大学3回生の時の商業論の試験。問題は忘れたが、その場で思いついた回答は覚えている。「何故秋葉原電気街が存在するか」の理由である。社会問題ネタ、目次へ
「価格が高いものは良いものであるという意識が消費者にはある。従ってメーカーは消費者に高級感を印象づけるために定価を高く設定しようという誘因が働く。しかし一方では価格が安くないと売れないという需要=供給の法則がある。この矛盾を解決するために特殊な場所が作られた。本当は高い。安いのは秋葉原だからであると消費者に認識させる。これにより、高い値付けによる高級感の醸成と低価格化による販売量の増加を両立させたのだ。」苦し紛れの即興であったがいまだに正しかったんじゃないかと思っている。で、秋葉原の変容は「価格が高級感を醸し出すという意識の変容(NICsの台頭によるコストダウン、オープンプライス化)」「特殊な場所が別に量販店という形で成立」が影響しているのだろう、と考えている。
その秋葉原に「クロスフィールド」というのが開店したらしい。開店に際して、いろんな人がスピーチしてくれたそうだ。
そんな中で石原都知事の言うことはうなずけない。もっと明るいことを言え。
《秋葉原はつくばエクスプレスの始発駅でも あるが、つくばと秋葉原には日本の隠れた技術がたくさん眠っている。最近、サムスンがメモリー分野で世界一になったというが、あれは全部東芝の技術だ。不景気だからと事業を手放していった結果、人材や技術が他国に流出している。》
外形標準課税で、外資が逃げ出すに十分のカントリーリスクを生み出したあんたにだけは言われたくない。が、そんなことを考えるのは私だけかもしれないし、都知事は都知事で「日本人が技術を作り、日本人だけで生産すれば、もうけも全部日本にはいるからそれが望ましい」と本気で思っているかもしれない。そう考えれば筋は通っている。問題は自民党の細田博之氏が《「以前、IT担当大臣を務めていた頃に、『日本にはシリコンバレーのようなIT技術が集まる“場”が無い。作るならアキバだ』と考えていた」と説明。「入れ物は立派なものができた。あとは魂を入れて欲しい」と挨拶した》 ことだ。セレモニーの場だ。例え嘘と分かっていても明るい未来を約束する。これも大事なことだ。が、言いっぱなしで「あとはよろしく」という態度はどんなもんだろう。
“場”をどうやって作るか。まず家賃が無料であることだろう、と思ったが廃校となった小学校の教室を芸術家にアトリエとして開放するというならともかく、ビルを建てた以上は、あっちも商売。さすがにここまでは言えない。家賃の代わりに株を、といってもライブドアショックの直後、タイミングが悪すぎる。
しゃあない。考えよう。どうすれば“場”ができるのか。大昔ならロラン=バルト「記号額と都市の理論」あたりを題材に煙に巻くような論理展開を見せるのだが、それをやるには実業に染まりすぎた。が、“場”ができないということがどういうことかはよく分かる。ぼくが座るべきところがないということだ。石原都知事が「技術」だけを問題にしているのに比べれば、細田国会対策委員長が「魂」を問題にしているのはマシである。しかしどうやれば「魂」って入るのだ?
こんなことできたら凄いぞ、とビジョンだけは持っているぼくみたいな奴や、PocketBSDを作っためちゃくちゃ熱くて技術力もある奴とか(あたしゃ本読みながら泣いたぞ)、そんなのがうろうろして、コーヒーでも飲みながら意気投合(ないし喧嘩)するような場所があって、それをバックアップしてくれるような人(面白がるだけでも可)がいて、それがあってようやくシリコンバレーみたいなところってできてくるんじゃないかと思うんだが。秋葉原クロスフィールドってそんなビルなのか?出来合のビルにロバート=ノイスが本社を置いても駄目だと思うんだな。それで済むなら六本木ヒルズで十分だ。もっと言うと渋谷を中心に初台から恵比寿に至る地域はITベンチャーが多いという点で既にビットバレーと呼ばれているぞ。(ちなみに交流会が開かれたが、やがて見直された。)そこを踏まえて「秋葉原を日本のシリコンバレーに」と言うのであれば、最低でもオフ会が開きやすい雰囲気の場所にしてほしいなあ。たとえばいがぴょんさんと話がしたいなあ、と思って待ち合わせをするとそこはメイド喫茶だった、というのは避けたいなあ。(彼もレーピンのファンとは知らなかった。)
実効性がありそうなのは、秋葉原大学という極めて自由な校風の大学を作って、優秀な学生には奨学金をばんばん出して、起業も支援する。つまりは日本版シリコンバレーを作るには日本のスタンフォード大学を作ればよい、というわけだ。まてよ、まさかそれが「筑波大学」だって?筑波エクスプレスはそれを見込んで作って・・・おい、ちょっと遠すぎるぞ。
結論、科学万博をもう一度やろう。石原都知事の意向を満たすには、オリンピックよりも適しているはずだ。
書いていての感想:都市のイメージを担うぞ、と手を挙げるには、ちょっと年をとったかなあ。