僕の1番の主人は、ジェット。ビバップ号の所有者でご飯を作るのが大好き。それでもって、盆栽をいじるのが趣味。
昔は、『食らいついたら離さない、ブラックドッグ』と呼ばれる優秀な警官だった。なのに、警官を辞めて賞金稼ぎになったいきさつは、本人しかわからない。
おまけに、左腕に機械仕掛けの腕をつけている。今の時代では、少しのお金をかければ、再生手術が可能になっているが、ジェットはあえて拒否している。俺の左腕は男の勲章だというポリシーがジェットがジェットであることを証明してくれているようだ。
ただ、僕には困ったことがあるんだ。
一つは、肉を食べさせてくれないこと。
とびっきりな額の賞金首をつまえる際に、スパイクやフェイが派手にやらかした時には、賞金のほとんどが修理金と慰謝料で消えてしまい、残ったのが野菜が買えるお金だけ。そんな時に決まってくるのが、肉なしのチン・ジャオ・ロー・スーかモヤシ炒めか、はたまたベーコン抜きのベーコンエッグもとい、ただの目玉焼きのどちらかだ。
肉を食べないと、力が出ないよ。
そして、もう一つ。
「どちらさんもよござんすね」
フェイが藤壷と2つのサイコロを手にしている。相手はもちろんジェット。
人間にはできて、犬の僕にはできないもの、それは賭け事。
フェイがサイコロを壷に入れて、テーブルの上で伏せる。
2つのサイコロの合わせ目が偶数か奇数かを賭ける。それが『壷振り』というゲーム。偶数なら『丁』、奇数なら『半』と賭ける。
「丁・・・・」
眉を上げながら、ジェットが言うと、フェイは真面目な顔をした。何か裏がありそうな顔だ。
「いや、半!」
ジェットが変えると、
「勝負!」
フェイが壷を上げる。
「一、一の丁!」
ジェットは愕然した。今までフェイと勝負して、勝ったためしがない。大切な盆栽や服やリストバンドにエプロンにサングラスも取り上げられてしまって、残ったのはパンツ一丁。そのパンツも脱がなくてはならない。人間というのは、とかく隠したがる動物だ。ジェットの場合もせめてパンツだけは死守したかった。だが、フェイに負けてしまったからには、パンツまでも脱がなくてはならない。何せお金がないんだから。
でも、僕は知っている。フェイがイカサマをやっていることを。足元を見ると、金色のリングをはめている。このリングは足をちょっと動かすと、壷の中のサイコロが動く仕組み。それを見抜いているのは、スパイクと僕だけだけど、僕は人間の言葉がしゃべれない。だから、ジェットに伝えたくても伝えない。
あ〜、じれったい(>_<)
作/平安調美人