目が覚める、暗闇。

同じ、ひとりでいた時と。
目が覚めるままに起き、眠気とともに眠っていた。

もう、いやなの、そんな、何者にも縛られない日々は
どんどん自分に縛られていった。

自分の空虚に泣くだけの日々には、もう戻りたくない。







THANK U BABY -4-




 

 

・・・?」

すぐ横で声がした、はっと振り向くと、そこにはクラピカがいた。

「大丈夫か? あの霧の中で、何があったんだ?」

「え?」

 

やっと暗闇の中に慣れてきた目で、クラピカを見やる。

霧の中で…ヒソカにあって、抱きしめてもらって…

「…私、気を失っていたの?」

「ああ…ゴールであった途端、倒れたんだ」

「ゴールで…?」

思い出せない、その記憶…

 

そのとき、ふと、気がついた。手に温かな感触。
目をやると、ぱっと放された、クラピカの手。

「…すまない」

「…なんで? ありがと、クラピカのおかげだよ、きっと」

「え?」

「もし1人だったら、また、泣いてた」

「・・・」

「そして、放してくれて、ありがとう」

「…え?」

「放れられなくなるから」

 

きっと、ヒソカも私を放した、放れられなくなる前に。

 

 

 

「…言霊?」
「うん…」

私は、静かに話し出し、クラピカは静かに聞いてくれた。

「例えばね…”私の手に触れて”」

私がそういうと、クラピカは私の手に触れた…驚いた様子で。

「体が勝手に動かなかった?」
「ああ…」
「それが言霊。言葉が本当になるの」
「・・・」

あっけにとられていた…たぶん、普通の反応のだと思う。
この潜在能力をヒソカに教えてもらってから、
人に話したのは初めてだから、どう反応されるかわからなかったけど。

「勿論、なんでも言いなりにできるわけじゃないの」
「…そうか」
「できるかどうかは、心の抵抗力によるの」
「抵抗…」

「その人にとって、抵抗のあることをさせるのは難しいけど、
その人にとって、抵抗のないことをさせるのは簡単なの」

「なるほど…つまり、私には無理だが、
あの男に殺しをさせるのは簡単、ということだな」

…あの男、とはヒソカのことだろう。

「…ヒソカには、1人で生きられるようになるまで、育ててもらったの」
「…そうか」
「軽蔑する?」
「…」

ヒソカに会うまでの記憶があいまいな私にとって、
ヒソカ達の生活が、普通だった。
それが異常だとは、1人になるまで気がつかなかった。

「いや…」
「気休めはいいんだよ、自分でも変だと思うもの」
「そうじゃない…私も、人のことを言えるほど、真っ当ではないから」
「…」

クラピカを見ると、じっとこちらを見ていた。

そういえば、出会ったとき、真っ赤だったあの瞳…尋常ではなかった。

「…オタガイ様ってわけね」
「そういうことだ…」

 

私達は笑いあった、少し温かな暗闇だった。




THANK U BABY -A-ドリームTOPNEXT