験できない。ということで誰かで試したいということ。上述の理由で手の小さめの、、、出来れば女の子がいいです。ん?おまえの娘はどうしたって?こいつはギター持ってもバイオリンのフォームになってしまい役に立たないのです。

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