私の常用の録音装置は、今のところamazon激安マイクBM-800(当然改造)+TEAC DR-100MK2(底値のバーゲン)である。これをかかえてSLのシュッポシュッポを録音に行かないところがアレだが、音楽についてはかなりうまく録れるようになった。たまには趣向を変えて使いこなし術でも。音楽ネタ、目次へ使いこなし術とは妥協箇所を決めるルールのことである。ルールがなければその実現方法は考えられない。すると行き当たりばったりになってパフォーマンスが出ない。
資源を自由に使えるなら、マイクも高級、レコーダーも高価な最新式、ケーブルは高純度導線でも使って、演奏もリハーサルで録音レベルをきっちり設定し、ビットを使い切る。編集についても・・・であるが、所詮は子供の演奏会を親が録る、であるし、予算も限りがある、ハプニングもある、なのでいろいろと切り捨てていかねばならない。切り捨てなくてもかまわないものというと・・・容量制限だろうね。SDHCカードに録音するのだがびっくりするくらい安くなっている。CDの600MBという巨大容量に仰天した頃とはまるで違うのだ。なので、量子化ビット数、サンプリング周波数ともハードウェアのサポートする最高水準で録音する。なぜTEACのDR-100MK2を選んだかというと、安かったから、というより比較的安価なものの中でマイク入力がバランスだったから。一般的なピンプラグの入力のマイクだと発展に乏しいでしょ、今後いいマイクを買った時でも使えるようにしたいな、というのが理由。 最初は子どもの演奏録音用に一般的なピンプラグのものをつかっていた。が壊れてしまっていろいろ調べていたところバランス出力のマイクで魅力的なのがあったのだよね。パーツをそろえて自作するので安くできる。Shinさんという人のブログなのだけどバランス出力のものの回路図が公開されている。Panasonicの名作カプセルWM-61Aを使ったもので、使ったことがあって性能は知っていたが国内では入手困難だったので半ばあきらめていたが、秋月で販売されるようになったので「いっちょうやってみるか!」ならばレコーダーを先にアップグレードしてバランス入力対応にしておくか、というのも後押し。これで子供の属している吹奏楽部を録ったら「おおっ」とびっくりするような音だったので、以後はまったというわけ。回路図は教えてもらった通りだが基盤パターンやマイクケースは自分で設計して作っていた。部品だって特性のそろったFETを見つけて買ったりしたのだぞ。
キーパーツであるWM-61Aが生産中止で入手不可となったところで、かなり落ち込んでいたが、Shinさんが「Amazonの激安マイクが簡単な改造でよくなる」という記事を書いていたので、注文して、つくりました。結構個体差があるのね。ケース叩いたときの鳴りが2本でこれだけ違うはないでしょ。エラストマー追加で貼って防振強化。20年ぶりくらいでブチルゴムテープの御厄介になった。鳴りを防ぐには・・・網を線で縛るとか。
基盤についているFETの足を切り取って空中配線、固定&絶縁はアラルダイト使ってます。チップ部品の交換、え、パターンまではがれちゃった。真っ青になったが基盤の塗装部分を削って銅を出してハンダ付け。フム、チップ部品のパターンに普通のコンデンサを付けるの、慣れるとそんなに大変でもないのね。
部品のリード線がパターンにくっつくまでしっかりと曲げておいて、あとはハンダを溶かすだけ、まで下準備しておくといいわけか。今回大失敗したのは、アースが一つ浮いてしまったこと。マイクの円筒に基盤のついたフレームを押し込んでねじ込むので、余計な力が必要で、かつ切れても気が付きにくいわけよ。音そのものは出るだけにたちが悪い。片チャンネルだけどうもレベルが低いなあって気にはなったのだが、再度の分解はしなかった。その場で聴く限りは音質上特に不都合はなかったので・・・モニター用のしっかりとしたヘッドフォンとヘッドフォンアンプがあった方がよかったみたい。あと演奏者から離れすぎたことも問題。小さい子の演奏だと絶対的な音量が足りない。音響が良すぎて高音が響いちゃったのも辛いね。とにかくS/Nが取れなかった。録音レベルを現地で上げる手もなくはないが、このレコーダー、マイクアンプのゲインをあげると一挙にノイズが増えるのですね。この辺がコスト見合いか。なので音量の小さなものが相手でもゲインはミドルにして、その代りハイレゾで録って、あとでデジタル的に音量を上げ、CDフォーマットに落としてつじつまを合わせるやりかたをずっと使ってきたわけだ。
Audacityでステレオを分離、両チャンネルのレベルをそろえる。拍手のレベルの方が高いのでそこを選択して最大音量をメモ、演奏部分を選択して拍手レベルまで増幅。その時に演奏の出だしと最後、極力ギリギリまで取る。(そうしないと残留ノイズが無演奏部分で大きくなるので目立つ。)小さい子が演奏している場合はレベルが低いのでノイズの大きなチャンネルだけはノイズ除去。あとでモニターして左右の音質差が気にならないレベルに収まることを確認(定位は寄る。どうしても音の鮮度が落ちるようだ)。ピアノ伴奏のバイオリンだとこれでもいいが、ピアノ独奏だと両方ともノイズ除去した方がいいこともある。あるいは音量が大きい場合はノイズが大きくても音の勢いを重視してそのままの方がよいこともある。この辺は聴覚で決める。ノイズができるだけ聞えないよう、演奏開始の瞬間に演奏全体のレベルを上げて、完了直後にレベルを下げる。最終的には耳で追い込まないといけないのでこれが案外大変。どうしてもノイズに不自然さは残るが、一応聞いていられるものになった。(もう一つ、マイクの傍にスピーカーがあって、絶えずヒスノイズが・・・。)
