kr_ryo 徒然日誌 <2002年4月28日分>

戦争芸術リプレイ!…コサックス体験記その4

コサックス体験記おもしろいから(^^;;;もっと載せてほしいというお便りもいただきながら、ずいぶん久しぶりの体験記です。最近日曜に意外と時間がとれなくて、プログラムはおろか、このページの更新やらメールのお返事なども滞りがちm(__)mいかんですね。

さて、コサックス戦争芸術。原題〜The Art of War〜邦訳「采配の芸術」、らしい。これ、いったいいつになったら出るんでしょう(;_;)一度やってみたらコサックス「攻城の世紀」がプレイできないくらいによく直っている、いわゆるパワーアップキットです。オフィシャルページでは、発売が2002年となっていますが、いつやねん!どこが変わったか、直ったかは、さっきのリンク先をご覧いただく方が早いので、そちらをご覧くださいませ。

私的には、先のリンク先には載っていない同盟ルールがいい感じです。以前も書きましたが、攻城の世紀ではどういうわけかコンピュータが全部同盟してプレイヤーを包囲攻撃してきます(T-T)これに対し、戦争芸術では初期設定の段階で各コンピュータとプレイヤーの同盟/敵対関係が設定できます。同盟国は攻めて来ないだけでなく、同盟国領にも視界があることになります。

今まで全然書いてこなかったんですけど、コサックスでは、味方の建物とか兵隊などの周辺しかマップが見えないルールです。そのため、どこに敵国があるのか、敵がどこから攻めてくるのかわからず、最初は斥候兵を恐る恐る出しておくことになります。ところが攻城の世紀では、コンピュータは、まるでこちらの位置を知っているかのように(知っているんでしょうが)部隊を繰り出してきます。プレイヤーは、敵の位置もわからないままなのに、防衛に追われて負けてしまうというひどい状況になります(T-T)この点を、戦争芸術では敵コンピュータもちゃんと斥候をまず出してくるようにされています。それでも敵はこちらの位置を知っているような感じですけどもね(-_-)

その他にもいろいろ直っているんですけど、どちらもプレイしたことのない人にはちょっとおもしろくない内容ですので省略!ただ体験版では、変わった点の体験ができる点が少ない(だったら攻城の世紀と変わらんじゃん)、セーブロードができるのにメイン画面ではできずに、いったん別のマップを作成してからじゃないとロードできないという不親切、といった点がちと気に入りません(-_-メ)

さて、今回から、私がプレイした戦争芸術のリプレイを掲載いたします。まず、初期設定から。オーストリアが7カ国で、赤国(プレイヤー。ファルツ選帝侯)と青国(レベルは中級。名前はボヘミア王。以後同じ)が同盟国、紫国(普通。ティロル子爵)とオレンジ国(中級。カリンシア公爵)が同盟国、白国(中級。オーストリア大公)と黒国(普通。モラヴィア侯爵)が同盟国、そして緑国(上級。バイエルン公爵)が同盟国なし、という感じです。ちとややこしいですが、どうせ出てくるまでにほとんどすでに死に絶えているので(^^;;;覚えていただかなくても先には進めます。名称も位置的に決めただけで、新教旧教などややこしい史実を全然反映しておりませんので、気にしないでください(^^;

それでは始めます……

選帝侯の悪夢

ファルツ選帝侯フリードリヒは不機嫌であった。他国との緊張が増しているというのに、自国の産業はおろか、軍隊の育成すら全く間にあっていなかった。

「このままではいかんな…他国の餌食になるばかりだ。」

ファルツ領は、現在敵対関係にあるバイエルンから北西(ようはマップ左上)に位置する。東(これまたマップ右上)にはフリードリヒが最近王位を継いだボヘミア領が広がっている。ボヘミアはファルツよりはるかに産業育成が進んでおり、すでに強力な軍隊が活動を開始しようとしていた。それにひきかえ、ファルツは人口も産業も、ボヘミアの半分程度しかなく、軍隊にいたってはようやく新兵とはいえない程度の部隊が形成できる程度であった。

