ビバップ号殺人事件 第4話

 ジェットは注意深く船内を見てまわっていた。そして、考えをめぐらせていた。
 あの時本当に甲板にスパイクはいたのか?俺はシーツ越しに奴がいると思い込んでいただけなんじゃないのか?
 しかし、スパイクはナイフや刀みたいなエモノは使わない。銃の腕なら確かだが。
第一、動機がない。フェイはともかく、奴にエドを殺す理由はない。
 外部から誰かが侵入したとはやはり考えられない。ジェットは自分の考えにうんざりしながらリビングに戻った。

 スパイクはリビングのソファに腰をおろし、いろいろと考えていた。
甲板で釣りをしていたとき、フェイが殺された。あの時、ジェットがほんの少しの間だが、甲板からいなくなった。
アインが殺されたとき、すでに死んでいるフェイの他はアリバイがない。自分も含めて。
エドが殺されたとき、確かにジェットと一緒にいた。しかもこの傷の跡、これはまるで・・・、
昔同じような傷を見た。スパイクは無意識に自分の古傷を押さえた。
「ビシャス・・・。」
そのはずはない。そんなはずはない、必死でそう自分に言い聞かせた。
ふと、顔を上げると自分に向けて銃を構えるジェットの姿がそこにあった。

「いろいろ考えたんだ・・・。スパイク・・・。」
嫌なものを必死で吐き出すようにジェットはうめいた。
「聞かせてくれ、何故だ。何故なんだ・・・。」
「おい、なに言ってるんだ。」
「外から誰かが侵入した形跡はない。俺は誰も殺していない・・・。これ以上言わせないでくれ。」
「偶然だな、俺も同じことを考えていた・・・。」
ゆっくりとスパイクは立ち上がった。その手には、血にまみれた日本刀がきらめいていた。
「やっぱりおまえだったのか。何故だなぜ・・・。」
ジェットはテーブルに倒れこんだ。
 おびただしい血がリビングを赤く染めていく・・・。

つづく

作/猫宮

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