ただし「演奏を拍手のレベルまで増幅→ノーマライズによる増幅」と増幅が二段階になるのはどうかと思って、拍手の方を演奏レベルまで落とすというアプローチもやってみたが、これだと拍手の音がものすごく人工的になる。とくに高音が響く場所だけに厳しい。ということで演奏を二段増幅、としました。
自己嫌悪(その場でのモニタリングが甘かった、アース線が切れていたのに気が付かないとは何事だ)に陥りながら、作業にいそしむ。S/Nが下手すると30dB台になってしまうのだ。すっかり落ち込んでしまったが、リベンジの機会はすぐにやってきた。翌々日、上の子が弾くという某学園祭があったのでマイクを修理してゆきました。場所が場所だけに腕がなるねえ。(まあ、料理サークルを名乗る模擬店の焼きそば焼いていた女性が長髪をまとめることすらなくぶきっちょな手つきであったのを見てると底が知れましたが。うちの子はロシア語サークルを名乗る模擬店でボルシチを買った時にロシア語でお礼を言ったらスルーされたのでブーブー言ってました。)
それはいろいろ反省点がありますよ。マイクのポジションがチェロの真横だったのでその活躍をきれいに収めることができなかったなあ、とか、声楽の入る曲、録音レベルが低すぎたなあ、とか。(人間の声のダイナミックレンジはものすごいのを知っているから、つい絞りすぎてしまった。)それでも器楽曲は編成と距離から直観的にそこそこいい感じのレベルに合わせることができた。VnとPianoだから9だなあ。少々編成が大きいから8.5にするか。としていると最大レベルが-12〜-7dBくらい(拍手はもう少し上)と相当いい具合になっている。声楽入りは-12をちょっと超えるくらいだった。
ということでおおむね満足。ここまで音質が上がると、外部バッテリーの方が音がいいのか、などとまで分かったりする。
ファンタム電源をマイクに供給する関係上、消費電力が大きい。最初は単三電池をとっかえながら録音していたが非常に手間。ところがDR-100MK2は5VのACアダプターの口がついていることに気が付いた。ならばモバイルバッテリーを接続できないかと考え、USBからの変換コードを秋葉原のジャンク屋で求め使っていたわけだ。それでも内部バッテリーの方が回路にとってはなじみがいいかな、と思っていたが、ピアノのフォルテシモで分かった。外部の方が押し出しがヨイ。丁度ピアノの録音に最も適した角度のところに座っていただけによくわかる。姉がピアノ弾きなもんだから自然とピアノ最優先のところに座る癖がついているようだ。というわけで、ひょっとして90年代のドイチェグラモフォンのピアノ録音の水準を超えているんじゃないか、と思う程度にはクオリティの高いものが録れるようになった。(音の傾向はDGである。フィリップスではない。)
ここでもやはり拍手は大敵。ときどき会心のタイミングで両掌がヒットした拍手があり、音量は通常の+6dBくらいになることも。ただしそういうのは拍手のクラスターごとに1発か2発、1曲あたり前後合せてせいぜい5発である。ならば、その部分の波形を探して量子化ビットがみえるまでに拡大し、波単位で選択して演奏の最大音のレベルまで音量を下げても死ぬほどの手間ではない。呆れるほど細かい作業だがやるだけの価値はある。これは地元のボランティアで録音を買って出た時に創始した技だ。ブレイク中のバンドが出演してくれたので少しでもいい音を残そうと演奏とかぶった手拍子の音量を丹念に演奏レベルに落とそうとして編み出したのだ。
これでノーマライズをかけて、16bit/44.1kHzのCDフォーマットに落とす。この時のソフトは今でもssrcを用いている。とはいえ今では録音を配る時、CDに焼くのではなくオンラインストレージにアップするのが主流みたいだね。なお、マイクスタンドやバーはカメラ用を流用している。どう考えてこれを選んだか、というのも一つ一つあるが、細かいことは忘れてしまった(ヨドバシカメラやビックカメラの店内をうろつきまわってコレと決めた)。バーはある程度距離がとれて、双方にカメラねじがつけられるものが一つしか目につかなかった。ただしバーが前提としている1/4インチカメラねじがマイク付属のショックマウントのネジサイズと合わなかったので、幾つか変換アダプタ買ってみて、それでもピッタリとはいかなかったので最後はどうせここでしか使わないからと瞬間接着剤でくっつけた、とかあります。スタンドはSLIKの一脚+三本足を使っているが、これは持ち運びと占有底面積(客席で録るのが前提だからねえ)を考慮してのこと。アルミ製で軽いが安定は悪い。もう少し重くてもマイク用がいいかな、と思ってはいる。
マイクセッティングの間隔と角度、あるいは高さはまだまだ追い込む余地があろうが録れた音に関して自分では満足している。