「とにかく産業と軍隊の育成を急げ。全てはそれからだ。」ボヘミアの王冠を戴冠して自国にもどってきたばかりの選帝侯は、側近にそう告げると自室にこもった。はたして間に合うだろうか?今にしてみれば皇帝の怒りを買ってまで王位を受けるだけの値打ちがあったのだろうか?確かにボヘミアは豊かな土地で同じ新教の国だが、ルター派の貴族が多く、カルヴィン派のフリードリヒとでは結局教義が異なる。どうも居心地が悪い。さらに前ボヘミア王であった皇帝=オーストリア大公フェルディナントの怒りはすさまじかったという報告を受けている。さもありなん。皇帝に選ばれてウィーンに向かったとたんに王位を廃され、大嫌いな新教徒が王位についたのであるから。

先年ファルツ選帝侯は、選帝侯としてただ一人ボヘミア王フェルディナントの神聖ローマ皇帝即位に反対した。新教徒として彼の過酷なボヘミア統治を見ていれなかったのだ。その縁でボヘミアのクーデター政府がフェルディナントの王位を廃し、ファルツ選帝侯フリードリヒをボヘミア王位につけたのだ。現在、ボヘミアはクーデター政府首班のツルン伯が実質的な指揮をとっている。喜び勇んでボヘミアに乗り込んだフリードリヒは、結局飾りなのではという気持ちを捨てられないでいた。ツルン伯らのボヘミア議会による統治は意外に手堅いようで、戴冠後、儀式や宴はともかく、ほとんど実質的な統治はせぬままの帰還であった。それも、皇帝の怒りに応えて隣国バイエルンがファルツ侵攻を計画しているという報告を聞かされたためであり、ツルン伯等に、後のことは私達におまかせあれ、陛下はファルツ領を手堅くお守りいただきますよう、と急かされているような口ぶりで帰還を急がされたためであった。

フリードリヒは自室でつらつら考えるに、皇帝の怒りの矛先が、ボヘミアから、王位を継いだ自分にまで及んでしまったような気がした。しゃらくさい!来るなら来てみろ!そもそもあいつは大嫌いだ!と毒づくが、内心の不安は抑えられなかった。いかんせん、ファルツの現状は他国に比べてあまりにも遅れているという認識を持つのが遅すぎた。きらびやかなボヘミアの王宮から見るプラハの街の巨大さに圧倒されてはじめて気がついたのだ。さらにバイエルンのファルツ侵攻計画を聞かされたとき、ボヘミア軍をファルツ防衛にも回してくれるものと思っていたのだが、残念ながらすでにオーストリアと交戦状態にあるボヘミア軍にその余力はなかった。ファルツは独力で自国を守らなければならなかったのだ。

ようやく地に足のついた経営ぶりで我がファルツも他国と伍していけるか、と自信を持てるようになった選帝侯は、いよいよバイエルンが牙を剥きだしたことに気がついた。斥候兵の侵入である。最初は連続的に数人兵が侵入を繰り返し、次には小隊(数人)の威力偵察まで行われ始めた。いずれもファルツの部隊(36人)が撃退していた。バイエルン何するものぞ!と現場の指揮官は気勢を上げているようだ。その後ようやく2個部隊めが編成され、前線の部隊も気が大きくなったのか、バイエルンに侵攻してみようと言い出した。

「いいだろう、しかし深追いするな、危なくなったら引き返せ。」フリードリヒは許可を出した。いつまでもバイエルン軍の侵入を許していれば士気が下がる。こちらも新たな防衛部隊が編成できた。敵を滅ぼすことはできなくとも、打撃を与えることもできるだろう。あわよくばバイエルンに痛手を食らわすこともできるはずだ。

しかし、それは甘かったようだ。バイエルン軍の指揮官ティリー将軍は老練な男だった。すでにファルツ軍の動きを察知していたのか、1個部隊を国境に繰り出していた。横列隊に伸びたファルツ軍に対し、方形隊列のバイエルン軍が正面からぶつかった。敵を甘く見ていた前線の指揮官に対し、フリードリヒは後退を指示した。「後退して2個部隊であたれ」という指示であった。やや押され気味ではあるが、まだ優位を確信していた指揮官も、舌打ちしながら後退を指示した。同時に新編成部隊も前進を開始し、数の上では2倍のファルツ軍と、バイエルン軍が激突した。

