朝、窓から射し込む太陽の光がまぶしくて目を覚ます。
まだ眠い、昨日は夜遅くまで宿題の読書感想文を書いていたためだ。
読んだ本は「ピーターパン」。本当は図書室で借りようと思ったのだけれど、
ほかの人が借りていて残っているのは字が小さくページが多い本だけだっだので、
借りるのはやめた。
どうせ、一回しか読まないと思うので買う事は考えていなかった。
で、結局家を探して出てきた本が「ピーターパン」だった。読んでみた感想は、
空を飛べるピーターパンという男の子が夜、子供を連れてネバーランドに
行き大冒険を繰り広げるという内容だった。
13歳にしてみれば幼稚な本だったかも知れないが、
すごくこの本の内容が気に入った。感想文の方は自分の感想を素直にかけたので
難しい本を読みほとんどがあらすじの感想文よりは、いい出来だと思う。
そんなことを思い、眠い目をこすりながら学校へ行く準備をする。
ご飯を食べ終わったと同じくらいに、
「おはようございまーす。」
と友達が学校へ一緒に行くためフェイの家による。
フェイは食べ終えた食器を食器洗い機に入れて、
いすの隣に置いてあったバッグを持ち宿題の読書感想文をチェック。
読書感想文があることを確かめたフェイは、友達が待つ玄関にむかった。
「いってきまーす。」
と、玄関のドアを開けてから母親に向かって言った。
「いってらっしゃい。」
家の中から母親の声がかえってきた。それを確かめドアを閉めた。
家による友人の数は二人。その中の一人が、
「読書感想文書いてきた?」
「うん、書いてきたよ。」
そんな会話をしながら学校へ向かった。
学校に着いてから早速1時間目に読書感想文の発表会があった。
出席番号順に一人一人前に行って感想文を読まなければ行かない。
読む前は緊張するが、読んでしまえばあとは気楽に他の人のを
聞いていればいいだけだ。どんどん順番が回ってきて、
フェイの番になりフェイもなんとか読み終えることができた。1時間目が終わり、
感想文を読むという試練を乗り越えることができて安堵していたところに
友達が近づいてきた。友達は笑いながら
「フェイ、いい感想文だったよ。」
と言ってきた。
「そ、そんなことないよ。」
「照れない、照れない。それより私のお父さんがビデオカメラを買ったから、
『10年後の自分へ』てな感じでビデオ撮らない?」
「イヤだよ。何でよりによってそんな題なの。」
「何でって、他に撮る物がないからよ。
この題だったら同窓会とかに見たら楽しそうだからね。」
「だったら尚更イヤだよ。」
「ダーメ、他の人のも撮るんだから、フェイだけ断るなんて許さないよ。
という訳で放課後フェイんちの近くの公園に集合だからね。」
「そんなー。」
どうせ他の友達も強引に了解させられたのだろう。
せっかく感想文の試練を乗り越えたのに、また試練ができてしまった・・・
放課後・・・
フェイの家の近くの公園にフェイを含め6人の友達が集まった。
早速ビデオ撮りがはじまった。あみだくじで決めた撮る順番はフェイが最後だった。
友達は適当なところで「主婦になっている自分へ」とかいう感じで
『10年後の自分へ』メッセージを残していく。
「次フェイの番だよ。」
友達の一人が声をかける。最後というのはやっぱりイヤだった。
みんなは自分の番が終わり気楽になったためフェイのコメントに
みんなが注目している。なにをしゃべればいいのかわからないフェイはとりあえず
「え、え〜と、おはよう」
と言ったが見ていた友達が笑い、すごく恥ずかしくなってしまい、
すぐに
「あっ、今のなし。」
と言い。フェイはカメラに向かい手を出しながら走ってきた。
「フェイそれじゃ撮れないでしょう。」
「だって何言っていいかわからないよー」
「フェイ、私たちだってビデオ撮ったんだから。」
最初に撮った友達が言う。
「で、でも・・・」
「じゃこのビデオを貸すから明日の午後まで撮ってきて。」
「え、でもこれお父さんのじゃないの?」
「今は出張中。じゃなきゃ持ってこれないわよ。はい。」
といいビデオカメラを差し出してきた。フェイはイヤだから受け取るのを拒否した
が、結局ビデオカメラを受け取って家に帰った。
家につき夕食を食べてから。フェイは自分の部屋に向かった。
自分の部屋のドアを開けてから、机の上を見るとそこにはビデオカメラが置いてあっ
た。そういえばビデオ撮らなきゃいけないんだったと改めて実感する。
フェイは自分の未来について考えたことがなかった。
明日がどんな日になるのかさえ考えてもいないのに、
10年後の自分なんて想像がつかない。
誰かのお嫁さんになっているかもしれないし、バリバリ仕事をしているかもしれない
し、もしかしたらこの世にいないことさえありえる。
今こうやってみんなで馬鹿なことをやっているのは楽しいと感じているけど、
10年後には本当に馬鹿なこととしか考えがつかなくなっているかもしれない。
そう考えている内にフェイはだんだん面倒になってきて考えるのをやめた。
ま、こんなに考えても出てこないなら今日は考えるのはよそう。
明日になれば別の自分が待っているわけだし、
この考えは明日の別の自分に任せよう。
今のフェイが思っていることは夜寝ているときにピータパンに、
一夜限りの大冒険につれていってもらうこと。
そんなことを思いつつ寝る準備を始める。
作/水那