眠っている人面魚を護送する為、ビバップ号は警察に向かった。
スパイクとジェットとフェイの3人がかりで、受付まで運ぶ。
後は、手配されたデータを照合して、賞金が支払われるのを待つだけ。
ロビーで待っている間、3人は考えていた。
(血の滴る分厚いステーキを喰いてえな・・・)
スパイクは腹一杯喰えるものをひたすら考えていた。
(ビバップ号の修理賃、ハンマーヘッドの借金でパーになるんだろうな・・・)
ジェットは自分の船のことをひたすら考えていた。
(あの2人を騙して、賞金を横取りにして、ブランド物をひたすら買っとこうかしら・・・)
フェイは自分の買い物のことをひたすら考えていた。
エドとアインが入り口に足を踏み入れようとした時に、警官につまみだされて、表へ放り出された。
「まちきれないね、アイン」
「クゥウウウン・・・」
エドが逆立ちをして、そのまま歩く。アインも毛の中にいるノミを払うように、うしろ足で頭を掻く。
二人(?)の間に沈黙が始まる。
ひたすら、時が流れてくるのをじっと待つ。
「・・・・・・!」
何かをひらめいたのか、エドが急に立ち直って、
「ひらめいたよ、アイン」
「ワンワン!」
ビー、ビー、ビー、ビー・・・
警報機が建物中に響き渡る。人々が慌てて非常口に駆けてくる。
スパイクとジェットとフェイが周辺の様子に気が動転した。
「何だ?これは・・・」
「何か事件でも起こったのか?」
「ちょっと、何すんのよ?!」
しばらくして、非常放送が流れてきた。
「緊急事態発生、緊急事態発生。一般市民は、施設外に避難して下さい」
その時に始めて、非常事態が発生したと3人は悟った。
一方、エドとアインはというと、トイレの窓から顔を出して、ニュルニュルと侵入することに成功した。
その時、非常ベルが鳴りだして、すぐに便器に避難した。
何故か、警官の一人も現れなかった。
「あぶなかったね、アイン」
「クゥウウウン・・・」
ドアをそっと開ける。誰もいないことを確かめると、アインが吠え始めた。
「どうしたの、アイン」
「ワンワンワン!」
道具室の前でアインが吠えると、
「アイン、このドアをあけろって?」
「ワンワン!」
エドがドアを開けると、
「アイン、これ?」
エドが取り出したものは床ブラシだった。アインはワンと吠えると、
「こんどはなにをとってほしいの?」
「ワンワンワン!」
エドが何かを取り出すと、アインはワンと吠えた。
「え?トイレクリーナー?」
作/平安調美人