『う・・・・んん・・・。』
アタシが目をさますと、とびきりの美人の女が目の前にいた。
でも、よくよく冷静に考えれば、それは雑誌のモデルだった。
そりゃ、美人に決まってる。
世間からじゃ、『天使』か『姫』のどっちかで呼ばれてるような女達・・・。
『んん。なんだ、アタシ何時の間に、こんなとこで寝ちゃったんだろ・・・』
そこは、あたしの部屋じゃない。リビングだ。
昨日の夜、久々の収入で盛り上がった後がある。
まだ、あたりにはサケの`好いにおい´がのこっている。
『ん〜〜〜〜!!』
アタシはおきあがって大きく目覚めの背伸びをする。ともに深呼吸。
男共も子供も犬も、まだ起きて来てないみたい。
なんか、アタシだけの船って感じがして気持ち好い。
今日の目覚めは驚く程気持ちが好い。
『・・・・・・誰も、起きてはこないわよね。』
辺りを見回す・・・。誰もいない。
気分が好いから。つま先で立ってみる。
静かに、一歩。軽やかに、一歩。
無音のリズムを身体で取りながら、軽やかにつま先で踊ってみる。
『ここで、跳ねてっ!ターン!』
驚く程自然に、アタシの身体はターンを・・・
『ああっああああああ!!』 どてん。
・・・・失敗。足を挫いた・・・。
・・・・ださ・・。
『はあ、良い歳こいて、バレエなんてやるもんじゃないわ・・・。』
アタシが起き上がると同時に、拍手が聞こえて来た・・・。
『・・・・アンタ。何時から・・・』
『お前が、天使になりきってる最中。』
顔が、赤面するのが解る。
・・・・・・恥ずかしいとこをこのもさもさにみられた。
『どうだった?天使になった気分は?』
もさもさ男がそのもさもさを、もさもさしながらソファにかけた。
『何?天使に見えたの?』
もさもさ男が飲みかけのビールを一口飲むと・・・。
『ああ、酒の天使にな。』
もさもさ男のもさもさに、知らぬ間にアタシのハイヒールの片方が直撃した。
無意識だった。
『ああ、やっぱ、お前、天使には向いてないわ。』
『ええ、言われなくとも!』
ちょっと悔しい気持ちを残して、アタシはリビングを出ようとしたが。
『天使ってより、お前なら、妖精だな。』
もさもさ男がアタシの背中に声をかける。アタシは背中でその言葉を聞いた。
『気紛れで、つっぱってて、小さいクセに、態度はでかくて・・・。』
『いいじゃない。』
アタシは振り向きもしないで言った。
『アタシ、そういった気楽な方が好きだもの』
振り向くと、もさもさ男はアタシの雑誌を読んでた。
『・・・・何よ?』
『いや。こういうのって。天使か姫っていうんだろ?』
もさもさ男がもさもさを、また、もさもさして。
『・・・俺も妖精の方がいいは・・・。』
というと、雑誌をおいて、シャワー室の方にさっていった。
『・・・・・・この、もさもさ。』
作/Gren