これで優位は動かないだろうと安心していたフリードリヒであったが、伝令の報告を聞いた時、椅子から文字通り飛び上がって驚いた。「我が方、全滅!敵は我が領内に侵攻中!」

数度の偵察行動でバイエルンのティリー将軍は見抜いていたのだ。結局ファルツ軍の弱体が露顕せぬままここに至っていただけだということを…だからあえて、敵の油断を誘い、2倍の敵に対しても攻撃を行ったのだ。この戦いで、ファルツ軍は全滅、バイエルン軍は半減しながらも、まだ十分組織的な行動を取れていた。

領内に侵攻中のバイエルン軍を見たフリードリヒは、もはやこれまでと降伏しようと考えていた。しかし、ボヘミアで見聞していた旧教軍の掠奪のすさまじさを思い出し、思い止まった。降伏してもバイエルンの掠奪はやまないだろう。新教徒の住民は残さず殺され、手塩にかけたファルツの街は徹底的に破壊されるだろう。皇帝の怒りを買っている自分の生命もないはずだ。さりとてここで自分だけボヘミアに逃れても、ファルツが徹底的に破壊されることは変わるまい。ボヘミアも、祖国を見捨てた自分を受け入れてくれるかどうかわからない。

苦悩する時間は短かった。ここで降伏すれば、ボヘミアは自分を見捨てる。しかし、最後まで戦い続けて逃れた自分をボヘミアは受け入れてくれるだろう。最後まで戦うことでたとえ死しても殉教者として名は残る。フリードリヒは兵舎に走った。バイエルン軍は槍兵隊なので軍事施設を破壊できる装備を持たない。とにかく残兵を糾合して、敵にあたろう!

ファルツ領内にはすでに警備隊しか残っていなかった。フリードリヒはファルツの警備隊に住民にも武器を渡すよう指示した。「死にたくなければ祖国を守れ!諸君は栄えあるファルツ防衛隊だ!」住民たちもバイエルン軍の侵攻に怒りを覚えていた。街が、村が、奪われ、殺され、焼かれていく!手に手に武器を持ち、公会堂前の広場に集まった。敵はすぐこの広場に迫ってきている!警備隊と今はファルツ防衛隊と称されている住民たちは、侵入してきたバイエルン軍と戦いはじめた。

ファルツの敵は、バイエルンだけではなかった。バイエルン軍と戦闘している間、南のティロル子爵の傭兵隊も迫っていたのだ。こちらもファルツの中心地に接近していた。

バイエルン軍は敵ははや降伏するだろうと考えていた。国境付近で戦った連中を除けば、もはや組織だった抵抗はない。警備隊も各個撃破した。公会堂前の広場も押さえた。かなりの数の「暴徒」どもも叩き殺した。やや時間がかかったが、このファルツの中心地に動く影は少なかった。もはやこの地は自分たちのものだ!指揮官は掠奪の許可を出した。そこへ、見慣れぬ中隊(16人)が現れた。ティロルの傭兵隊のようだった。出て行け、貴様らに用はない、ここは俺達の地だ!しかし、獲物を前にした傭兵隊も引かなかった。実力で奪い取るまでだ!

ティロル軍とバイエルン軍が戦いはじめたころ、ようやくフリードリヒは1個中隊(15人)を編成し終えた。国境守備隊から新兵まで、とにかく隊伍を組ませて公会堂に向かった。警備兵と「ファルツ防衛隊」が待っているはずだ。者ども急げ!

しかし、フリードリヒの前にはすでに掠奪をはじめているバイエルン軍だけしかいなかった。広場は血に染まり、ファルツ兵と住民達の死体が山となっていた。フリードリヒ率いるファルツ軍は、怒りの形相でバイエルン軍に突撃した。すでに数度の戦いを勝ち抜いてきたさしものバイエルン軍も、ファルツ軍の突撃に耐えうる力はなかった。

後世ファルツ防衛隊の悲劇と呼ばれることになるこの戦いは、最終的にはファルツが自国を守り抜いた。しかし、ファルツが被った人的被害はあまりに多く、国力はどん底まで落ちた。流れる血が服をファルツの色である赤に染めてまで戦い続けた「ファルツ防衛隊」を人々は悼んだ。結局、ファルツ防衛隊は街を守り抜き、以後、ファルツ領内に敵兵が侵攻することはなかったのである。

つづく

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