ビバップだってクリスマス

 事の起こりはジェットがエドにいつものように「お話」をしたことにある。
スパイクは機嫌が悪かった。
 リビングを占領した大きな木とそれを嬉々として飾り立てるフェイ、目をキラキラさせて見つめているエド。
 そして、珍しく鳥の丸焼きを作っているジェット。みんな鼻歌交じりなのでスパイクはひどく不機嫌だった。
「いやなら、自分の部屋に行けばいいじゃない。」
それもいやなので、スパイクはますます機嫌が悪くなっていた。
「さ、これでいいわ。ジェットォ、ケーキもあるんでしょうねぇ。」
ジェットは、キッチンから顔だけ出して、にっこり笑った。その手には大きなケーキがあった。
「わあお。アインアイン、見た見た?大きいねぇ。」
エドは無理やりアインの前足を広げた。アインは迷惑そうに首を振った。
「エド、手伝うのよ。」
フェイはいつに無く働き者だった。まるで、エドと変わらない少女のようにはしゃいでもいた。
「クリスマスって言うのはな、神様の子供が生まれた日のお祝いなんだ。みんなで、ご馳走食べて、子供はプレゼントをサンタにもらう。ま、お祭だな。」
わかったようなわからないような説明で、エドはうんうんとうなずいている。

「クリスマスか・・・。」
スパイクは聞こえないほど小さな声で呟いた。
子供の頃、マオがプレゼントをくれた。クリスマスだけは甘えられた。
 大人になって一度だけ幸せなクリスマスを過ごした。ジュリアとたった一度の幸せな聖夜・・・。
スパイクの今にも泣き出しそうな寂しげな顔を見ることができたのはアインだけだった。

 いつも殺風景なリビングがにぎやかに飾られ、ビバップ号にしては珍しくご馳走が並んだ。フェイはどこに隠していたのか高級ワインのビンを部屋から持ち出してきた。
「ぱーっとやりましょ、ぱーっとね。」

スパイクは不機嫌にしながらも食べるものは食べて、飲むものは飲んでいた。
散々大騒ぎして、エドもフェイもソファーに横になって寝息を立て始めた。
ジェットはテーブルやら散らかったクラッカーの中身やらを片付けていた。
スパイクは部屋に戻ると紙袋を抱えて、リビングに戻ってきた。
「何だ、サンタにでもなるのか?」
ジェットがにやついてスパイクを冷やかした。スパイクは何も言わず、ジェットに小さな包みを投げつけた。
「お、なんだ。」
「飯つくってもらってる礼だよ。」
「らしくないな、おまえ。」
「いらねえなら返せよ。」
「もらったものは返せねえな。」
ジェットは包みを胸のポケットに突っ込んでキッチンへ向かった。
スパイクはエドとフェイの枕もとにもそれぞれプレゼントの包みを置いて、部屋に帰っていった。

アインはジェットから、たくさんの残り物をもらった。アインはそれなりにうれしかった、何せ久しぶりの肉だったから・・・。

さて、スパイクがそれぞれ何を送ったかは、彼のプライドにかけての秘密です・・・。
何故、らしくないことをしたのかも・・・。

   Merry X'mas
   For you...

作/猫宮

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