一人の女が今病院をでてきた。その女は54年間コールドスリープしていた、つまりフェイである。
フェイは病院をでてきて、これからどうしていこうかと考えた。
フェイはどうしても大金が必要だった。
54年間コールドスリープをしていて起きたら、いきなりその費用と利子で3億円を超える金を要求された。
フェイは自分の過去を思い出すことができずにいた。
だから、だれにも頼ることができなかったが、弁護士のウィットニーに会い時がたつにつれ、この人なら頼れると思い始めていた。
だがそう思い始めていた矢先にウィットニーは多額の借金を残しいなくなってしまった。
これで、フェイには頼る人が一人もいなくなってしまった。
一人で生きていこうと決めたが、女が一人で大金を確実に得るには、体を売るしかない。
しかしフェイは自分の体を売るなんてことは絶対しないと思っている。
平気で体を売っているものが言う、「体は売っても心は売らない」と。
だがそんなことはあり得ないとフェイは思っている。見知らぬ男に自分の体を売るなんて、ふつうの心を持った人間が考えればそんなことは実行には移さないと思っている。だって心と体は常に一つなのだから。
フェイは病院のテレビで今の時代には賞金首制度があると言うことを知った。
今のフェイにいえることは一晩だけの男を喜ばす腕より、銃の腕が必要ということだ。
私は賞金首を捕まえてお金を稼ごう、そう心に決めてフェイは病院を後にした。
フェイは銃の使い方を教えてくれる人物を捜して、やっと一人の男を捜し当てた。
その男の名はライオス。裏の世界ではかなり名の知れた男だ。
「あなたがライオスね。銃を教えて欲しいんだけど。」
「君がかい?君の手には銃より宝石が似合うと思うが。」
「私が宝石より欲しいのは、銃の腕よ。」
「わかったよ。ま、金さえもらえればどうだっていいけどよ。」
交渉が終わり、フェイはライオスの後をつき彼の山の中の隠れ家までついていった。
「それでは早速始めるか。」
「ええ。」
「じゃまずどれくらいの腕か見せてもらおうか。」
「それは見たってしょうがないわ。私は一度も銃を撃ったことがないもの。」
「握ったこともないのか?」
「ええ、ないわ。」
「名称もわからないのか?」
「ええ。」
「そうか、じゃ1から教えてやる。」
といい、ライオスは隠れ家の中にある多数の銃のなかから一つを選びフェイに差し出した。
「これは?」
「オーストリア製グロック30。君にやる。銃がなくては練習もできないだろう。」
「ありがとう。」
それから半年間、フェイは必死に銃のトレーニングをした。
トレーニングはつらかったが今自分に必要なことだから一生懸命がんばることができた。
「それでは最終試験だ。」
「最終試験?」
「君は今一文無しだ。後から受講料払うといってもそれをあてにはできない。賞金稼ぎになったらいつ死んでもおかしくないからな。
だから賞金首を一人捕まえてその金を受講料として私に払う。これが最終試験だ。」
「わかったわ。」
「わかっていると思うが最終確認だ。相手が現れたら相手より早く引き金を引くんだ。躊躇している暇なんてのはない。
相手が死んだらどうなるとかは、相手を倒してから考えればいい。遅かったら自分が死んでしまうだけなんだから。」
「・・・。」
フェイは黙って隠れ家をでていった。
フェイは手頃な一人の賞金首に目を付け賞金首の後をつけて捕まえるタイミングを見計らっていた。
しかし、フェイは素人のため、相手に気づかれてしまい賞金首は突然走り出した。フェイはあわてて追いかけ始めた。
かなりの距離を走ったがフェイはあまり疲れなかった。これもトレーニングの成果だろう。
追いかけて、ついたのが廃屋だった。そして賞金首が廃屋に隠れて行くのが見えた。
相手が待ち伏せしているところに入っていくのは危険だけれど、ここで賞金首を逃がすわけには行かない。
そうしてフェイは銃を構えながら廃屋の中に入って行った。探し初めてから数分後、賞金首は突然、障害物から飛び出しフェイに銃を向けた。フェイも賞金首に銃を向けた。
フェイは手がふるえた。相手を見ると相手もふるえていた。フェイも怖いが、相手も怖がっている。
でもフェイは習ったとおりに一発の弾丸を放った。その弾丸はみごと相手の体に当たり何とか捕まえることができた。
そしてフェイは、警察を呼び賞金首を賞金と取り替えた。
フェイは賞金を手にしてライオスの家に帰るために路地裏を通っていた。そこにきたとたんフェイは突然泣き崩れた。
フェイは思った。過去のことは思いだせない・・・けど、もし子供の頃、自分が友達と遊んでいたとき自分の手に銃を持つことを考えていただろうか?わからない、わからないけどそんなことは絶対思っていないに違いない。
もっと明るく大きな夢を掴もうとしていたに違いない。少なくとも人殺しの道具を持つとは考えてもいなかったろう。
銃を持つことは自分を守るためだと人はいうが、自分を守るるためには相手を倒さなければいけない。
相手は一命を取り留めたが、弾丸が当たった瞬間は相手はもがき苦しみおびただしいほどの血を流していた。
今回は、相手の急所に当たらず一命を取り留めたが、今度は人の命を奪ってしまうかも知れない。
「だがこうしていかなければ生きてはいけない、しょうがないことだ」
そう自分の胸に刻み込み、フェイは泣くのをやめ「もう泣かない」と決めて立ち上がった。
フェイは隠れ家につきライオスに手に入れた賞金を受講料としておいてでていった。
ライオスはその姿を見て思った、
「確かに彼女の手には宝石より銃が似合う」と。
作/水那