君によろしくって言われた奴は、俺のあとにボールコントロールをした奴だった。
結人に「英士が舌打ちした奴、ロッサにいたよな」と言われて思い出した。
どうして君がそんな奴と面識があるのか、苦しくて仕方なかったよ。




【8】を背負う男 -4-




「…覚えててくれてたなんて嬉しいな」
「目立ってたからな。小さくて、ガリガリで」
「おかげでどんどん追い抜かれた。悔しかったよ。どんなに技術を身に付けても
基本的な体力がなきゃ上は望めない。でも今は、あの頃より15cmも背が伸びた。

今なら負ける気がしない」





「宣戦布告されたよ」
「え?」


君は”チョコママドール”と書かれた包み紙を開けながら振り向いた。

「”よろしく”って奴」
「へー、話したの?」
「少しね」

それ以上の会話はなくて、俺は君と奴の関係を知りたかったけど、聞くことなんてできなかった。
一馬が、サッカーにナーバスになる気持ちが、少しわかった気がする。


「楽しかった?」

もし君じゃない誰かに聞かれたら、きっと俺は”遊びに行ったんじゃないよ”って答えてるだろうけど

「楽しかったよ」

本当に。君がよろしくって言った奴に本気になってサッカーしたら
自分でも信じられないくらい、楽しかったよ。

たぶん、その楽しさは、この痛みに裏づけられているんだろう…
そう思うと、こんな苦い気持ちもそう悪くないかなって思うんだ。







[ BACK ] [ NEXT ]




YES! と言った郭っち(惚)な話を盛り込みたかったので、ちょっぴり入りました。


ドリームメニューに戻る