あるよく晴れた日の午後、オープンカフェでの3人の爺さんの会話。
「おめーは別の<タネ>まいてたもんさな。」
ジョビンがアントニオに言う。
アントニオはジョビンに、
「そういうお前さんこそ悩みの<タネ>を抱えてたじゃないか、何でも兄弟が<タネ>違いだったそうじゃないか。」
「あのときはさすがの俺も妻に対して怒ったさ。でも仲直りしたけどな。そういえばカルロスはそのころの趣味は手品だったよな。」
「手品の<タネ>を考えるのが楽しかったからな。実家の本業の<タネ>なしスイカ作りの間によく考えていたっけな。
そういえばアントニオ、お前の牧場が所有していた<タネ>馬はどうなった?」
「その馬ならこの前<タネ>付けさせようと朝、様子を見に行ったら死んだって言ったじゃないか。ボケが始まったんじゃないか?」
「なにをアントニオ。俺はまだボケが始まる年ではないぞ!そう思うだろ、ジョビン。」
「おまえさん、ま、そんなに怒るなよ。確かにお前さんはまだぼけてないよ。
それより、俺はそろそろ帰らせてもらうよ。家に帰って<タネ>もみしなきゃいけないからな。」
ジョビンがなだめるように言った。
「そうだな話の<タネ>も尽きてきたし。じゃ今日のところは解散だ。」
カルロスは怒りがおさまったみたいだった。
「じゃあ、帰りに<タネ>物でも買っていくかな。」
アントニオがそう言い、3人は自分の家に帰って行った。
その話を隣のテーブルに座って聞いていた人が思った。
「あんたら、確かにボケてないよ。」と。
種物・・・氷水にシロップや小豆などを入れたもの。
タネもみ・・・種子としてまくため、選んでとっておくもみ。
作/水那